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 逃げても逃げても追ってくる月が、うざったくて○○ニイヤンは目を閉じた。森の妖精。あれは一体なんだった?幻だったのか?でも俺は確かに酔ったのだ。家に着くなり○○ニイヤンはビニール袋いっぱいに詰め込んだ花を、テーブルの上にぶちまけた。そして、その蜜を吸いこむのだが、以前のようなアルコールは感じられない。くっそ。○○ニイヤンはラジオをつけた。野球の国際親善試合の中継を放送していた。

 そうだそうだ。あのいつかの野球少年。あの子から、野球カードを貰おう。100,000円の価値のあるあのノーマルカードを。

 翌日、○○ニイヤンは河川敷にある野球グラウンドに向かった。斜面の芝生に座って、少年たちが野球をする様子をじっと眺めていた。きらり。○○ニイヤンはいつかのあの少年を見つけた。

「おい、ヘボバッター打ってみやがれ」

 どっと笑いが起こった。

 打席に立った少年は、ひどいヤジと嘲笑にさらされていた。○○ニイヤンは固唾を飲んで様子を伺っていた。少年のバットは空を切った。三回。思い切り振ったバットは、ボールにかすりもしなかった。少年は肩を落としてベンチに戻った。○○ニイヤンは道端に落ちていたシケモクを吸い終えると、立ち上がって野球グラウンドに向かった。

「おい、坊主、こっちへこい」

 手招きをしてあの野球少年を呼んだ。

「バットはな、こうやって振るんだ」

 ○○ニイヤンは少年に新しいバッティングフォームを教えた。それは一本足打法と野茂英雄のトルネード投法を混ぜたような奇怪なフォームであった。

「恥ずかしいよ」

 と、少年は言った。

「いいから、それで振ってみな」

 ○○ニイヤンは微笑んだ。

 そして、少年の次の打順になった。先ほどと同じようなヤジが飛んだ。それに呼応して笑いが起こった。少年は意を決して、○○ニイヤンから教わった打撃フォームで構えた。

「なんだそりゃ」

 大きな笑いが起こった。

「うるせえ!クソガキども!黙ってみてろ」

 ○○ニイヤンは一喝した。

 少年は顔を赤らめながらも、放たれた球を思い切り打った。白球は、晴天に高く打ち上がった。ホームランであった。○○ニイヤンは満足げにもう一本、シケモクを吸った。

「ありがとう。おっちゃん。本当にありがとう」

「いいよ。別に」

「あの野球カード、今度あげるね」

「いい」

 ○○ニイヤンはそう言って、河川敷の斜面を上った。春の風が心地よく、それが心に循環して、あらゆる汚れを洗ってくれているような気がして、くすぐったいような、そんな気持ちで○○ニイヤンは家路へ着いた。

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