ガウル
チェコは、声のする方向に振り返った。
が、誰もいない。
えっ…、と思うが。
「あっ…、ガウル様!」
タッカーが、今までとは全く違う、悲痛な声を洩らした。
「タッカーか。
どうだ、プルートゥとやらには会えたのか?」
タッカーが見えない声と会話している!
一瞬、思い、慌てたチェコだが、タッカーの視線が下を向いていることに気が付いた。
チェコは、驚きの声を飲み込んだ。
かなりの大男が、トカゲの様に四本の足で地面に這っていた。
「いえ…、会えませんでした…」
「それなら幸いだ。
どうも、その男は、言葉の通じるような者ではないと報告があって、心配していたのだ」
タッカーの目から、涙が溢れてくる。
「でも…、皆が、そんな僕を守って…」
ガウルと言う男は、優しく微笑んだ。
「お前もまた、村を守ろうと必死で戦ったのだ。
そんなお前を、皆が守ろうとするのは当然だ。
皆は、すべき事を、すべきように行ったまでのこと。
すべき事を行うのは、それが、どういう事であれ、神の御心に通じている。
だから、お前が泣く必要は無いのだ」
タッカーは、顔を押えて泣きじゃくった。
「さて…」
と、ガウルは、チェコとヒヨウを見上げた。
「…あの…、えッと…」
チェコは慌てるが、
「お前はチェコだな。
キャサリーンとパトスから聞いている。
お前の連れている男が、ヒヨウか?」
チェコはポカンと驚き。
「えっ、何で知ってるの? 俺だって、森で偶然会って、驚いたのに?」
と逆に聞いた。