登校しようか
学校に近づいてくると、だんだんと同じ制服を着た生徒が増えてくる。
今日から学年が上がるので、みんなうきうきしているのだろう。
いつにも増して、生徒達の会話が弾んでいる。
どんな人と同じクラスになるのだろうか、という楽しみからきょろきょろとしている人も少なくない。
そんな中でも、やはり夏村、あん子、莉子に向けられる視線は多かった。
表向きだけ人がよく、友達も多い(はずの)夏村が、両脇に見知らぬ少女を連れていたら誰でも見てしまうだろう。
「夏村ちゃん、さっきからじろじろ見られてるけど、人気あるんだねぇ〜」
夏村の左半身をつつきながら莉子が言う。
「莉子ちゃんそんなにつっつかないでっでば、くすぐったいよ。それに、人気があるんじゃなくて莉子ちゃんとあん子のことが、気になってるだけだし」
つついている莉子の手を振り払いながら夏村が言う。
「ワタシガ、ドウカ、シタ、デスカ?」
夏村の右腕を取りながらあん子が言う。
「初めて見る子だから、みんな気になってるって話だよ。……ていうか、なんで腕組んでるの?」
「サキホド、コウシテイ、ル、オンナノコガ、イマシタノデ!」
「腕組んでる女の子? ……あ、きっと百瀬と柑奈だよ」
如月百瀬[きさらぎ ももせ]。
毛先がくるんと丸まっていて、ふわふわとした女の子だ。
みんなに優しいけれど、柑奈にはとても甘い。
神無月柑奈[かんなづき かんな]。
大人の事情で苗字と名前が似てしまった、少し残念だが元気いっぱいの女の子。
百瀬と付き合っている……かもしれないという噂を聞いたことがある。
「モモセ、カンナ……? モモノカンヅメ、ミタイ、デス!」
「あん子ちゃんそれ、若干失礼だよ?」
莉子が呆れたように言う。
が、失礼という言葉を知らないあん子は、
「シツレイ?」
となる。
そして、あん子がロボットだということを知らない莉子は、
「え、失礼知らないの?! あん子ちゃんマジ?!」
当然驚くわけだ。
「失礼っていうのはね、相手に迷惑をかけそうな時、軽くわびる時き、相手に何かを問いかける時に言う言葉なんだよ」
「莉子ちゃんのこと歩く辞典って呼んでいい? そしてさりげなく腕組まないで?」
「あー、ばれちゃったかー」
「なんで悔しそうに言うのさ」
「夏村サンハ、ワタシノ、トモダチ! アマリ、オカシ、ナコト、シチャダメ、デス!」
夏村の腕をぎゅーっと握りしめ、莉子を注意する。
「注意してくれるのはありがたいけど、痛い、痛いよあん子! 手形のあざできちゃうよ! ていうか、学校行くよ!」
三人揃って校門に入るのだった。