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ふと気がつくと異世界に!?

初めまして、佐藤優奈です。14歳です。

私、トリップしました。

そういうサイトでそういうジャンルの小説を結構読んでたのですが、現実で体験してみると案外呆気ないものでした。

気がついたら森の中ですよ?

トンネルを抜けたワケでも事故に遭ったワケでも神様に会ったワケでも何かしらの超常現象に巻き込まれたワケでもありません。

ふと気が付くと森の中、驚きのあまり思考停止。

その後森の中を走りながら混乱した頭の中で色々考えたのですが、結局これはトリップだという結論に落ち着きました。

そこからは意外と冷静になれましたね。

取り敢えず生活基盤の確保に動きました。

先ずは街に出てみようと考えたのですが、生憎とここは右も左も分からない異世界。

何処に何があるのか、そもそもここが何処なのかも分かりません。

そして今、宛もなく彷徨っています。

しかし、どうしましょうか…?

食料はイザとなればそこら辺の木の実やら草やらを食べればいいとして、水も森の中のどこかにあるはずです。

植物の中にある水分でもいけるはず……!

衣服は今着ている物を暫く使うとしても、やはり衛生上よろしくないでしょうか?

そして最大の問題、住居です。

立派な一戸建てじゃなくていいんです、掘立小屋でもいいんです。

しかし探してもそんな小屋一つもない。

ここは未開の土地、前人未踏の地なのでしょうか。

あぁ、困りましたね。

おや、あそこに見えるはなんと美味しそうなキノコ。

色合い的には灰色と地味ですが、だからこそ安心できます。

派手な警戒色をした毒々しいキノコよりかは安全なはずです。

という訳で、いただきまーす♪


パクッ


ふむ…、アッサリとしていながら噛めば噛むほど味に深みが増しますね。

これは当たりのようです。今後はこれと同じものを食べていれば当分は持つはずです。

………栄養は偏りそうですが。

四の五の言っていられませんからね、この状況では。

さて、これからどう…、し、ましょ、う、か……?

私の体に襲い掛かったのは突然の倦怠感と睡魔。

アレ?何か、ヤバ、く、ない、で、すか、コレ…。

あは、は……、当たり、だと、おもっ、たんです、けど、ね。

あ、もう、意識、が……。


ガクッ


そこで、私は意識を失いました。




「…ん…うぅん……、…アレ?ここは?」


私が目を覚ましたのは見知らぬ部屋の中。

はて、私は何故ここに?

えぇと、確かいきなりトリップして、その後宛もなく彷徨って、近くに生えてた灰色キノコを食べて……。

……あぁ!!

そうです、あのキノコ!!

アレを食べていきなり眠くなったんです!

ということはアレは毒キノコだったということですか。

むぅ、地味な色だから安心していたんですが…、どうやらハズレだったようです。

ということは、ここはあの世でしょうか?私がイメージしていたあの世とは違いますね。

もっと華やかで、天使がそこら中に飛んでいると思ったのですが…。

事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものです。


「おや、目が覚めたか。」


私が色々考えているところに部屋に入ってきたのは、右目にモノクルをかけた妙齢の女性。

床に届きそうな白金色の長髪に蒼い瞳。吸い込まれそうな瞳というはこういうのを言うのでしょうか。

なんと言うか、ザ・大人の女性という感じですね…。

うぅ…、私にはない二つのたわわな果実が羨ましい!

おっと、そんな事を考えている場合ではありません。


「貴方が助けてくれたのですか?」


常識的に考えて、そう思うのが無難でしょう。

まあ、トリップした時点で常識も何もないとは思いますが。


「ああ、森の中で倒れていたのでね。

 灰色のキノコを食べただろう?」


「っ、何故分かったのですか?」


「図星か。

 あのキノコはスロゥマッシュと言ってね、食べると強烈な眠気が襲ってくる。

 よく睡眠薬の調合材料に使われているよ。」


ほっ、良かった。毒キノコじゃなかったんですねアレ。

いえ、毒キノコなんでしょうけど。

体に害があるようなものでなくてよかった。

ホントに死んだと思いましたからね。あんなデンジャーな体験はもう懲り懲りです。


「しかしこの森でスロゥマッシュを食べるとは、自殺志願者かね?」


「違います、気がついたらこの森にいたんです。

 それにキノコもそうとは知らずに食べてしまったものです。不可抗力です。」


「ほぉ…、何時の間にかこの森にいた、と?

 誰かに転移魔法でもかけられたかな?」


あぁ、やっぱりあるんですね魔法。

異世界の情報ゲットです。どうやらこの世界はファンタジーな世界のようです。

しかし、どう説明しましょうか。

恩人なワケですから、嘘を言うのは心苦しいですし、正直に話しましょう。

と言うかそれしか説明のしようがありませんし。

それに何より、この人に嘘を言ってもすぐにバレるような気がします。


「えぇと…。

 実は私、異世界から来たんです。」


「……それを証明できるものは?」


「ありません。

 自分でも突拍子も無いことは重々承知しています。

 ……やっぱり、信じてもらえませんよね。」


私でも相手の立場だったら

「何言ってんのコイツ。」

ってなりますから。


「いや、時間的に言えば有り得ない話ではない。」


なんと!?今の話のどこに信じる要素が!?


「何故ですか?」


「実は数十分前、とある国で異世界から勇者が召喚された。

 それを踏まえれば異世界から勇者を召喚する際、何らかの偶然で君が巻き込まれたという可能性もゼロではない。

 それに君が纏っている衣服、見たことがない。

 そう考えると、やはり君は異世界から来たというのが自然な結論だ。」


…よく分かりませんが、とにかく私が異世界から来たと信じてもらえたようです。


「さて、これからどうする?

 異世界から来たのなら、行く宛などないだろう?」


ハッ、そうです!

運良く助けてもらえたとはいえ、いつまでもお邪魔するのは流石に失礼です。

ですが、行く宛がないのも事実。

せめて民家の場所が分かれば……、ん?

ちょっと待ってくまださい。今私がいるのは民家ですよね。

それで、ここ以外には知り合いも宛もない。(目の前の人が知り合いと言えるかどうかは甚だ疑問ですが。)

こうなったら……!

私は決死の覚悟を決め、正座の体勢で手をついて頭を下げます。


「お願いします!住み込みで働かせてください!

 料理とか掃除とか家事全般こなせますから、どうかお願いします!」


外聞や恥など気にしていられる状況ではありません!

ここで断られても、頷いてくれるまでこの体勢崩しませんからね!


「あぁ、よろしく頼むよ。」


「そんな事言わずに!

 って……、あれ?」


おや?そんなあっさりと…。

自分で言うのも何ですけど、バリバリ不審者ですよね、私。

いいんですか、こんな不審者家において。


「何を呆けているんだ?

 やはりこの話はなk」


「あー!あー!違います!違いますから!お願いですからそんな事言わないで!

 誠心誠意真心込めて喜んでやらせていただきます!!

 だから見捨てないでぇ!!」


あ、危なかった…。危うく白紙にされるところでした。


「そういえば、名前は何て言うんですか?」


「人に名を尋ねるにはまず自分から、と教わらなかったかな?」


おっと、確かにそうですね。


「私は佐藤優奈と言います。

 明石がファミリーネームで、優香がファーストネームです。」


「ファミリーネームは普通後ろだが…、これも世界間での違いか。

 私の名は『マーリン』、しがない魔法使いだよ。」


こうして、私の異世界ライフは幕を開けました。



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