石垣
特に入り口らしきものはない、井戸の石垣を三人は見まわした。
「光が足りないのかな?」
チェコはランプに火を灯してみるが、何の発見も無かった。
「おそらく、隠し扉のような仕掛けがあるのだろうな」
ヒヨウは唸る。
チェコは、うーん、と考え込むが、うん、と頷き、
「パトスの臭いを探せば大丈夫!」
言うと、丸い井戸の石に鼻を近づけて、嗅ぎ回った。
「捜索、を使っても、彼らが洞窟の中では、あまり意味はなさそうだしな…」
ヒヨウは腕組をして、途方に暮れる。
「えー君、捜索、とか持っているの?
あれ、相当にレアなカードでしょ?
もしかして、黒枠なんじゃない?」
「黒枠?」
「ほら、今のスペルカードは、カードの縁は一律で白いんだけど、本当に初期のスペルカードは黒枠だったんですよー。
同じカードでも、価値が全然違うんだよー!」
ヒヨウは、
「エルフの長老から授かったカードなのだから、相当古いだろうな。
たぶん長老は、百歳ぐらいなはずだ」
「えー、やっぱりエルフは、人間よりも妖精に近い存在なの?」
ヒヨウは笑った。
「エルフの食事が体に良い、と言うな。
塩杉から取った塩を使い、クラライモを中心とした質素な食事が体に良いから長生きなんだ」
二人が世間話に興じている間にも、チェコは、石によじ登り、臭いを探し続けていたが…。
「ん、ここが臭いぞ?」
「パトスの臭いか?」
そんなものが判るのか、とヒヨウは驚いた。
「ううん、
なんか、この石だけ、妙にスベスベなんだ」
チェコが石を撫でると、なぜかーーー。
石が光った。