精査
スンッ!
とチェコの髪に顔を突っ込み。
「あー、爽やかな男の子の匂いねぇ~。
草原の、夏虫の匂い~」
チェコは、突然の嬉しい愛撫に、しばし己を失っていたが、パトスに足を噛まれて正気を取り戻した。
「だ、駄目だよ!
おねいちゃん、今、コカトリスが、俺たちを狙って!」
「コカトリス?
ああ、これ?
これはあたしが召喚したのよ。
悪い奴らに追われて、捕まりそうになったんで、急いでテレポのスペルを唱えたら、急に、こんなところに落ちちゃって!
痛いし、絶望だし、もう寝よ、と思ったの。
でも、ケモノとかいそうだったから、こいつに番をさせておいたのよ」
アハハ、と赤い髪を掻き上げながら。
パチン、と指を鳴らすと、コカトリスは一瞬で掻き消えた。
「でも僕、
凄いのねぇ…、よくコカトリスに石化されなかったわねぇ」
へへ、とチェコは照れ笑いし、
「ほら。
俺、落ちていた馬車の扉で鏡を作ったんだ!
これで身を護って、ここに来たんだよ」
チェコは自信作を美女に見せた。
「ふぅん? この錫箔でコカトリスを?」
美女は、再びチェコの顔を、まじまじと覗き込む。
「ライト!」
美女が唱えると、白い白昼色の明かりが周囲を照らした。
「君…、もしかして、本物のブロンド?」
「え? 俺、よく枯稲色って言われるけど?」
「魔法漂白も、魔法染色もしていないの?」
チェコの腕を持ち、腕の毛を逆なでする。
そして、そのまま、一本をブチッ、と引き抜いた。
アギャァ♡
「坊や…、本当の金色の瞳?」
「あ…あの…よく、明るい茶色って…」
ついにはチェコのブーツを脱がして、て足に触って…。
「君って、まるでムダ毛の手入れをしていないのねぇ」
「ええー! ムダ毛ってなに?」
リコの村には、そういう概念は存在していなかった。