我が世の春
「じゃっかましいわ、じゃっかましいわ」
タンポポの花を蹴り飛ばす○○ニイヤン。昼下がり、暖かな陽光に日向ぼっこをしていた猫たちも驚いている。○○ニイヤンはお酒が好きだ。けれども困ったことに、それを買うお金がないのだ。○○ニイヤンはその鬱屈した心の発散の方法をお酒以外に知らない。かわいそうに。憐れみの表情を浮かべているのは、森の妖精。
「ふっざけんな、ふっざけんな」
○○ニイヤンは、そこら中の花々の頭を蹴り飛ばし、地面にはその花弁が散り、花のカーペットのようになっていた。そして仰向けになり、天空を見つめた。
「神なんているかボケっ」
天に向かって唾を吐いた○○ニイヤンであったが、その唾は○○ニイヤンの額に落ちた。○○ニイヤンは虚脱した。全部の力を大地に預けた。目を閉じた。静寂に雀の鳴き声が響いた。
「かわいそうな○○ニイヤン」
「誰ですか?」
「森の妖精です」
「森の妖精が何の用です?」
「驚きました。あなたは妖精を疑わず、まっすぐに受け入れています」
「はあ」
「あなたの望みはなんでしょう?」
「酒が飲みたい」
「わかりました。それではあの花の蜜を吸ってみなさい」
「はあ」
○○ニイヤンは立ち上がり、うすピンク色の花を千切り、その下側から蜜を吸った。○○ニイヤンは驚いた。甘い味わいと共に高濃度のアルコールが口の中いっぱいに広がった。○○ニイヤンは、それから花の蜜を吸い続けた。空はいつしかオレンジ色の夕焼けに染まった。酩酊状態の○○ニイヤンは歌を歌い始めた。
「森の妖精~♪俺は反省~♪人生、バラ色~♪オレンジ果汁の夕焼け~♪」
雀が、狸が、狐が、ミミズが、ダンゴ虫が、蝶々が、色々様々な動物たちが○○ニイヤンのもとに集まって、○○ニイヤンを囲んだ。
「我が世の春、我が世の春」
○○ニイヤンはそう言って頷いた。森の妖精はその姿を満面の笑みで見つめるのであった。




