第74話 : flashback
神城にとって、小学校時代は惨めな記憶から始まっていた。小学校三年生の頃までは活発で友達と外に遊びに行っていたが、公園でやるサッカーや野球は誰よりも下手だった。チーム分けで「とーりっぴ」をする際、彼は毎回余りになってしまい、その度に惨めな思いをした。次第にそれが嫌になり、「行けたら行く」と言って、結局遊びに行かない生活を繰り返すようになった。
そして小学校四年生になった頃、いじめっ子のボスである主犯格に目をつけられた。神城は当時気が強い方ではなかったため、いじめっ子からしたら格好の餌食であった。
いじめの内容は主にパシリだった。掃除当番ではないのに代わりにやらせたり、持ち物を理不尽に取られたりした。
当時の神城は、家で1人で野球ゲームをして、帰ってからどの選手を作るかということを常に考えていたため、いじめによる精神的ダメージは思ったより軽かった。しかし、自分がいじめられているという事実はとても惨めで、特に小学校四年生という思春期になりかかる時期で、なんとなく恥ずかしさがあった。
そんな日常の中の、ある給食の時間に切り替わる。
いじめっ子が、控えめな神城に命令するように言った。
「おい、俺の分もよそえよ」
神城が戸惑い、手を止めたその瞬間。
ある女の子が、すっと立ち上がり、いじめっ子の前に出た。
「……自分の分は、自分でやりなよ」
いじめっ子に向けた声は冷たかったが、本当に神城を揺さぶったのは、その次だった。
神城が、弱々しく笑ってごまかそうとした瞬間、その女の子はバンッと机を鳴らす勢いで一歩近づく。
「快!」
驚いて振り向いた神城に、女の子は怒りを隠さず叩きつけるように言った。
「嫌だったら、嫌だって言いなよ!!」
その声は、悔しさと心配が混ざった、泣き出しそうなほど真っ直ぐな怒りだった。神城は胸の奥が熱くなり、心が強く揺さぶられるのを感じた。




