臭い
「…えーと、パトスの臭いが…」
チェコは再び四つん這いになり、クンクン臭いを嗅いでまわるが、ヒヨウは溜息交じりに。
「よし、ここで捜索を使ってみようか…」
と、胡坐をかいて座った。
「へぇー、座って発動させるスぺルなの?」
タッカーは興味津々だった。
ヒヨウは、呼吸を整え、深い瞑想状態に入っていく。
どうも、土中をズンズンと、ミミズにでもなったように進んでいるようなビジョンが見えた。
やがて巨大な滝が現れ、その奥に滑りこむように意識が飛翔すると…。
赤い豪華な髪の美女と、小さな仔犬パトスが、大柄な女と共に火を焚いた石舞台の上に佇んでいるのが見えた。
はぁ…。
と、溜息をつきながらヒヨウは、足を崩して、手ぬぐいで顔を拭った。
「どうだった?」
タッカーが聞くが。
「ああ。
方位で言えば、右の穴の方向なんだが、洞窟の道順までは、探索では分からないようだな」
「えぇー!
ここまで来て、お手上げですかー?」
と、タッカーは落胆する。
が。
「あった!」
二人の背後で、チェコが叫ぶ。
「なに?
お前、本当にパトスの臭いを嗅ぎ分けたというのか?」
色々人間離れしたところのあるチェコだが、さすがにヒヨウも驚愕の表情だ。
チェコは、得意満面に岩の隅を指さした。
「こういう時、パトスは必ず道しるべを残すんだ。
今日しか、ここにパトスは来ていないんだから、絶対、左な訳だよ」
岩の隅には、乾きかけた、おしっこの跡があった。