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DEADストライク   作者: 和銅修一
14/26

騒動

「は〜、どうしよっかな〜」

 ダンたちはあることに困っていた。

 それは政府の本拠地に攻め込むタイミング。できれば騒動が起きてて混乱している時がいい。

 いろんな都市機能が麻痺して行動が楽になる。

 だがそんな時などそうそう起こらない。しかし、こうして黙っていてもあちら側の体制が整って攻め込むのが難しくなってしまう。

「なんか化け物とか現れたら話は別なんだがな〜」

 愚痴を言いながら残りのカレーを口の中に運んだ。と、それと同時にクラトスのおじさんが息を荒げながら入ってきた。

「ダ、ダン!呑気に飯食ってる場合じゃないぞ。この街が大変なことになってるんだ」

 すぐに扉の鍵を閉めると、いきなりテレビをつけ出した。

 そのテレビでは国ごとに違う報道がされめいるが、この国の今ではここら辺のことが報道されていた。

 大きな文字で主張されているのは“謎のゾンビ軍団”とのことだ。

「ええ、今日未明に人間でありながら凄まじいほどの怪力を持った謎の軍団が現れました。その姿から私たちは仮に彼らをゾンビと呼んでいます。まだ原因は分かってはいませんが、周囲の市民は速やかに避難を行ってください」

 スーツが似合うニュースキャスターの後ろでは冗談のような多さのゾンビたちが、まるで映画のように暴れまくっている。まさに地獄絵図だ。

「こ、これって本当ですか?ゾ、ゾンビですよゾンビ。は、早く逃げましょうよ。食べられちゃいますよ」

「落ち着けリカ。これは(おそ)らく超能力による攻撃だろう。どうやら今度は本気で潰しにかかってきてる。よほど私たちが邪魔なんだろうな。それにしても一般市民にまで手出しするとは外道の極みだな」

「え?ゾンビって何ですか?」

 恐怖に震える者、怒りで拳を震わせる者、意味が分からず頭からハテナマークを浮かべる者。

 様々な思いが交差する中で一人だけまったく違う考えを持っていた。

「これはチャンスだな。おい、三人ともこれから行くから準備しろ!」

 戸惑(とまど)う三人をよそに弾倉に弾を込めていつものところにしまった。

「い、行くって何処に行くのダンくん」

 涙目で弱々しく大きな木の扉の前に立った頼もしい背中を見つめた。

「もちろんこんな風になっても何もできてない政府の頭を取りに行くのさ」

 決意したダンは目の前の扉を両手で開けて地獄と化した街へと繰り出した。




「確かに変な匂いがしますね。これはゾンビのせいなんでしょか?ダンさんはどう思います」

 ラカサはまるでピクニックに来た子供のようなテンションで周りに誰もいない街を見渡した。

「さあな。市民を操っているのか、それとも違う方法を使っているのかによるな」

「それってどういうことですか?」

「聞いてばかりじゃなくて自分で考えてみろ!」

 流石にすぐに頼ってくるのは良くないと前々から思っていた。

「ん〜、ここの皆さんはお掃除が出来ないということでしょうか?この匂いはそれが原因ということですね」

「いや、ゴメン。俺が説明するよ」

 額を手で叩いて自分がしたことの無意味さを思い知った。

 彼女の頭の中はお花畑で出来ているのだ。分かる方がおかしい。

「いいか、何かの超能力で操られるとなるとその人の体内に超能力ナノマシンがあることになる。それがないと超能力が発動しないからな。だがそれは俺らみたいに特別な体がないと耐えられない」

 これは酒場の時にも説明したことだ。お花畑だらけの脳では一度説明しただけでは理解できないというか、もう忘れているかもしれないのでもう一度教えてやる。

「耐えられないとどうなるんですか?」

「体の細胞がナノマシンによって壊せれて肉体的にも精神的にもズダボロになっていく。あれがその証拠だ」

 血なまぐさい話なので彼女には伏せておきたかったがこの際は仕方ないだろう。

 道端に転がっていたあれを指した。

「そ、そんな酷い……」

 目は白目を()いてそこらじゅうから血が流れ出て、小さな赤い池が出来上がっている。

「だがすぐこうなるわけじゃない。普通の人でも何十分かはもつだろうな。だからこそ俺たちは急がなくちゃいけない。どうせこの超能力は大統領のものだ。踏ん反り返って見下ろしいるそいつを引きずり下ろしてやる」

