記録
困ったな…、どうしようかな…、とチェコは悩んでいたが、ちょっと現況、この黒龍山のゴロタの森で、カードを手放す訳にはいかない。
俯いて寡黙に山を歩いていたチェコだったが、はっ、と息を飲んだ。
エクメルは、全て見ていたハズだ!
チェコの全身から、一気に汗が吹き出した。
そうだった。
只の魔石なのに、こいつには、ムダに意識を持ってやがるのだ。
ど…、どうしようかな…。
チェコは迷った。
なにしろエクメルの奴は、気が利かない。
自分の思った事は、何でも喋ってしまう。
が、しかし。
エクメルが出す一アースは、なにものにも変えがたい…。
「あの…、さ…。
エクメルって、黙っているとき、何か考えているの?」
ちょっと、敵を探ってみることにした。
「我は、省エネモードになっているのである」
「え…、ショウエンモー?」
聞きなれない言葉に、チェコは戸惑った。
「最低限のエネルギーを使うに止め、休んでいるのである」
休んでいる!
チェコは、顔を輝かせた。
「じゃあ、その間の事は、見たり聞いたりしていないんだ!」
「心配しなくとも、主の行動は、全て記録し、約1ヶ月間保存してあるので、必用であれば、いつでも呼び出せるのである」
チェコは真っ青になり、頭を抱えた。
「お、俺の行動は、全て記録されている?」
雷に打たれたように固まったチェコに、ちさが声をかけた。
「チ、ェコ、、、左側、に、、、何か、、、いる…」