あだ名
3人は今来た道を引き返していた。
夏村とあん子は、あまり深く探らないようにすることを決めていた。
が、一人だけ探っている者がいた。
「いや〜、美しかった。ああいう瞬間に鳥が飛び立つなんてベタな演出、僕アニメか漫画でしか見たことなかったよ〜。あれは仕掛けたのかな、偶然鳥が飛び立っただけなのかな……。気になる! 気になるよあん子ちゃん! 一緒に調べよう!」
そう言って莉子の手をとった。
「莉子サン、メガ、カガヤイテマス。コワイ、デス」
「ちょっと莉子ちゃん、あんまり深く探らないほうがいいんじゃない? こっちは盗み見てたんだし。それにあん子は調べないよ」
夏村があん子の手を取り返しながら莉子につっこむ。
すると諦めたのか、ちぇっと言った。
「そういえば、なんかちゃん付けで呼ぶのって堅苦しくない?」
「唐突だなぁ……。でも、それもそうだね」
「デハ、ナント、ヨベバ、イイノデスカ?」
そうだなぁ、と莉子は腕組みし、耳を疑うようなあだ名を考え言った。
「ロボちゃんとかどう?! なんかロボットっぽいし!」
「えっ」
「え、そんなでかい声だしてどしたの?」
「いや、なんでもないんだよ、うん……」
――ばれた? ばれたかな? まあばれてもおかしくはないけど、どうしよう……。
夏村の頭の中は焦りと不安で埋めつくされ、それがぐちゃぐちゃに混ざる。
――あん子はどう答えるの?!
焦りと不安で押し潰されそうになりながらも、あん子の表情を確認する。
「ソレハ、シツレイ、デスカ? 夏村サン?」
なんと夏村に助けを求めてきた。
――これは、チャンス!
「そ、失礼だよ! 莉子ちゃんそんなこと言っちゃあよろしくないでしょ!」
「んー、そっか……。じゃああんちゃん? でもあんちゃんだと男っぽいから……あん子でいいや。あん子でいい?」
「イイデスヨ」
「次は夏村ちゃんだ。うーん……」
ロボちゃんというあだ名にならなくて本当によかった。
そう思う夏村だった。