天才
『や、やった! ついにできたぞ!』
古代、尖った石を使って石版に何かを書いていた青年がいた。
この石版には彼が考えついたものを記録しており、また彼にとっての大事なお宝でもあった。
物心ついた時から彼はあることに心を奪われており、生涯かけてそれを実現しようとしていた。
そしてついに彼の悲願は達成されたのである。
『さっそくこれを皆に伝えなくては!』
火を囲むように座っている仲間達に自分の成果を伝えるべく、持ってきた石を持って説明する。
『僕は今、大発見をしたぞ!』
平たい石には何かが描かれているように見える。
『僕はずっと疑問に思ってたんだけど、ついにその正体を掴んだんだ!』
『ものは地面に向かって落ちる! それは当たり前だ! でも実はそれには仕組みがあったんだ!』
仲間たちは頭の上にクエスチョンマークが出ているかのように頭を傾げている。
『僕はこれを落力と名づけたんだけど、今からをそれを説明するね!』
青年は落力について熱弁を奮った。この落力がなんなのかは皆さんの中にも分かった人はいるだろう。
そう、重力である。彼は重力について皆に説明しているのだ。
ニュートンが生まれてくる遙か昔に、重力の概念に到達した天才が今ここに誕生した。
この概念により人類は大きな進歩を遂げることになるだろう。
そして説明を終え、黙って聞いていた族長が青年に質問した。
「で、それが狩りになんの役にたつのかね?」