手離せない
ヤバイ…!
チェコは窮地に陥っていた。
タッカーのファイルに入っていたカードは、今やチェコのデッキになくてはならない物ばかりだ。
ミカとの戦いで一命を繋いだ、反逆、や、序盤、デッキが機能するまで脆いウサギデッキをサポートする氷結や、実は、猿喰い猿と戦った、雷、も、元々タッカーの持ち物だったのだ。
すっかり無口になって、チェコはアケビの皮を舐めていたが、ヒヨウが立ち上がった。
「よし、もう少し、頑張って歩こう。
まず、西側傾斜まで行けば、一息はつける。
あの辺はドゥーガの生息地だから、ゴロタが近づけば様子で判る。
そこで少し休めれば、夕方までにイヌワシ峠には出られるはずだ」
三人は、再び歩き始めた。
「チェコ。
疲れたのかい?
ちょっと無口じゃないか」
タッカーが振り向いて気遣う。
その、優しい心が、チェコに突き刺さった。
「う…、うん、大丈夫。
なんとかなるよ」
けっこうな大汗をかきながらチェコは言った。
「チェコ、、顔色、、良くな、い」
ちさまで、カードのことを知らないので、体調を心配した。
困る…。
これは困る…。
チェコは基本、嘘は嫌いなのだが…。
でも、割りと日常、なぜか、しょうもない嘘をついて、墓穴を掘ることが多い。
まさに、そのパターンに入っていた。
頭が悪いのは自覚していたが…。
しっかり者のパトスがいないのが、とても大きかった。
「まぁ、少し疲れているけど、大丈夫だよ…」
はぁ、と、わざと溜め息をする。
宝物庫で滝を浴びてから、特に疲れはなかったが、言い訳をした。
カードは、手離せなかった。