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あれから二ヶ月…。


この世界に来てから二ヶ月、何とかこの世界での生活に慣れてきました。

慣れないうちは大変でしたね。寝るたびにひたすら魘されてましたから。

…母親が

「起きなさぁぁぁぁぁい!!!」

って追いかけてくるんですよ?夢の中で。

必死に逃げましたね、

「お母さん分かったからやめてぇぇぇぇぇ!来ないでぇぇぇぇぇ!」

って。

何度夜中に飛び起きたことか。そのたびに隣で寝ているマーリンさんに心配されましたが。

ええ、お察しの通り私とマーリンさんは同じベッドで寝ています。

私は床とかどこか適当な場所で寝ると言ったんですけどね。住み込みで働かせて頂いている身ですし。

しかしマーリンさんが頑なに聞き入れず、結局一つしかないベッドで二人で寝るということになりました。

初めはとにかくこの世界の常識、そして食料の確保を最優先としました。

常識はともかく何故食料かというとこの家、何と食べ物が全く無いんです。

そりゃあマーリンさんに問い詰めましたよ。

そしたらある魔法を行使した結果、体内で生命活動に必要な物が生み出されるようになったというのです。

完全に自分の中で栄養やら酸素やらの循環が完結してしまっているわけですね。

お陰で家に食料を置いておく必要がないので、この家には食べ物がないそうです。

それに対し私は

「食を楽しまないなんて人生の大半を損しています!!」

と言ってやりました。

そこから私はこの世界の食材を猛勉強し、実際にこの世界での料理がどんな物か知らないので、その場その場で実験しながら料理をしました。

幸い、元の世界と似たような食材もあったので助かりました。

どんな食材がどんな味・栄養を持つのかとか、焼くより煮た方が甘みが出るとか、きざむより押しつぶした方が多く果汁が取れるとか、そういったモノをひたすら勉強した結果………。

何とか美味しい食事を作れるようになりました。

いやー、本当によかったです。

下手すれば私の命の危機ですからね。せっかく取り留めた命です、捨てたくはありませんから。

それで料理を作っているうちに気が付いたのですが、どうやらこの世界には甘いものはあっても、お菓子やデザートという甘味がメインの食べ物がないそうです。あくまで他の味を際立たせるためのものなんだとか。

それに甘いものというのは現在大変貴重であり、庶民が手が出せるようなものではないそうで。

大抵貴族や王族などの上流階級が食すものの中に入っているのだそうです(この世界、身分格差があるんですよね。やだなぁ。)。

それを知ったときはショックでした。ケーキやチョコやアイスや饅頭も無いわけです。

なので、私独自に糖分を含んだ木の実や植物を探し、何とか砂糖と似たようなものを作ることに成功ました。

人工的な物を含んでいない100%自然の甘みです。

次に卵や牛乳がないので、どうせならとマーリンさんに家畜を飼う事を提案しました。

マーリンさんは二つ返事で許可を下さったので早速家畜小屋を作ろうとしたところ、マーリンさんが魔法で一瞬のうちに作ってしまいました。

リアル『まほうの ちからって すげー!』ですよ。

現在、その中で私が見つけたアクナタ(鶏的な生物、ちゃんと卵も産みます。あ、もちろん無精卵と有精卵の区別はつけていますよ?)二羽とブモー『牛的な生物、乳牛として世話をしています。)二頭を飼育しています。

近くに畑も作りましたし、そこで小麦の代わりとなるエメナ草を栽培しています。

まあそんなこんなで、私は案外異世界でもそれなりに楽しく暮らしています。

最近ではマーリンさんに頼まれた調合の材料を採取しに行ったりしています。

あぁそうそう、さっきの家畜小屋のくだりで分かると思いますが、マーリンさんは魔法が使えるんだそうです。

そしてこの世界では魔法を使える人を『魔法使い』と呼ぶのだそうです。

「私にも魔法が使えますか?」

と聞いたら

「無理だな、君の魔力では下位魔法すら発動できないだろう。」

と言われました。

その時はショックでしたね。

少しファンタジーなことに憧れていたというのに、全くできないと言われてしまったのですから。トホホ…。


「マーリンさーん、昼食ができましたよー。」


「ああ、今行く。」


現在(多分)お昼時、昼食の準備が出来たので、別室で調合を行っているマーリンさん呼びました


「今日はヘナツのスープとパンです。

 パン生地にココヌを練り込んであるので、よく合うと思いますよ。」


「どれどれ……。ふむ、確かに美味だ。

 また腕を上げたな、ユーナ。」


そう言ってマーリンさんは頭を撫でてくれました。


「そ、そうでしょうか。

 エヘへ…。」


こうやって面と向かって褒められると照れますね。

マーリンさんのお口に合ったようで良かったです。


「今日は何か手伝うことはありますか?」


「いや、今日は特に無いから自由にするといい。」


「じゃあ、夕食の分の食料を獲ってきますね。

 今日こそはコブーをご馳走してみせます!」


コブーとは、元の世界で言うなら豚です。

ただ頭に硬い皿のような物があり、それを向けて突進してきます。

私はここ最近、コブーを仕留めることに躍起になっているのですが、一向に成果は上がりません。

武器?自作の弓と木の棒にちょうどいい形をした石を括りつけた斧しかありませんが何か?

