回復
三人は、クルミの大樹の根に座り、アケビを食べた。
実を割って、中の透明な果肉に口をつけると、大量の水が溢れた。
「うわぁ、甘いなぁ」
水をこぼさぬ様、慌てて啜る。
ちょっとした果実を食べただけで、ずいぶん、身体が楽になった気がした。
「初めて通る山道でアケビを見つけるとは、目が効くな、チェコ」
ヒヨウに言われて、チェコはエヘヘ、と笑い。
「俺、こういうの得意なんだよね」
「そうか、得意ついでにチェコ。
タッカーに回復、のスペルを使ってくれないか?
確か、さっきカードボックスに入っていただろう」
えっ…。
と、チェコは一瞬で青ざめた。
そう。
チェコも、自分が瞬間スペル、回復を持っているのは、とうに気がついていた。
だが…。
あのカードは、実は、…そもそもタッカーと戦った時に、タッカーが忘れて逃げてしまった物を、キャサリーンが勧めるので自分のカードボックスに入れてしまった物だった。
どうしよう…。
もしバレたら…。
チェコの背中を冷たい汗が流れたが、しかし、拒否をするわけにはいかなかった。
かえって怪しくなってしまう。
「あ…、あははははは…。
そ、そうかぁ。
そういった使い方も出来たんだよね…。
思いつかなかったよ!」
チェコは、スペルボックスから取り出しもせずに、回復、のスペルをタッカーに使った。
ボックスに入れてしまっている以上、さすがに言い訳はできない。
ここは、自分のカードだ、と言い切るより方法がなかった。