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毒りんごと白雪姫  作者: みかんもも
1/2

#1

拙いですが、読んで頂けると嬉しいです。

私がその家にもらわれたのは、11の時だった。

空は澄み切った晴天で、施設のワゴン車に乗せられ、高速道路を走りながら美里は窓の外を見ていた。


「今日は晴れてよかったね、美里ちゃん」

運転席の恭平さんはそう言った。彼はもっぱら車運転の専門スタッフの一人である。


なかなか貰い手が見つからず、ここ2年の間に10件もの交渉があった美里。気が大人しく、5件目の面談で、思わずお腹を下してしまったこともある。

「早瀬て家は、お兄さんもいるみたいだから、仲良くなれると思うぞ」

恭平さんは言った。

美里は、楽しげな表情を見せている彼を、後部座席から冷ややかな目で見つめた。



「こんにちはー」

15分後。恭平さんはある一軒家に着くと、美里を連れて玄関口、インターホンを押していた。

「こんにちはー」

しかし、返事はない。

「こんにちはー、あのー!」

留守カかなぁ、と恭平さんは呟いた。

そんな彼の横で美里は、一人離れると、脇の庭口へと歩いていった。綺麗な花が咲く中庭。

雑草の無い、綺麗な庭だった。細い脇道に並べられた、マリーゴールド。並んだその道を進んでいくと、大きな中庭に出た。

「うわぁ、綺麗…」

色とりどりの花が咲いている。随分と整えられた庭だった。人の気配はない。


「おかしいな、今日来るって電話したのに…」

恭平さんが言うのが遠くから聞こえて、美里は細道をまた通って彼の元に戻った。

「美里ちゃん、車に戻ろうか」

そう言って、二人、踵を返した。

その時。

「あーら、ごめんなさい!」

背後から鋭い声が聞こえて、二人は振り返った。

40代の女の人が、タオル片手に玄関口に現れていた。

「恭平さんですか?」

「はい!そうです」

「ごめんなさい、裏庭で雑草刈ってたものでね…」

女性は言った。

「いえ、いいですよ」

そう言うと。

「この子が今日からこちらでお世話になる、美里です」

恭平は美里の肩を優しく押した。

「あなた、美里ちゃんね?どうぞよろしく。亜希子です」

そう言って彼女は手を差し出した。美里は、恐る恐る手を差し出し。握手した。

「…」

「ここは早瀬っていうのでね、あなたは今日から早瀬美里よ?」

にこりと彼女、亜希子微笑み言った。

「早瀬…美里」



美里は呟いた。大人二人がなにやら話し込む中、美里は独り、暗い顔をした。



私は―― 早瀬じゃない。川上 美里だ。


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