それに真正面から戦いませんよ?罠で身動きが取れないところを後頭部を斧でフルボッコです。


「そうか、気をつけるんだぞ。」


「はい、では行ってきますね。」


話している間に食器を片付けた私は狩猟用の道具(弓矢・ナイフ・縄・斧・物を入れる革袋など)とマーリンさん特製護符を持ち、外へと出掛けました。

あ、そうそう。

マーリンさん特製護符とはマーリンさんが作ってくれた御守りで、私の手に負えない位強い獣が近くに寄ってこないようにするためのものだそうです。

つまり私の生命線ですね、命綱と言ってもいいでしょう。

ともかく、これのお蔭で私は落ち着いて狩りが出来るわけです。

家を出た私は、昨日仕掛けておいた罠を見に行きます。

数は十個です。あまり多くても廻るのに時間がかかってしまいますから。

一個目、収穫無し。

二個目、アクナタ1羽、血抜きをして革袋へ。

三・四個目、収穫無し。

五個目、何者かによって木っ端微塵に。

六個目、アクナタ1羽、血抜きをして革袋へ。

七個目、かかった形跡があるも破壊。

八~十個目、収穫無し。

今日の収穫は上々ですね。アクナタが二羽も捕れたのは久し振りです。

収穫ゼロなんてザラですし。

罠を廻る途中野菜もそこそこ採れたのもよかったですね。

一食分には足りませんが、残りはウチの畑で採れるでしょう。

こうして私は今日の狩猟タイムを終えm


「そこのアナタ!」


後ろから突然の呼び掛け。


「は、はひ!?」


突然話し掛けられたので変な返事をしてしまいました。

いや予想外でしょう?誰もいないと思いきやいきなり後ろから大声で呼ばれたら。

私が声のした方向を向くと、そこには長身の美女が。

膝程まである灰色(と言っても、どちらかというと銀に近いかもしれません。ようは綺麗ということです。)の長髪に紫色の瞳、それに真紅のドレスを纏った美女が空中から私を見下ろしていました。

……見下ろして?

あの女性、宙に浮いていますね。

なる程、彼女も魔法使いなクチですか。

しかしどうしましょうか?

彼女、私の顔を見てから反応が無いのですが。

…私の顔、そんなに醜いですか?

無反応だとサッパリ分からないので、顔をしかめるなり眉を寄せるなりの反応が欲しいものです。


「か…。」


「か?」


「可愛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


「むぎゅ!?」


「きゃー!何この子超可愛い!

 まるで子リスみたいじゃない!!」


な、何ですか!?なぜ私は抱き締められているんですか!?


「ねえアナタ、どこに住んでるの?

 こんなところじゃなくて今日から私の家で暮らさない?」


「えっと、あの。」


「そこまでだ、馬鹿弟子。」


うぉう!?

今度は突然現れ、先ほどの女性を引き剥がしたマーリンさんに抱き締められました。

これが魔法の力というものですか…。

Oh, it`s fantasy.


「あら久しぶりね、先生?いつからそこにいたの?

 (その子リスちゃんをこっちに寄越しなさいよ!)」


「今だ、何やら見知った愚か者の気配がしたからな。

 (この子はうちの子だ、貴様などに渡すものか。)」


えぇっと、何やら剣呑とした雰囲気。

お互いを先生、弟子と言っていたなら、この二人はそれなりに仲のいい間柄だと思ったのですが…。

取り敢えず、ここにいても埒が開きません。

私は意を決して、睨み合っている二人に話しかけます。


「あの、ずっとここに居るのも何ですし…。

 とりあえず家に行きませんか?」


「ふむ……。そうだな、ひとまず家に帰ろうか。

 …貴様も来い。」


「言われなくても行くわよ。」


私がこう言うとすると二人は毒気を抜かれたようにこちらを見て、私の提案に賛成してくれました。

一触即発の事態は免れたものの、未だに二人は睨み合っています。

うぅ…、今日のティータイムは大丈夫でしょうか?



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