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DEADストライク   作者: 和銅修一
11/26

鋼の戦士

「みなさん助けていただいて本当にありがとうございました」

 殺し屋STRAIKEにもう一人の仲間が増えた。

 リカ=フレバレス。

 増幅という超能力を持つ少女である。

 政府が彼女を狙っていたにはこの超能力にある。

増幅、つまり何でも増幅できるのだ。

 だからダンたちの自己修復能力の力を増幅させて傷の手当てができる。これは人手が足りないダンたちにとっては朗報だが政府にとっては目を背けたくなるような内容だ。

 そしてもう一つ。政府が気にしている点はリカによる超能力者の進化だ。

 ショッピングモールの時のダンのように超能力の真の姿が解放され自分たちに降り注いでくるのではと政府は恐れているのだ。

 つまりダンたちは切り札を手に入れたと言っても過言ではない。これで勝ちが見えたと、しかしクラトスか大慌てで新聞を持ってきた。

「おい、ダン。新聞読んだか」

 入ってそうそうバンと机の上に新聞紙を広げて置かれた。

「え〜、なになに?戦争は我が国の大勝利。敵国は白旗をあげて傘下に入った?」

 戦争は終わった。それならこの世界はどうなるだろう戦争でできたこの世界は。

「なにこれどういうこと?」

「つまり、戦争に赴いていた超能力者も帰ってくるってことだ。これから大変になるぞ」

 ダンの背中に悪寒が走った。

 もうクラトスの言うチャンスはなくなったのだ。この状態で大統領を殺さなくてはいけない。

「やばいな。できるだけ固まって行動しないと確実に狙われるぞラカサ」

「な、なんで私に言うんですか?」

「お前は危なかしいんだよいろんな意味で」

 天然系の彼女は風に飛ばされたタンポポの種みたいなもので何処へ行くか、何をするのかわかったものではない。

「ダンくん、それならガレッドさんが危ないよ。さっき買い物してくるって出かけて行ったんだ」

 リカが慌ててそう告るとダンは机に置いていた二丁の銃を手にとって勢い良く玄関から飛び出した。

「お前たちはここで待機だ。何があってもそこから出るなよ。おっさんはそいつらを見張っててくれ」

 とリカよりも慌ただしく、それだけを三人に告ると何処かへと走ってしまった。

「ダンくん……ガレッドさんが何処にいるのか知ってるのかな〜」

 リカにはラカサよりもダンの方が危なかしいように見えて仕方なかった。




「まったく……あいつには困ったものだ。いつもピザばっか食って、体に良くない。私がちゃんとしたものを作ってやらんとな」

 ガレッドの片手には買い物袋があった。

 中身はカレーを作るために玉ねぎ、人参、ジャガイモなどが詰まっていた。

「ふっ、ふっ、ふっ。料理には自信がある。リカはからっきしだし、ラカサもできん。これで差を広めればダンを……」

 自然と足は早まって行く。だが空から何か妙な音がするのに気がついてその足は止まった。

「なんだ?ヘリでも飛んでいるのか」

 空を見上げてみると確かに飛んでいたが、それはヘリという類のものではなかった。

 人の形をしていて全身が銀色の装甲に包まれている兵器のようはものが背中についたロケットエンジンが青い炎を噴射して鳥のように飛んでいた。

「な、何あれ?」

 見上げながら無意識に買い物袋を地面に落とすがそんなガレッドを無視して兵器と思われるそれは降下してどんどん近づいてきた。

「こっちに向かってきた!」

 甲高い音を立てながら銀色の兵器は突っ込んでくるが、ガレッドはテレポートを使って、前方にあったビルの屋上に逃げた。

「一体なんなのよあれ?」

 ガレッドは屋上から誰もいなくなったところへ突っ込んで土煙を上げる兵器のような機械人間を見下ろした。

 狙いは完全に私だった。

 この辺には少ないながらも一般市民もいるし、治安も良い方だ。なのにこのざま。

 総理大臣がちゃんと仕事をしているのか疑ってしまう。

 いや、あれが私が超能力者だと知って襲ってきたのならあれは総理大臣の(めい)でこんなことをしていることになる。

 ジッと目を凝らして銀色の兵器がどうなったのかを見つめてみると、何事なかったように立ち上がって目をビルの屋上にいるガレッドに光らせた。

「や、やっぱり私を狙っている」

 何かの事故や誤作動で落ちきたわけではない。殺すために降下してきたのだ。

 それを示すように睨んでくる銀色の兵器は肩に収納されていた刀を手に取った。

 刀の長さはその兵器の背と同じほどある。目が特別に良いガレッドは屋上からでもそれが見て取れた。

「何あのでっかい刀は?私を舐めているのか」

 あれだけ大きければ重量もそれなりにあるだろうから動くは必然的に遅くなる。

 ガレッドの超能力であるテレポートに攻撃力など無意味。それを良く分かっているガレッドはニヤリと勝利を確信した笑みを浮かべた。

「ふっ、正体が何なのかはイマイチ分からんが、ダンに迷惑をかけるわけにはいかん。いつもあいつばかりに負担をかけているから今回ぐらいは私一人でお前を倒してやる。それに今日はカレーだ。カレーは煮込めば煮込むほど美味しくなるらしいから早めに終わらせてもらうぞ」

