エルフ酒
チェコは、木の葉の包みを開いた。
味噌の香りが、ぷん、と広がる。
齧ってみると、クルミをまぶした甘い味噌を塗った、餅のようだ。
リコの村では、食べたことのない味だった。
「旨いよ。
これ、何て言うの?」
「クラライモの餅だ。
力がつく」
言いながら、ヒヨウは、タッカーを横にして、コートを脱がしていた。
中は、ピッチピチのTシャツとスパッツ姿だ。
「こいつ、ずいぶん変わった下着だな…」
チェコは、思わず吹いてしまった。
「都会の人だから、お洒落なんじゃないの?」
コートに下着がお洒落なのか? とヒヨウは首を傾げるが、まぁ、個人の趣味などどうでもいい事か、と言って、井戸の水を汲んで、頭を冷やしてやる。
ブーツも脱がして、楽にさせてやると、しばらくして、タッカーの顔色もだいぶ良くなってきた。
「おい、気がつくか?」
うーん、と呻くタッカーの口に、エルフ酒を近づける。
エルフの主食であるクラライモを蒸留して作った酒で、ほとんど純粋なアルコールである。
少し口に含むと、うっ、と唸って、タッカーは身を起こした。
「タッカー兄ちゃん、気がついた?」
タッカーは、アルコールに少し咽たが、ヒヨウは、少し飲め、とエルフ酒を勧める。
恐る恐る、口に含んだタッカーは、しばらくエルフ酒を舐めると、ずいぶん元気になった。
「いったい何があったのか、教えてくれるか?」
タッカーは、ヒヨウと、チェコ、ちさの顔を見まわし、頷いた。