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イージャイダンス
ヒヨウは、エルフ族特有の整った風貌と、理論整然とした話し方のせいで、つい、冷たい人柄に見えていたが、そうじゃないんだ、とタッカーは気がついた。
考えれば、彼は常にタッカーに気を配ってくれていた。
タッカーは、つい涙腺が緩みかけたが、こんな場所で涙を流すことは、ヒヨウにもチェコにも、余計な心配をかけることだった。
「辛いようなら、少し休むか?」
「いやいやいや、
君たち、僕がコクライノ育ちのシティボーイだからってナメてるでしょう。
村でも休ませてもらってるし、全然平気よ、ほら!」
ダンスのステップを踏んでみせる。
「変わった踊りだな」
ギャハハ、とタッカーは笑い。
「踊りじゃないの、ダンスよ、ダンス。
イージャイダンスって、ストリートで流行ってんだよ、今」
チェコも加わって、しばらくステップを教えて、ふざけて。
3人は、改めて森を進み始めた。