秘密の宮殿
宮殿、といっても、木の板の壁と、草を葺いた屋根の平屋の建物しかなかったが、タッカーの案内で燃えた家屋の間を縫って歩くと、すこし広い庭を持つ建物が現れた。
とはいえ、リコの村でも、ちょっと物持ちの家ならば、このぐらいの庭はあるようなものだ。
生垣の木が並んだ中に、子供が走れるほどの広場があり、何本か花をつける木が植わっていた。
タッカーは歩いていくと、一番奥のサンザシの木の下に進んだ。
木の幹に手をつけて、
「発動! セサミ!」
とアースを浮かべながらスペルを発動させる。
サンザシの木が、縦に二つに割れて、その中心に入り口が現れた。
「さぁ、入って」
チェコたちが入ると、そこは、まさに宮殿の広間だった。
二、三百人が一堂に会せる天井の高い会場であり、木造の様で、荷馬車がすっぽりと収まりそうな太さの柱が、何本も建っていた。
奥は、何段か高くなっており、鮮やかな緋色のタベストリーが飾られている。
「ひゃぁ! こんなん、なってんだ!」
チェコは驚いて見まわすが、タッカーが呼んだ。
「チェコ、宝物庫はこっちなんだ。
でも、入り口までしか案内できないんだよ、僕は」
と、タッカーは歩きながら説明した。