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終末世界を女二人、軽キャンで  作者: 狐のボタン


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終末のニュースペーパー



ユカリの実家の商店へと戻ってきたのはお昼過ぎ。

車内から見る店の外観は記憶と差異のないものに見えるのだけど、やっぱり看板の店名だけおかしい。


「カオリ、一つ確認していい?」

「うん?どした」

「昨日の夜、ここに来たよね?」

「来たね」

「店のシャッターって開いてたっけ」

「え?」

どうだったっけ…。街灯に照らされてた店の名前が違って、降りていったユカリをあたしも追いかけて…。

店の前で佇んで看板を見上げていたユカリの姿は覚えてる。


もう一度店をよく見てみる。 ガラス張りで、宣伝のポスターやチラシとかが貼られてて…。

「…シャッター閉まってたと思う。あのポスターとか見た覚えないし。暗かったけど、見間違いじゃないかと…」

「だよね? ちょっと見に行っていい?」

「あたしも行くよ」

ユカリの実家の商店の近くに路駐して、二人で確認しに行く。

店を開けてるって事は生存者がいるのかもしれない!



間近で見上げる看板に書かれてる名前はやっぱり違う…。

建物そのものは変わらない様に見えるのに。


ユカリは店舗の引き戸に手をかけると、カラカラっと普通に開いた。

「……」

「気をつけてよユカリ」

「大丈夫。ここは私の実家だよ?」

何も言い返せず、ユカリに続いてあたしも店内へと足を踏み入れた。


お菓子などの食品類の他に、本や生活雑貨から多少の衣類や家電、農具まで並ぶ店は本当になんでも屋だなぁと。

贅沢を言わなければ必要なものは取り寄せなくてもある程度揃うんじゃないだろうか。


見慣れたお菓子の一つを手に取り、よく見てみる。

「あれ…?」

「うん?カオリどうしたの…ってそのお菓子、未だに好きだよね」

「ねぇ、よーく見て。ほら」

ユカリに手渡したのは、ナッツをチョコで包んだお菓子…、キャラクターも可愛いしサイズも値段もお手頃で小さな頃からよく買ってる商品…にそっくりなパッケージのお菓子。


「なにかおかしい?」

「メーカーの名前と商品名! あと賞味期限もおかしいの!」

あたしはいつも買うからこそ違いがわかる。


パッケージの方にはピンとこなかったらしいユカリも、賞味期限の方を見て顔色を変える。

無言のまま、店の奥にあるレジカウンターの隣にある新聞を手に取るユカリ。

カウンターにいる筈の人もいない…?普段ならユカリの兄嫁に当たる亜香里さんか、お母様が店番していたはずだけど…。


「………ここは何処なんだろうね」

誰にともなくそう呟くユカリ。

あたしにはその疑問に答えられる明確な回答がない。あたしだって知りたいくらいだもの。


「見る?」

渡された新聞を受け取ると、一面には有名なスポーツ選手の活躍が大々的に報じられているだけで、今の街の様子に関わるような見出しは無い。

このおかしな状況も地方都市だけのものだったりするのかと思い、他のページやテレビ欄を見てもこれといった情報はなく。

「その選手の名前も微妙に違うの気がついた?」

「え…」

あたしはスポーツに一切興味もないし、テレビも見ないからたとえ有名な人でも名前すら知らないから…。

ニュースでさえ気になった見出しのネットニュースをスマホで流し読みする程度だからわからないよ。


「アレもコレもみんな微妙に違うんだよ。人の名前や企業の名前なんかがね」

確かにお菓子も商品名や会社の名前がおかしかった。

「極めつけは日付だよ」

言われて新聞の上の方に書かれている日付を見ると、月と日にちは合っているのに、年だけは****年とまるで伏せ字のようになっているのはお菓子の賞味期限と同じ。

「あれ…?」

「気がついた?」

慌てて上着のポケットに入れているスマホを取り出して日付の確認。十一月七日…。新聞も日付だけはちゃんと同じ。


「で、こっち見て」

ユカリに渡されたのはまた別の新聞。

そっちの一面には今の状況を説明するような見出しが大きく一面に。

つまり、この街にゾンビのような人たちが溢れている事についてしっかりとかかれている。

原因は不明だけど、日々悪化しているという事実。

海外では去年の夏くらいから始まり、こっちでは年明けくらいから急激に都市部から増え始めて、夏になった今は地方でも…。

「夏…?」

新聞の日付を見ると七月の半ば。

「それ、うちにおいてあった古新聞だよ。いつも店の隅に纏めてるから。でね、その新聞を最後に新しいのはなくなってるのに、昨日からのは店に並んでるの」

「つまりどういうこと?」

「わからないよ。 でも、多分だけど夏の時点で新聞すら出せなくなる状況になったんだと思う」

「でも昨日からのはあるんだよね?」

「ポイントはそこだよ。私達が初めておかしな物を見たのはいつ?」

「えーっと、二日前の夕暮れ。キャンプの帰り道」

「新聞があるようになったのは昨日の朝刊からで、それ以降は夕刊もあるし、ゾンビに関する記事も一切ないの」

えっとつまりどういうこと?あたし達がこのおかしな状況に巻き込まれてから、正常に新聞が出始めたと…。微妙に違いはあるけども。


「意味わかんない…」

「しかもこれ見て」

ユカリに手渡されたのは店に並んでいたパン。四角い食パンにピーナッツクリームの挟まれた定番のもの。

だけど、これもまた微妙に知っているものとパッケージが違い、まるでパロディ商品のよう。

「製造日が昨日なんだよ」

確認すると日付は確かに昨日の日付。相変わらず年の方はおかしいけれど…。


「ここを異世界とか平行世界だと例えて、私達がこっちへ来た瞬間からこっちに変化が起きてるんだよ」

ユカリは興奮気味に説明してくれるけど、全く頭がついていかない。

異世界?平行世界?そんなのは創作の中だけのもので、現実にあるはずのないものでしょう?

でも、あたし達は今実際に意味のわからない状況にいる訳で…。


「決定的なのは、古い新聞の方だと海外の国の名前も全く違うし、この国の名前すら違う。昨日からのは微妙な違いでしかないのにね」

見比べてみると確かに、古い方には知っている国の名前どころか、企業名やなんかも一切聞き覚えのないものしかない。


「私達がこっちに迷い込んでから変化が起きてるんだろうね」

ユカリはそう言いながらさっきのパンを開封して、迷わず口に運ぶ。

「食べて大丈夫!?」

「美味しいよ?味は変わらないね。ほら、カオリも」

二枚入りのもう一枚を渡されて、少し悩んでから一口。

「甘い…知ってるピーナッツクリームの味だ…」

「だよね。カオリの好きなそのお菓子も開けて食べてみてよ」

「う、うん…」

包装のビニールを破き、くちばしを模した取り出し口を開くとまさかの金のマークが。

確認する癖がついてるせいで見つけてしまった…。


「どうしよう…」

「うん? あははっ!」

ユカリに見せたら大笑い。欲しいときには出ないのに…。なんでよりによって今なのよ。

「応募してみる?」

「どこによ…。微妙にマークも違うのに」

「だよね。せっかく当てたのに残念」

お菓子の味はよーく知っている大好きなものと変わらなかった。








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