六属性
静かに、水の護り手が対岸に辿り着いた。
チェコは例によってクンクンにおうが、
「チェコ、こっちだ」
ヒヨウは、捜索スペルによって、この地形は既に頭に入っていた。
微かに揺らめく赤い光が頭上に見えるのは、チェコたちが崖の真下に位置しているからだ。
それは直下から見たら、壁面とも思える急角度な崖だったが…。
実は、暗くさえなければ、一筋、細い登り道が出来ているのは、エルフならば知覚できた。
急な石の壁面を、斜めに登ると、今度は逆方向に十メートル横移動し、そのまま、再び登り斜面になる。
幾度かそうやって歩いていくと、十分ほどで三人は石舞台の上に立っていた。
崖の一部分が、家一軒分ほどの、平らな舞台のようになっていて、その左右の端に、大きな篝火が炊かれている。
その炎に煌々と照らされているのは、壁に描かれた絵だった。
地面が描かれ、動物や鳥などが描かれ、その上に一人の人間が立っていた。
対立するように離れて、角々とした自動機械や、ぎごちない動きの人形、瓶の中の人型などが描かれ、上に人間が立っている。
また、その上には、羽の生えた人間が多く描かれ、白い人間がいて、離れた隣に、黒い羽の生えた人間? らしきものの一群があった。
「ふーん、人と動物、と、機械と、空飛ぶ人?」
チェコは首を捻るが、
「ちょっと。
これは六属性を描いた絵だよチェコ。
いい?
これが緑のアース、人や自然の属性。
こっちが赤のアース、機械やオートマトン、ホムンクルスなんかの属性。
それで、これは天使や妖精、神とか光りの属性で、
隣りが悪魔、禍い、疫病神などの闇の属性。
で、下を見て」
タッカーに言われ、足元を見ると、さらに二つの絵があった。
これが人魚や魚、貝、水の属性で、
隣りが冥府、鬼の黒の属性なわけよ」
ほぅ、とチェコは唸った。