大きい、大きい
「ご、ご主人だと?!」
「ハイ、ゴシュジンサマ」
むくっと自身の体を起こし、正座してロボットが言った。
つられて夏村も正座になる。
「あの、えっと……」
「ナンデ、ショウ。ゴシュジンサマ?」
「名前と年齢は?」
「Y‐09、ネンレイ、ハ、ゴシュジンサマト、オナジ、デス!」
「ゼロ、ナイン?」
まあロボットだし英語や数字が名前なのかな、と一人納得する。
だが、これから一緒に暮らすことを考えると、名前をつけたほうがいいだろう。
「ていうか、一緒に暮らすって決定なのかよ……」
「ゴシュジンサマ、アタマ、カカエテ、ドウシマシタ? ヘッドエイク、デスカ?」
「ヘッド……ああ、頭痛ってこと? べつに痛くないよ」
あはは、と笑うとロボットも笑い返してきた。
――さて、名前考えないと……。
一旦このロボットの特徴を整理する。
水色の長髪。
白い肌。
眠っている間は気づかなかったが、長い睫毛に縁取られた目はエメラルドグリーンだ。
……そして大きな胸。
「水色と緑……ブルー、グリーン……長髪……って、なにしてんの?!」
驚いて立ち上がる。
Y‐09は、勝手に部屋の掃除を始めていた。
「ヘヤ、キレイ、シマス!」
「い、いいっていいって! 汚いくらいがちょうどいいの!」
「ゴシュジンサマ、コレ、ナンデス?」
Y‐09が両手に持っていたのは、夏村がいつもつけている小さなブラジャーと、青と白のボーダーパンツだった。
「っ!! み、右手のやつは胸につけるやつ! 左手のは、は……はくやつ!」
「ソンナンデスカ? ワタシ、シテナイ、デス」
「し、してない?! じゃあ、その、その……大きな、胸は……」
本当の大きさである。
「ツケル、イイデスカ?」
「ま、まあ……つけたほうが、いいと思うけど……」
「オォ! ツケル、デス!」
そう言って自分の服をめくりあげた。
ブラジャーはしていないので、大きな胸はまるだしである。
「ハク、モ、シマス!」
続いて自分のスカートを一気に脱いだ。
パンツも履いていないので、下もまるだしだ。
つまり、Y‐09は今、裸である。
「き、きゃああああああ!! いろいろまずいって!」
目を手で覆う。
「ゴシュジンサマ? メ、カクス。ナゼ?」
「いやいやいやいや、見られないよ! 恥ずかしいじゃん! 恥じ知らないの?!」
「ハジ? ワカラナイ。デモ、ツケル、ト、ハク、ヤリマス!」
「じ、自分でやってね! ほら、早く!」
「カシコマリマ、シタ」
後ろのほうでウンショ、ウンショと声が聞こえてくる。
しばらくすると、その声も消えた。
「ゴ、ゴシュジンサマ」
「終わった?」
「アノ……」
なんだかもじもじした声で話し掛ける。
夏村が振り向くと、そこにはY‐09の驚くべき姿があった。
「ぶっ?!」
夏村も吹き出すほどのその姿。
それは、夏村の小さいブラジャーを、まるで貝殻ビキニのように着た上半身と、普通のパンツをTバックのごとく履いた下半身を併せ持つY‐09だった。
「ハク、ガ、クイコンデ、ムネガ、キツイデス……」
それもそのはず。
パンツはお尻の形がまるわかりなほど食い込み、胸は深く大きな谷を作っている。
「ちょ、胸囲計らせて!」
メジャーを持ち出し、Y‐09の胸囲を計った。
「こ、この大きさは……限りなくEカップに近い、Dカップ……!」
「ゴシュジンサマ、カップ、ドレデスカ?」
唇を噛み締め、
「……A」
と答えた。
「く、屈辱!」
それと同時にきゅるる……と情けない音が夏村のお腹から聞こえてきた。
「とりあえずご飯にしよう!」
夏村とY‐09の、初めてのご飯の時間がスタートする。