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DEADストライク   作者: 和銅修一
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地雷と子供

 殺し屋は大層困っておりました。

 依頼を成功させたのはいいのですが、その後は依頼を達成した喜びで飲めや歌えやの大騒ぎ。そのせいで厚みのあった封筒もスッカラカン。

 これは困った、と仕事を探しますが一向に見つかりません。

 そんな、どよぉんとしたアジトに常連の中年のおじさんが来ました。

 なんと彼困った殺し屋たちをみかねて仕事を持ってきてくれたのです。

 しかも場所はアジトから徒歩十五分ほどと近めで報酬はかなりのもの。

 善は急げとばかりにその場所へ向かおうとするがおじさんに止められました。

 一体何事かと振り向くと彼はにこやかに地雷探知機を持っていた。




「クソ!一杯食わされたぜ」

 留守番としてガレットを残して二人は与えられた地図を持ちながら街を歩いていた。その地図には三つの赤い点があり、その内の二つはバツがつけられている。

 これは仕事が終わったということだ。つまりあと一つで全ての仕事が完了するということだ。

 その仕事とはクラトスに手渡された地雷探知機で埋められている地雷を撤去することだ。

 常に危険が伴うがその代わりに金払いがいい。クラトスは頑丈なダンがいるから大丈夫だと思いこの仕事を持ってきてくれたのだ。

 ダンたちの他にも数十名ほどがこの仕事を一斉にしている。

 全員で行われた説明会で見たから間違いない。

 このご時世、金は稼げるだけ稼いだ方がいい。だから彼らは正しい。ただの命知らずではなく、金のために命をはっているのだ。

「ここか……」

 そして最後の点の場所、公園だ。

 だがいつもの公園とは違い、人っ子一人いない。なぜならここら一帯が地雷が発見されたため避難警報が出たからだ。

 一般市民は慌てて遠くへ逃げて行った。自分たちが住んでいるところが平和な世界なのではなく、戦争の世界であることを痛いほど理解したであろう。

 無法者たちでさえも逃げ出すのだ。この事態の怖さは計り知れるだろう。

 残っているのはダンたちのような地雷撤去をする人か、その関係者ぐらいだ。

「早く終わらせるぞ」

 公園の中へと足を踏み入り、地雷探知機を使って地雷を探す。

 そのチェックされた安全な道をラカサはゆっくりと歩く。

 これだけを見れば何の役に立っていないように見えてしまうがちゃんと役に立っている。

 それは対戦車用の地雷の存在があったからだ。

 実は二つ目の点のところで対戦車用の地雷を踏みそうになったのだ。だが、ラカサのデッドリストのおかけで死は免れた。

 他にもそれがある可能性があるのでラカサには安全確認をしてもらっている。

 だが普通の地雷では怪我をするだけで死ぬことはないのでそれは地雷探知機で探すしかない。

「にしても寂れた公園だな」

 砂場やすべり台、ブランコにジャングルジムなど、どこにでもあるような遊具しかない。

 ダンに言わせれば何の面白みもないのだ。

 さらに人がいないとなれば嫌でもそういう風に見えてしまう。

「ん?あれは」

 だがよく見れば人がいる。しかも五歳ほどの子供だ。

 ジャングルジムのてっぺんに隠れていて気づかなかった。

 なぜこんなところに子供がいるのだろう。避難警報を聞いていなかったのか、親とはぐれてしまったのだろうか。

 どちらにしろ放置しておくわけにはいない。

 ジャングルジムの上にいる今は安全だが子供はよく動く。もしそこからおりたら動き回るだろう。

 そんなことになったら地雷が爆発するのは必然となってしまい、その責任はダンたちに取らなくてはいけなくなる。

 だがそれは困る。その子供に死なれるのもそうだが、ダンたちは殺し屋だ。警察に見つかって死刑になる。それほどのことをやってきたのだ。

 マスターだって殺したし、何より政府の敵であるダンは顔が知られていて即座に刺客が襲いかかってくるだろう。

 取り敢えずこの男の子に声をかけてみよう。

「おい餓鬼!そこでなにしてる」

「ちょ、ちょと。そんな口調だと子供が怖がっちゃいますよ。ここは私に任せてといてください」

