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派遣、恋に落ちる  作者: 竹子


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第78話 : uncertain

神城と翠が事故を起こした日の深夜。

麻奈と環奈、石田の三人は、凛、神城、翠の三人が搬送された病室に立っていた。

三人はそれぞれ別のベッドに横たわり、全身に包帯が巻かれ、顔にも痛々しい傷が見えた。意識を失い、静かに眠るその姿は、あまりにも衝撃的で、三人は言葉を失っていた。


医師からの説明は、あまりにも重いものだった。

神城はバイクの激突の衝撃で『心臓』を、翠は胸部への圧迫で『肺』を、そして最初に事故に遭った凛は、強い衝撃により『肝臓』を損傷しているという。いずれも重篤な状態で、「まだ正確なことはわからない」という医師の言葉は、希望とも絶望とも取れる曖昧なものだった。


石田は、三人の様子をしばらく見つめていたが、やがて淡々とした表情で、何も言わずに病室を出て帰ろうとした。

その行動に、環奈の感情が爆発した。

「ねえ、石田くんさあ。この三人見ても何も思わないわけ?」

環奈は、涙を流しながらも、怒りと悲しみを込めて石田に問いかけた。

石田は、環奈の言葉に返事をすることもなく、ただ三人の病室に飾られたお花の水を変えるという、機械的な作業をこなしていた。そして、やはり何も言わずに、病室を出て行こうとする。


環奈は、追いかけるように廊下に出た。

「待ちなよ!あんた、どういうつもりなの!?親友が倒れてるんだよ?!」

石田は、廊下の照明の下で立ち止まったが、環奈には背を向けたままだった。

「どういうつもり、とは?」石田の声は、まるで授業で質問に答えているかのように淡々としている。

「どういうつもりって!普通、声をあげて心配するでしょう!不安になるでしょう!あんたがそんな顔してるから、みんなが可哀想でしょ!」環奈は、怒りで呼吸が乱れていた。

石田は、ようやく環奈の方へゆっくりと振り返った。彼の顔には、いつもの無表情と変わらない、冷徹な現実が張り付いていた。

「声をあげるほど、心配してるっていうのは、おかしいことではないでしょうか」

石田は、感情のない目で見つめながら言った。

「現実に、彼らは意識を失っています。僕らが感情的になっても、彼らの意識が戻るわけではない。それよりも、僕らが動揺して冷静な判断ができない方が、よほど彼らにとって迷惑です。僕にできることは、静かに回復を待つことだけです」

「はぁ!?何その理屈!あんた人間なの!?」環奈は、石田の徹底した理屈に、もはや反論の言葉を見失いそうになった。

「凛はさあ、石田くんのことをずっと思い続けてたんだよ!?それに気づいてるの?なんでそんな冷静ぶってられるのよ!」環奈は、怒りで声を震わせている。

「気づいていないわけがないでしょう」

石田は、淡々とした声で、環奈の怒りを受け流すように言った。

「僕が彼女を大切に思っていた過去があるのも事実です。しかし、今は違います。僕のことは好きではないです。それに、仮に僕を好きだったとしても、今のこの状況で、その過去の感情に囚われるのは無意味だと判断します」

彼は、一礼するでもなく、ただ踵を返して、静かに病院の廊下を去っていった。


二人の、感情と理性がぶつかり合うようなやりとりは、麻奈の耳には届いていなかった。

麻奈は、快が意識不明で横たわっているという事実があまりにもショックで、二人のやり取りさえ理解できなくなっていた。

彼女は、静まり返った病室の中、神城のベッドサイドに膝から崩れ落ち、か細い声で、泣きながら呟いた。

(…………快、嘘だよね?)

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