 ここら辺の街は無法者たちが多く集まっているが皆命ある者たちだ。

 それは大統領ともダンたちとも変わらないこと。だからこそ怒りがこみ上げてくる。そんな事も理解できていない奴らに鉄槌をと自分の拳を握り締めた。

「ダンさん……。少し分からないところもありましたがやりたいことは分かりました。私も協力します」

「そうか、お前らしいな」

 どんな状況でも変わらない彼女を(うらや)ましいとさえ思ってしまう。

 心が安らいで行くのを感じていると後ろの方から耳障(みみざわ)りなほど大きな音が聞こえてきた。

「お、おいダン!あれを見てみろ」

 視力が非常に優れているガレッドを前方で歩かせていると、その音の元を発見して指で指した。

「あ、あれは……」

 ガレッドのように視力が高くない三人は目を細めながらその指の方向を見つめて、ある距離まで来るとその正体は鮮明に見えた。

「「「は、蜂!」」」

 黄色で羽があって尻にではシンボルでもある針がキラリと光る。

 驚いたのはそれだけではない。

 数だ。一匹や二匹というほど数えられる数ではない。全員の両手を使っても到底届かない。

「や、やべーぞ逃げるねーと」

 とりあえず走った。敵の本拠地がこの先をまっすぐに行ったところにあるので、まずはその中に避難をする。

 あの蜂はただの蜂じゃない。舐めてかかると痛い目を見る羽目になる。それが今までの経験で得た直感だ。

 巣なんてつついていないから大群で追われる理由がない。あるとすればそれを操っている人がいてその人が政府の者だということだ。

「やっぱ罠だったか。だけどここまで来たら戻るわけにはいかないんだよ」

 足の筋肉をフルにして死ぬ気で走るが、なぜか蜂たちとの距離を広めることができない。

「ダ、ダンくん。これ大丈夫?なんか追いつかれてる気がするんだけど」

 ルカが心配するのも無理はない。なぜなら誰の耳からしても確実に羽音が大きくなっているからだ。

「仕方ないガレッド!テレポートだ」

「分かったわ」

 四人はガレッドの元へひと塊りとなって集まる。最初からこうしたかったが、テレポートにも弱点はある。

 それは人数の問題だ。今回はルカが増えて全員で四人となっている。その分、大量の超能力ナノマシンを使わなくてはいけないのでテレポートできる距離が大幅に減ってしまい、消耗も激しいものとなる。

 まだ目的の場所まで辿り着いていないのに戦力ダウンは厳しい。だがあの蜂たちに蜂の巣にされるのは嫌だ。

 二千か三千メートルほどのテレポートを

やむなく使った。

 羽音は小さくなり、自然と緊張感も小さくなって行った。

「あ、あれ?あいつは誰なんだ?」

 テレポートした後、蜂たちを警戒していたガレッドは自分の目に移る光景を見据えた。

「どうしたガレッド、一般市民がいたのか?残念だが俺たちにはそんな余裕はない。それにそいつもゾンビになっている可能性だってある」

「そうじゃない、そうじゃないんだ。あれは一般市民なんかじゃないバンだ。バンが蜂たちの前で通せんぼしてる」

「な、なに!何でバンのやつがそんなこと」

 最近会って少し話したが助けなど求めはしなかった。それはバンの性格からして断ってくると分かっていたかだ。

 なのに今、目の見えないところで助けてくれている。

 そしてそんな彼らに気づいたバンは声を張り上げることなく思ったことを口にした。

 だがそんな小さな声が音として届くことはない。代わりにガレッドの読唇術(どくしんじゅつ)によって記号で伝わる。

 ちなみに読唇術とは声が聞こえなくても唇の動きで何を話したのかを読み取る術だ。

 暗殺に役立つと政府の研究所にいた頃、視力が高いガレッドは身につけされられた。

「尾行して正解だった。ここは任せて兄さんは先に行ってくれ……だってさ」

「だってさじゃねーよ。尾行してたのかよあいつ。通りで助け来るのが早いわけだよ。ブラコン治せ!」

「いいじゃないですか。いい弟さんです。私たちは先を急ぎましょう」

 あ、ブラコンって言葉理解してないなこいつ。

「ま、まだ走るのダンく〜ん」

 昔から体力がないルカはもう息を荒げて呼吸が上手く出来てはいなかった。

「ったく、仕方ない。お前の超能力が必要になってくるかもしれないんだ。ほら乗れ」

 もうは走れないと駄々をこねる彼女を見兼ねて、ダンはしゃがんで背中で受け止められる体制をとった。

「え!で、でもそんな悪いよ。ダンくんに負担がかかっちゃうよ」

「遠慮するな。お前の体重なんてたかが知れてるし俺はそんはの気にしねーからさっさと乗れ!バンが時間稼いでんのに無駄にするな」

 叱咤(しった)されてルカはこの迷っていることが迷惑になることに気がついて、恥ずかしながらもその大きな背中に身を託した。

「よし、行くぞ!」

 気合を入れて走り出したダンと同時に二人も走りを再開した。

「で、でも大丈夫なのかな?あの蜂って超能力が使ってる武器……なんだよね?」

 確信がないので言葉を詰まらせながら、ダンと距離が一番近いルカがまたもや心配しだした。

「そうだろうな。俺たちからじゃあ蜂にしか見えなかったがもっと違う何かなんだろうな」

「だ、だよね!でもあんな数を扱う超能力者なんて見たことないよ」

「俺たちの後に作られたんだろ。だがあれだけのもんを操ってるとなるとかなりのもんだろうな」

「なら助けに行った方がいいんじゃ……」

「馬鹿かお前、俺たちは余裕がないって言っただろ。それにあいつの力を俺は信じてんだ。簡単には負けねーよ」

「ダンくん……、やっぱり兄弟同士熱い絆で結ばれてるだね」

「その言い方やめろ!何か変な意味に聞こえんだろーが」

 楽しそうに話し合う二人をガレッドは羨ましそうに見つめていたが、どちらもそれには気づかなかった。

 ただラカサが首を傾げていつものキョトンとした顔を見せるだけであった。

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