 ガレッドの挑発が聞こえて、それを理解できたのかは不明だが銀色の兵器は背中のロケットエンジンでまた突っ込んできた。

「甘いわ!」

 ガレッドは兵器の目の前から消えて背中へ回った。

 そこで兵器の後ろ首に英語で名前が書かれているのにガレッドは気づいた。

「アルジェントか。兵器の癖にいい名前をしてるじゃないか」

 そんな余裕を見せてまずは背中に一発。

 飛ばした先は少し離れた場所。だが周りを見渡せばガレッドが見える位置。

 テレポートされたアルジェントは数秒、何が起きたのかを確認して首を回してガレッドを見つけると同時にロケットエンジンのスイッチを入れた。

「それを待っていたぞ」

 ガレッドは向かって来るアルジェントには銃口を向けず、右隣にある建物を撃った。

 アルジェントはその銃声を聞いてその弾を目で追うが、建物の壁に当たるとその弾は建物の一緒に消えた。

 そして、自分の下に大きな影が出現したのに気がついて咄嗟(とっさ)に上を見上げた。

 影の正体は弾が当たった建物。全てが切り取られたようにアルジェントの頭上落ちて建物は粉々に砕けた。

「テレポートできる大きさは限られてはいるが、これでそのご自慢の装甲も砕けているだろ」

 次々と建物の瓦礫(がれき)が落ちていく中、一際(ひときわ)大きな影があり、目が良いガレッドはすぐにその正体が分かった。

「な、なんだと」

 それは傷一つない銀色の装甲のアルジェントだった。

「あれだけの攻撃でかすり傷一つないなんてどんな化け物だ。それにこの感じ、やはり超能力者」

 その答えることもなく、アルジェントは自分の背丈と同じほどに長い刀を振り上げながら高速で接近する。

「なら、まずその刀から貰うわよ!」

 振りかざす寸前、スコープを覗かないままでそれを狙って撃ったが鋭い刃に真っ二つにされた。

 そこまではいい。

 ガレッドのテレポートは直接的か間接的かのどちらかで標的に触れればいい。たとえ真っ二つに斬られても間接的に触れた後、テレポートは可能……なはずだった。

 しかし、いくら発動しようにも刀がテレポートをする気配はなくすぐそばに迫っている。

「ま、まずい!」

 慌てて自分を適当な所にテレポートしたがガレッドはあの刀がどうしてテレポート出来なかったのかを考えた。

「なんで私の超能力が発動しなかったんだ。いや、発動しなかったというより、何かに邪魔されたような感じだった」

 (あご)を手に乗せて考えるポーズに入ったがそれを許すほどアルジェントは甘くはない。

 すぐに居場所を探知して先ほど同様に刀を振り上げながら高速で接近してくる。

「考えるより試してみた方がいいかもね」

 スピードは背中のロケットエンジンだけでさほど速くはないし、小回りが利かないから細かい攻撃もできない。

 なので近くで観察してもガレッドなら危険となってもテレポートで逃げられるし、刀を振り回すだけで蹴りもないアルジェントの攻撃を避けることはそれほど難しくはない。

 なのでテレポートで背中に回り込んで一度触ってみた。

 この場合、間接的の時より超能力ナノマシンが多く相手の体に回るのでテレポートまでの時間が減ったりする。

 もしかして厚い装甲が超能力ナノマシンを塞ぎきってテレポートしなかったのかと思ったが直接的でも体のテレポートはできなかった。

 それに刀には装甲がない。なのに超能力がまるで効かなかった。

 体は装甲が邪魔で中……があるのかは知らないがそこまで超能力ナノマシンが行き届かなかったと納得できるが、刀がイマイチ検討がつかない。

 だからガレッドはもう一度あの時のことを思い返してある結論に(いた)った。

「超能力ナノマシンを斬ったのか?」

 そうすれば刀に超能力ナノマシンが流れることはなく、テレポートはできなくなる。そうとしか考えられなかった。

「でも、その刀の力。後悔することになるわよ」

 テレポートは基本攻撃力がない。だからこそ周りにある何かを利用するが、今回は特別に良いもの目の前にある。

「今度こそ、その刀貰うからな!」

 狙うのは刀の柄、つまり持つ部分。

 だがそこはアルジェントの手が守っていて触れることなんてできない。

 手を貫いて、柄に弾を当てたいけどその時はガレッドにそんな攻撃力はない。だから他の方法を取るしかない。

 まずはアルジェントの手から刀を離させるため、アルジェントの手首に木箱を落とした。

 テレポートのことをまだ理解できていないアルジェントはそれに戸惑い、驚いて刀を一瞬でも手放した。

 その一瞬があればガレッドにとっては十分だった。自分をその刀の近くまでテレポートして回収。

 反撃があるかもしれないのでテレポートで距離をとったが刀を取られたのが不思議なのか、何もないところを何回も握っていた。

「これで貴様の忌々しい刀は宣言通り頂いたぞ」

 刀を空に掲げて挑発するとアルジェントは簡単に引っかかってロケットエンジンでガレッドとの距離を詰めようとする。

 しかしそんな姿を見てもガレッドは冷静な目をしながらイタズラっぽく笑ってみせた。

「ふっ、それには既に細工を仕掛けておいた」

 その忠告通り、アルジェントの翼ともいえるロケットエンジンから火が出て数秒のうちで爆発した。

「ほれ、これもオマケだ」

 ガレッドは奪い取った刀を宙に投げてテレポートさせた。

 テレポート先は落下するアルジェントの予想着地地点の遥か真上。

 刃は下に向いて自然と重力で勢い良く落下して、アルジェントの胴体の装甲を貫いて刺さった。

 下にテレポートしてアルジェントの破壊を確認して、次に落としていた買い物袋の中を確かると全て無事だった。

「どうやら今夜のカレーに支障はでなそうだな。だが覚えておくんだ。いつもこちらが守ってばかりではない。いつかそちらに攻め込みに行くぞ」

 もはや機能が働いていないそれに自分の意見を吐き捨てて、ガレッドは買い物袋を揺らしながら帰って行った。

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