 胸を張り自分を主張してくるその姿はとても心配だが自分がやるよりはましだと思い一歩下がった。

「ねぇ、僕。お母さんとお父さんは?」

「僕じゃないよコロクっていうだ」

 緑の帽子をかぶり、肩に鞄を下げている男の子はそう自分の名を名乗った。

「そう…コロクくんか。で、どうしてこんなところにいるの?」

「そこのお兄さんを殺すためにきたんだよ」

「おい餓鬼、笑えねぇ冗談だな」

「じょうだん?僕そういう難しい言葉わかんない」

 それが嘘だということは簡単にわかった。彼の目は子供の透き通った目ではなく、まるで多くの経験を積んできた大人のような暗い目をしているのだ。そんな彼が嘘を知らないわけがない。

「計画に支障をきたすからってきたんだけど、支障ってなんだろうね」

 さらにコロクは見下すようにジャングルジムの上から言葉を続ける。

 政府の計画、世界掌握計画。その支障とはダンたちが逃げ出して反逆していることだろう。

 つい最近マスターを殺したのもその一つだろう。

 それにダンそのものが問題なのだ。ダンの超能力ストレートは危険視されているのだ。 単純に物体をまっすぐに進ませる超能力だが実は恐ろしい能力だ。マスターの頭を簡単に吹き飛ばせたのもその能力のおかげだ。

 頑丈な超能力者の体もダンのストレートは無視して貫ける。こんな超能力になったのは政府が超能力者が裏切った際に簡単に確実に殺すためにそう作られたのだが、そのダンがこうして裏切っているので元も子もない。

 対処が早かったのもそのことがあったからだ。

 それに政府は超能力者の数を減らしたくないだろう。今は大事な戦争中でそこに複数の超能力者を送っているのだ。

 だからこそ今の優勢を保っているが、その超能力者たちさえも壊されてしまうのではないかとビクビクしている。

 しかし、戦場に送らせた超能力者を戻すことはできない。だからこそクラトスは今、大統領の首を狙っている。

 今なら政府の守りが手薄になっているからだ。ダンが政府の手元に残っている超能力者たちさへ蹴散らせば手が届く。

 まずは目の前の餓鬼だ!

「ラカサ、お前は公園から出てろ。邪魔になる」

 守りながら戦うのは不利だし、今回はデッドリストの出番はそうそうないと思ったからそう伝えた。

「う、うんわかった」

 ラカサはダンの気持ちを理解したかのように来た道を引き返して公園の外へと出て行った。

「おい小僧、上から見下ろしてねーでおりて来たらどうだ」

 ダンは苛立ちを隠せない。昔から無下ろされるのが嫌いだからだ。それは一人の男が原因なのだが、今説明する必要はないだろう。

 こうして戦い続けていればいずれ会うのだから。

「やだよ〜。ここに地雷があることぐらい知ってるんだからね」

 コロクは挑発には乗らなかった。

「なんでそんなこと知ってんだ」

 確かに地雷探知機を持っているがそれがそうだとわかるはずがない。それに避難警報でも地雷のことは一切喋っていなかった。

「簡単だよ。これが政府が仕組んだ罠なんだから」

 政府、また政府だ。超能力者を作ったのがそこだから仕方ないが嫌気が差す。

「罠……だと」

「そう、対戦車用の地雷があったでしょ。運が良ければそれで死んでくれると思ったんだけどそう上手くはいかないね」

 道理でおかしいと思った。この仕事の説明では敵国のスパイが忍び込んで仕掛けたものと言っていたが政府がそれを許すわけがない。

「ちっ、おっさん何ハズレくじ引いてんだよ」

「僕が直接殺してあげるよ」

 鞄から幾つもの何かを投げた。そしてそれが手榴弾だとわかった時にはもく爆発していた。

「くっ!」

 その勢いで数歩後ずさるが、それほどのダメージはない。

「あれ?意外と頑丈なんだね。ならたくさん遊んでくれるよね」

 また鞄を漁り手榴弾を投げようとする。

「させるかよ」

 咄嗟(とっさ)に超能力を付加させた弾丸を放つが外れて、コロクの下にあるジャングルジムに当たり突き抜けて行った。

「何! ?」

 決して狙いが悪かったわけではない。なのにあらぬ方向へと弾丸は進んで行った。

「当たらな〜い、当たらない♪今度は僕の番だね」

 ニヤリと笑うその顔にダンは恐怖した。

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