137/688
微かな音
「えっ、ちさちゃん、何か、って何?」
チェコが急に大きな声を出したので、ヒヨウとタッカーは驚いた。
「なに、か、、、大き、いも、の、、、早、い!」
ちさも慌てているようだ。
「すこし急ぐぞ!」
ヒヨウは短く叫んだ。
三人、必死で歩く。
だが…。
「だん、だん、、、近づ、いて、く…る」
ちさは教える。
チェコは左後ろに神経を集中させるが、さすがに何も感じない。
と、思っていたが…。
カサ…。
何か、聞こえなかっただろうか?
自分の足音や、息遣いの方が、よっぽど大きく激しいのだが、その中に、微かな異音が混ざってくる…。
カサ…。
また、しばらくして。
カサ、カサ…。
風に、木の葉がぶつかり合うような、ささやかな音なのだが、しかしゴロタの森は雑多な樹木が生い茂った密林だ。
大概の風は、地表のチェコたちの元にまでは届かないはずなのに…。
そんな中で…。
カサ…。
と、確かにとても軽い、微かな音が、鼓膜を撫でていく。
「ヒヨウ…。
聴こえるよ!」
チェコは叫んだ。
「判っている。
これはたぶん…」
ヒヨウは唸った。
「昆虫系のようだな」
タッカーが悲鳴を上げた。