第93話 : confess
ファミレスに到着すると、環奈はバイクを止め、神城に言った。
「じゃあね、神城くん。私は少し離れたファミレスで時間潰してるから。帰りももちろん送るけど……」
環奈は、神城の真剣な横顔を見て、優しく微笑んだ。
「もし上手くいったら、二人で一緒に帰ってきなよ」
神城は、環奈に深く頭を下げ、覚悟を胸に抱いて車椅子を降りた。
神城は、凛の仕事が終わるのを待った。7月の終わり、外はうだるような暑さだったが、彼は店員が出入りするゴミ搬入口の凹みに、ただ座り込んで時間を潰していた。
一時間ほど経ち、定時を過ぎた頃、凛が疲れた様子で出てきた。
凛は、ゴミ搬入口の陰に、座り込んでいる神城の姿を見つけ、息を飲んだ。彼女は、あまりの衝撃に、持っていたバッグと制服の荷物を手から滑り落とした。
神城は、凛の視線に気づくと、告白の決意を伝えるために、無理をして立ち上がった。足はまだ完治しておらず、彼はフラフラと揺らいだが、その眼差しは真剣そのものだった。
「あの、井出さ.....凛ちゃん」
神城は、一歩踏み出すたびに痛みが走る足に耐えながら、真っ直ぐに凛を見つめた。
「俺は……あなたの心を探していました。高校二年生のあの日に助けられてから、ずっと……」
神城は、言葉に力を込めた。
「俺は、あなたのことが好きです。どうか、俺と付き合ってください」
凛の瞳から、多幸感と切なさが混ざり合った熱い涙が溢れ出した。一度振られた痛み、翠との確執、すべてがフラッシュバックする。
「.....神城くん。記憶が、戻ったってこと?」
「はい」神城は頷いた。「本当にごめんなさい。何回も言おうとしたんすけど、言うタイミングが毎回なんだかんだなくて……やっと、"好きだ"って言えました」
言いたいことを短くも大体言い切った神城は、足が限界を迎え、そのまま座り込んだ。
凛は、急いで彼のそばに駆け寄り、涙でぐしゃぐしゃになった顔を俯かせながら、彼の肩をポンポンと優しく叩いた。
「本当に、本当に遅いよ。神城くん」
そう言ってから、凛は突然、涙声で頬を膨らませた。
「..........あと、私を忘れるなんて。酷いよ」
凛はそう怒ってみせるが、その表情は愛しさに満ちていた。
「......でもね」
凛は神城の手を握りしめた。
「もし、また、あの事故の後みたいに私のことを忘れても、何度でも、私が私の存在を伝えるから!だから、もうどこにも行かないで……」
その言葉は、最高の愛情表現であり、永遠の誓いだった。
「はい。約束します」
神城は、泣きながら微笑む凛の姿を、何よりも愛しく感じた。




