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ため息

短めです。

 殿下が帰ってきたその日の夕刻。

 殿下が家にやって来た。


「さっきは悪かったな」


 殿下の第一声はそれだった。

 

「いえ、あの後、お客様は大丈夫でしたか?」

「ああ。あの赤毛のトラの獣人のシュナは王族なんだが最近誘拐されてさ。俺が助けたんだけど、それ以来人間不振気味で俺以外の人間に怯えるんだ。事情が事情だから許してやってくれるか?」


 殿下は困った顔で私の様子をうかがった。

 殿下の腕にしがみついていたのは怯えていたからだったのか。

 私の中にあるモヤモヤが少しだけ無くなった気がした。


「許すも何も、仕方がない状況だったのですよね」

「でも、すまん」

「と、言うか、今は大丈夫なんですか?」

「シュナが風呂に入ってる間に魔法を駆使して飛んできた。ユリアスに土産もやりたかったしな」


 殿下はニッと笑うと言った。


「獣人の国で綺麗な羽飾りをみつけてさ」


 殿下はそう言いながら上着のポケットからクルクルと巻かれた紙を取り出した。


「羽飾りには見えませんが?」

「羽飾りは明日の船で届くんだが、こっちは羽飾りの輸入許可書。君はこっちの方が嬉しいだろ?」


 私は許可書を受け取り中を確認した。

 ああ、本当にこの人は私の事をよく解っている。


「ありがとうございます。あの、私もシュナ様方にプレゼントを開発中でして、数日中には出来上がる予定ですので出来上がり次第お届けいたしますね」

「そうか、それと、あの堅いクッキー獣人には、かなり評判が良いぞ」

「まあ!素敵な情報ありがとうございます!」


 獣人様は堅いクッキーがお好き!

 これは、たくさん用意しなくては!

 私がホクホクで笑顔を作ると、殿下もつられて笑ってくれた。

 やっぱり、殿下の側は居心地が良い。

 あ!私、まだお帰りなさいと寂しかったを殿下に言っていない。

 私が話を切り出そうとしたその時、殿下はチラリと腕時計を確認すると立ち上がった。


「悪い。そろそろ戻らないとだ」

「そ、そうですか」

「また時間を作って来るから」


 殿下はそれだけ言うと屋敷を後にした。

 漸く解った気がする。

 これが〝寂しい〟って感情なのだろう。

 私は一人残された部屋の中で重苦しいため息をつくのだった。

殿下を責めないであげて下さいw

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