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あいうぉんととぅーびーあ ニンゲン!  作者: 今はまだ保留でお願いします
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毎年恒例

「皆さん今日は転校生がななんとなんと二人もやってきたのよはい拍手!!」


一年生の時の担任、加賀美友代[かがみ ともよ]先生の特徴である、早口だが滑舌がよいどこかの商売人のような言葉で紹介され、拍手の中二人はやってきた。


「ではまず小波さんよろしくねはいどうぞ前に立ってその次に三好さんもね」


はい、という返事をして莉子は教卓の前に立つ。


「黒板に名前は書きますか?」


「お願いできるかしら私黒板に字を書くのってどうも苦手なのよね」


黒板にさらさらと書くその文字は、加賀美先生より上手だ。


「小波莉子[さざなみ りこ]といいます。よろしくお願いします」


では次、とあん子の出番が着た。


――あん子、絶対字なんか書けない。どうしよう。


夏村は内心ひやひやしていた。


あん子が自宅にやってきた時。


夏村はあん子に『いただきます』や『ごちそうさま』などしか教えていない。


それにあん子は、箸を使わないあんまんしか食べていない。


けれどあん子は、靴も体内から出てきたし制服の着方もわかったので、もしかすると字も書けるのではないか、という期待も少し持っていた。


あん子は莉子からチョークを受け取った。


――書けて……。


自然と祈るように、手を合わせていた。


するとあん子は――


「三好あん子デス! 加賀美先生トオナジク、ジヲカクノガ、ニガテデス! ナノデ、コンカイ、ハ、コクバンニ、カキマセン!」


――あぁ。


あん子は頭がキレるみたいだ。


まさかそんな回避法があるなんて、夏村は微塵も思っていなかった。


ロボットチックに考えると、これはあん子が持つ高い危機回避能力のおかげかもしれない。


「ワタシハ、夏村サンノ、イトコ、デス! ヨロシク、オネガイシ、マス!」


そしてあん子は、夏村が考えた従姉妹という設定も覚えていた。


記憶力もいいようだ。


「さて転校生の紹介も終わったしみなさん体育館に移動しましょうそうです恒例のアレです」


加賀美先生に言われるがままに、夏村達は体育館に向かった。



☆★☆★☆



夏村達のクラスが体育館に着くと、加賀美先生が言っていた恒例のアレが始まる合図である音楽が流れた。


最初は大きかったその音楽が、だんだんと小さくなってくるとともに、なんともチャラい声が流れてきた。


「ヘイヘーイ! みなさん、元気ですかーい?」


いぇーい、と声があがる。


その声に驚いたのか、あん子が話し掛けてくる。


「夏村サン、コノカンセイハ、ナンデス?」


相当驚いたのか、あん子の目には少しの涙が浮かんでいるように見える。


「毎年恒例なんだよ、気にしないでノッてればいいと思う」


「ハイ……」


あん子は諦めたのか、急にノリノリになった。


「みんな元気が足りないんじゃなあい?」


「「いぇーい!!」」


「へーい、いい感じじゃーん。それでは、星宮中学校恒例の、クラス大ちぇんじ大会始めちゃいますよー!」


「「いぇーい!!!」」


「まず一年生のクラスから発表しちゃいましょー! 一年一組の担任は……」


こんな調子で、担任とクラスメイトを一人ずつ言っていくのだ。


これは星宮中学校の伝統行事の一つだ。


――わけがわからない……。ていうか疲れるし……。


長いしうるさいので、参加したくはないのだが、参加しないと自分のクラスがわからないのでしょうがない。


適当に聞き流していると、二年生の番になった。


一組、二組と聞いていくが、夏村やあん子、莉子の名前は呼ばれない。


「続いて、三組の番だよー! 担任は、加賀美先生!」


加賀美先生はぺこっとお辞儀をする。


「気になるクラスメイトはー……」


しかし、三人の名前は呼ばれない。


ところが、中盤に入ると突然夏村が呼ばれた。


「三好夏村ちゃーん!」


「あ、私三組だ」


「3クミデスカ! イイ、デスネ!」


「僕も三組がいいなあ」


そんなつぶやきが聞こえたかのように、名前を読み上げている生徒は微笑んだ。


「な、なんと! 三組には転校生がいるよーう!」


「「おぉー!」」


転校生、という言葉に生徒達が反応する。


「そ・れ・は、三好あん子ちゃんと小波莉子ちゃんだよーう!」


「ワタシ、夏村サント、オナジ、ウレシイデス!」


「僕も嬉しいよ夏村ちゃん!」


「……なんか疲れそうだな」


クラス発表とともに、今後も振り回されると悟った夏村だった。



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