109/688
魚
「チェコ、伏せろ!」
ヒヨウは弓を構えた。
口を開いた高さだけでも、チェコよりも大きく、顔全体は、ちょっとした一軒家ほどもある。
それは、魚、のようだった。
チェコは、動かない。
いや…。
動けないのか…。
「チェコ、しっかりしろ!」
とヒヨウは叫ぶが、しかし…。
矢を射ったところで、この巨大な魚に、どれだけのダメージがあるものか、心もとなかったが…。
それでも、チェコの気さえしっかりしていたならば、そのタイミングでスペルを撃てれば、何かしらの反応は引き出せる可能性は十分にあった。
まして、雷はチェコの得意のスペルで、水生動物には、十分な効果があるはずだった。
だが、チェコが、動けないでいる…。
あれではーーー。
唇を噛み締めたヒヨウの目の前で、チェコは、魚の顔を、手でパチパチと叩き始めた。
「チェコ?」
チェコは振り返って。
「この子、大人しい子、みたい…」
ヒヨウとタッカーは、言葉を失った。