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DEADストライク   作者: 和銅修一
17/26

結末と新たなる戦い

「キリヤに……その隣の人は知りませんね。こちらのデータにもそんな超能力者はいなかった。一体何者です?」

 空中にできた黒い切り目から見える金髪のその少年は超能力者リストに載っていない者で全て把握していると思っていたサカマも同様した。

「彼はプライン=ドルナーデくんです。訳あって今は僕の相棒なんですよ」

「名前を聞いているわけじゃないよ。なんで僕が知らない超能力者がいるのかって聞いているんだ!」

 何が気に入らないのか、大声で怒鳴り散らした。

「まあ、良く分かんないんだけどいるんだから仕方ないですよ大統領」

「ふん、思ってないことを言うなお前は最初から僕を大統領として認めていなかったじゃないか」

「あら、お気づきてましたか?以後気をつけます」

 わざとらしく左胸に手を当てて執事のような礼をした。

「以後はない。裏切り者は逃さず消すのが僕の流儀だ」

「ひゃ〜、流石一般市民をも手にかける冷徹非道の男だね〜。だけどこっちには何でも食い尽くす化け物がいるからやられたりはしませんよ」

 切り札である彼を両手をひらひらしてアピールするが当の本人は

「お腹減った〜」

 と誰かさんよりも呑気なことを呟いた。

「そちらはダン=ストライクくんも入れて三人か。ハヤノをここに来させようにも時間がないから、こちらの戦力はあとゾンビぐらいか」

 もう何体が生き残っているのかとかは分からないというか反応が鈍くて制御不能となってしまっている。

「ゾンビなら俺が食ったぞ」

 必死に自分で作り出した者たちを呼び出そうと超能力ナノマシンを飛ばそうとしたが、間の抜けた声で制された。

「食った?妙なことを言うな。つまり一体一体倒してその肉を食べたというのか?暇な奴だな」

「違いますよ大統領。このプラインくんは超能力を食べてそれを使えるようにする超能力なのでゾンビにかかっていた超能力を食べていたということですよ」

「ますます分かりづらくなったな」

「大丈夫です。そんなにいろいろ考えなくても自然と分かってきますよ」

 ほくそ笑むながら指を鳴らすとサカマの周りにいた黄色い点の集団は一斉に紫色に変色してドロドロに溶けて床に落ちた。

「こ、これは」

「もう既に手は打たせてもらいました。あなたの超能力はそれなりに調べたのでいろいろ知ってますよ。かなや奥の方に隠されてて大変だったんですからね〜」

 得意気に笑うキリヤを他所に不利になったサカマは苛立ちを見せ始めた。

「くっ、情報は厳重にロックしておいたはずだ」

「残念ながら友人にハッキングだとかが得意な人がいたんですよ。ではそろそろ終わりにしましょうか」

 顎で刺して命令されたプラインは頭をかきながら黒い穴から身を乗り出して床に手をつけた。

 するとその床はまるで氷の上ようにツルツルになってそこに立っていた唯一の人物は転んで尻を打った。

「な!あれは俺とリカが協力して使った超能力じゃないか。あの時のも食ってたのか」

 ショッピングモールでキリヤから逃げる時、リカの超能力で増幅させてもらって出来たものだ。

 これで本当に超能力を食べていたことが分かり、ダンはその力に度肝を抜かれた。

「美味しかったよ」

「いや、感想は聞いてない」

 大統領は滑る床に反抗して立ち上がろうとするがそれは一行に叶わない。

「無駄ですよ。それは床の摩擦力を無くしているんですから僕のような超能力がない限り抜け出すことはできませんよ〜」

 まるで自分の力のように自慢する彼を横目で見ながらこいつは性格が悪いなと再確認したが、確かにこれは移動系の超能力がないと脱出不可能でそれは足掻いていたサカマもすぐに観念した。

「なら、これで終わ…」

 力を貯め始めようとした矢先にキリヤ愛用のナイフが腹部を意図もたやすく刺していた。

「あなたの超能力はドレイン。相手の超能力ナノマシンを吸い取る超能力でプラインくんと圧倒的に違うのは吸い取ったものが使えないことだ。つまり、大統領なプラインの劣化版なんだよ。それにあの黄色い点、超能力ナノマシンの塊を出す時は完全無防備になって超能力者としての防御力も一時的になくなる。ほんとに使い勝手が悪い超能力ですね〜」

