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リップ音 護衛騎士ルチャル目線

新キャラです。

 僕の名前はルチャル。

 元孤児院育ちの子爵家の次男。

 兄貴と一緒に引き取られた子爵家は本当に優しい人しかいなくて僕はあの家の人達に愛されて育った。

 僕はショートボブの金髪に碧眼。

 童顔と男なのに可愛いと良く言われるのがコンプレックスである。

 僕の仕事は我が国の王子であるルドニーク殿下の婚約者のユリアス様の護衛。

 僕の他にはバリガと言う商家の三男で青い長い髪の毛を三つ編みにしている男もいる。

 スッゴい美人で最初女性だと思ったんだけど、声が低くてビビった。

 

「「今日より、護衛を務めさせていただきます」」


 ユリアス様に初めてあった時ユリアス様はバリガより美しい顔を驚きに変えて僕らを見つめ、そして優しく美しく笑った。


「こんな素敵な殿方に護衛されるなんて、世界中の女性を敵にまわしてしまいそうだわ」


 僕らは、女性に間違われる事はなれていた。

 それなのに、ユリアス様は僕らが男だと直ぐに気がついてくれたのだ。

 本当に嬉しかったんだ。

 それはバリガも一緒だったらしい。


「あの人の護衛になれるなんて幸せだ」


 バリガはユリアス様に惚れていると思う。

 バリガはいつもユリアス様をキラキラした目で見つめているから。


「バリガはユリアス様に惚れているよな」

「………商家の………いや、商売をしている家の男はユリアス様に一度は惚れているもんだ」

 

 当たり前の事のようにバリガは言ってたけど、当たり前では無いと思う。

 

「ユリアス様が婚約したと聞いた時、どれだけの男が涙にくれたか」

「そうなんだ………バリガも?」


 バリガは苦笑いを浮かべただけだったけど、泣いたんだと思う。

 ユリアス様はいろんな所を移動する。

 庶民の商店街に行くって言った時は勘弁して欲しいって思った。

 何も知らない貴族令嬢が庶民の商店街をうろうろなんて護衛泣かせとしか思えない。

 バリガもいい顔はしなかった。

 それでも、ユリアス様は聞かずに出掛けてしまう。

 振り回される未来に俺は絶望したんだ。

 けど違った。

 ユリアス様を見ると庶民の皆は笑顔を深め挨拶をし誰からも慕われているのが一目瞭然だった。

 柄の悪い男達ですらユリアス様を見ると勢い良く頭を下げる。


「ユリアス様、良い肉が入ったんだよ食べてくかい?」

「ええ、いただくわ。おいくらかしら?」

「ユリアス様から金なんてもらえねぇよ!」

「まあ!ただより高いものはないのよ。ちゃんと払うわ」

「じゃあ、半額でいいよ!」


 串に刺さった焼きたての肉をユリアス様はわざわざ僕達の分まで買ってくれた。

 なんて良い人なんだ。

 

「ユリアス様、私の事は犬とでも思い気を使わないでください」


 バリガが困った顔で凄いことをいっていた。

 僕は肉を口に頬張りながらそれを見つめた。

 

「バリガさんは犬ではないし、百歩譲って犬だとしても私は飼い犬に食べ物をあたえないほど落ちぶれた令嬢では無いのですよ」


 ユリアス様はニコニコしながらバリガに肉の串を渡していた。


「ありがとうございます。家宝にいたします」

「………今すぐ食べなさい」

「…………………………は、はい」


 バリガはちょっとおかしいやつだとその時気がついた。

 そんなユリアス様について最後についたのは僕には懐かしい場所だった。

 町外れの孤児院は昔と違って建物も建て替えられ、子供達も普通の服を着れていた。


「姫様だ!」

「姫様~」


 子供達が一斉にユリアス様に駆け寄る。

 色んな話をユリアス様に向かって必死に話す子供達の頭を撫でてあげながらユリアス様はニコニコと笑う。

 聖母のような人だと思った。

 

「ザイルスがわざとボールに穴あけたんだよ!」

「馬鹿!言うなよ!」


 って声とともに子供達が一斉にユリアス様から離れた。

 一人必死に逃げ出したのが解った。


「ザイルスを捕まえなさい」


 ユリアス様の口から命令がくだると、子供達は連係プレーで逃げ出した子供を脚の速い者が回り込み挟み撃ちしてあっと言う間に捕まえた。


「ザイルス、言いたいことは?」

「ご、ごめんなさい!」

「他には?」

「………」


 ユリアス様から怒気が見えるようだ。

 周りの子供達も青い顔をしている。


「………」

「謝ったぐらいでは破れたボールは直ったりしませんよ!」

「………」


 取り押さえられた子供がポロポロと泣く。

 周りの小さい子供達もつられて泣きそうだ。


「ボール一つであっても誰かが一生懸命造り上げた物なのよ。ザイルスが自分で一生懸命造り上げた物を壊されたらどんな気持ちなの?」

「ごめんなさい~!」


 ユリアス様は泣きじゃくる子供を抱き締めると言った。


「次は許しませんよ」

「はい。ごめんなさい」


 こんなにちゃんと叱ってくれる大人は昔は居なかった。

 いや、ボールすら無かったか。

 何だか孤児院は昔とは変わったようだ。

 そんなユリアス様を見れて僕はこの仕事につけて良かったって本気で思ったんだ。

 



 最後にユリアス様はお城にやって来た。

 ルドニーク殿下に会うためだ。

 婚約者とは言え部屋に二人きににすることは世間体に悪いと言うことで、ドアの外にバリガが立ち僕は部屋のなかで衝立をはさんだ後ろに待機する事になった。


「孤児院に行ったんだって?」

「いつも通り………ボールに穴をあけた子が居たので叱りました」

「ユリアスに怒られたんじゃ皆震えがったんじゃないか?」


 楽しそうなルドニーク殿下の声の後、チュッとリップ音がした。

 えっ?

 今の、キスした?

 その後連続でリップ音がした。

 ルドニーク殿下!!あんた何してんだ!!

 思わず衝立の向こうを見ると、キスなんて出来るような距離に二人は居なかった。

 三メートルぐらい離れている。

 そして、なおもリップ音がしている。

 そして、リップ音が止まると殿下がため息を吐いた。


「気がすんだか?」

「チッ」


 ああ、あれ、リップ音じゃない。

 あれ、舌打ちだ。

 ユリアス様がルドニーク殿下に舌打ちしている。


「ボール、寄付してやるから落ち着け」

「二人きりの時ならしても良いと言いましたよね?」

「……まあ、言ったが………しすぎじゃないか?」

「受け止めてくださいませ」


 ユリアス様はとても幸せそうに笑っていた。

 二人の信頼関係がかいまみえた。

 舌打ちなんて普通怒って良いと思う。

 それを躊躇いなく実行するユリアス様にそれを許すルドニーク殿下。

 お似合いの二人じゃないか。

 僕はニヤニヤしながら覗いたのがバレないように衝立の後ろに戻った。

 二人の話が終わりユリアス様と廊下に出たらバリガの目に涙が浮かんでいるのが解った。

 同じ勘違いをしたのだろう。

 だが、二人の邪魔にならないように本当の事は秘密にしておこうと僕は心に決めたのだった。

すみません。

ゆっくり更新です。

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