 長々と話している間にナイフの傷から溢れ出る血が広がって倒れていた。

「呆気ない幕切れでしたね〜。ですがまだ生きているかもしれはいのでブラインくんはトドメよろしくね。残りは食べていいから」

「うーっす」

 両足の凄まじい跳躍力で飛んで黒い空間から出て手で倒れた死体に穴を開けた。

 だがそこは摩擦力がなくなっているので思いっきりすっ転んで後頭部を打った。

「いてて、失敗失敗。先にこっちやらなきゃいけなかったかな」

 打ったところをさすって、大きく口を開けたと思ったらおもむろに床を(かじ)った。

「ちょ、あいつ何やってんだよ」

「あれは食い直しだよ。使った超能力をまた食べるんだよ。その分、超能力ナノマシンの量が減って威力が下がるらしいけどね」

 死体の(そば)で床を齧っているという奇妙な光景を見て、もう目的を達したのだということには忘れていた。




「いやあ〜皆さんお揃いですね〜」

 キリヤの超能力でビルの玄関のところへ出ると、そこにはずっと待っていた三人と敵に向かって行ったブラコンな弟、それに見たことがない可愛い女の子がいた。

「ダンくん無事だったんだね。もう私たちはヒヤヒヤしながら待ってたんだからね」

「ふん、私はお前が何事もなく帰ってくることを信じていたぞ」

「でも、ガレッドさんは心配、心配ってずっと言ってたじゃないですか?何で嘘つくんですか?」

 空気を読まないラカサは不思議そうに突っ込むと嘘がばれたガレッドは恥ずかしさで顔を真っ赤に染めた。

「バ、バカ!そんなわけないだろ。何で私がそんな無駄なことをしなければならないんだ」

 顔を見られたくないのか、ガレッドはそっぽを向いてしまった。

「兄さん。やっぱり兄さんは凄いな。あんな化け物に挑んで、生きて帰ってくるなんて」

「俺は何もやってないこの二人が全部やったんだ」

 作戦の立役者である陽気な二人を親指で刺して、同時に何もできなかった自分に腹を立てる。

「イヤイヤそんなことないよ。時間を稼いでくれたおかけでこっちは楽ができたんだから感謝しているよ」

 いつものにやけ顔でそれが本当なのか、嫌味で言っているのかは不明だがダンは納得はしていない。

 ムズムズするというか何か物足りないし、悔しさが胸の中に残っている。

「だとさ兄さん。素直に喜びなよ。これで僕たちを縛るものはないんだろう」

 大統領が死んだとなると政府の機能は停止して超能力者どころではなくなるだろう。

 これからはクラトスに任せるしかない。策はあるらしいがそれでも心配なものは心配だ。

「それはどうかな〜。僕たちは死ぬ運命にあることを知らないのかい?」

 突然の奇妙な質問に全員が顔を見合わせて疑問を深める。

 てか、プラインは相棒と呼ばれてるくらいの仲間なんだから知ってるだろ!

 と心の中で突っ込むが緊張感漂うここでそんなことは言えなかった。それに重要なところはそこではなく、キリヤの言う死ぬ運命のことだ。

「死ぬ運命?何を言うかと思えば、生き物はいつか死ぬんだ。それとも短命のことを言ってるのか?確かに超能力を使うためにこんな体になったが今更変えられないだろ」

 冷静沈着なブラコン弟は自分が尊敬している兄を利用した男に吐きすてたが、思っていたこととは違ったのかキリヤは呆れたようにため息をついて首を横に振った。

「そうじゃないよバンくん。そのことじゃないんだ。まだ誰にも教えていない真実がある。それのことなんだ。大統領を殺したのもそのためさ。話すより実際に見せた方が早いだろうからついておいでよ。面白いものを見せてあげるよ」

 断る理由はなかった。それに彼が言うまだ誰にも教えていない真実というのも気になった。

 行き先はビルの中。

 もう慌てる必要がないので普通に自動ドアを通って入った。




 階段やエスカレーターに目もくれずエレベーターの中へ入った。

 なかなかの人数だったのでこの狭い中に全員が入るのか、最初に入ったダンは不安だったが難なく入ることができた。

 言い出しっぺの男は後ろのラカサから妙な目線を受けながら(おもむろ)にポケットから変わった形の鍵を取り出してボタンの下にあるところに刺して閉められていた小さな扉を開ける

 そこからは一から九までの数字のパネルが並んでいて、何の迷いもなくそれを叩いた。

 するとエレベーターは正常に動き出して特有の感覚を全員に味わせながら下へと降りて行く。地下一階、地二階と順調に進んで行くと最後の地下三階まで電気が点灯したがそこで止まることはなく、グングンと下がって行く。

「ちょ、こ、これどこまで下がるの〜」

 急に心配になってきて涙目になりつつあるリカはすぐそばにいたダンの服の袖を思いっきり引っ張って、できるだけ体を近づけた。

「お、おい。あんまくっつくなよ」

 密着しすぎて感触がダイレクトに伝わってくるし息遣いが聞こえてくる。

「そうだぞ。ダンが困っているではないか」

「おい、兄さんの体に気安く触るんじゃない。バイキンがうつる」

 後方で並ぶ二人になぜか罵倒されるリカはさらに涙目になって袖をつかむ力も強くなった。

「いや〜、ダンくんはモテモテだね〜。羨ましい限りだよ〜」

 後ろも振り向かず、耳だけを頼りにしてそんな勝手なことを言ってくれるがこちら側からしたら笑い事ではない。

 怯えるリカをなだめて、騒がしい二人を収めているとエレベーターが終点についた。

「さあ、ここが皆に見せたかったところだよ」

 ゾロゾロと中に入って機械だらけの見渡すが、そんなものなど毛ほども気にならなくなる存在が奥の方にあった。

「突然なんだけど皆は死神っていると思うかい?」

 大きな黒と赤が入り混じった円型の入り口のようなものを背に不敵に笑ってみせるなか、ラカサ一人だけ複雑なる表情をしていた。

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