第72話 : escape
昼食を終えた一行は、予定通り絶叫系ジェットコースターに乗るため、列に並び始めた。待ち時間は依然として長く、みんなはなんとなく共通の話題を見つけて話したり、スマートフォンでSNSを眺めたりして時間を潰していた。
しかし、その中で一人だけ、明らかに様子がおかしい人物がいた。
翠だ。
順番が近づき、金属のレールが軋む音と乗客の絶叫が近づいてくるにつれて、翠の顔は青ざめ、目線は定まらず、体は微かに震え始めていた。
その様子を横目で見ていた神城は、こっそり、翠の耳元に聞こえるほどの声で囁いた。
「.......おい、お前、こういうの乗れるのか」
翠は、普段の強気が完全に消え失せ、何も言えずに黙っている。
神城が改めて見つめると、翠は本当に微かに、首を横に振っているのに気づいた。
「....逃げるぞ」神城は、周囲に悟られないよう、さらに声を潜めて言った。
「は?何言ってんの、そんなこと…ッ」翠は一瞬抵抗したが、声が震えていた。
神城は、躊躇する翠の背中を、そっと押した。
「いいから、来い」
神城は、並んでいる他のメンバーに悟られないよう、さりげなく彼らを巻き込みながら、列を仕切る手すりをくぐり抜けて、人混みの中へと引き返した。
後ろから「どこに行くの!?」という翠の焦りの声が聞こえたため、神城は振り返り、ぼそりと、しかし翠に届くように告げた。
「....俺も絶叫系、苦手なんだよ」
その言葉を聞いた瞬間、翠の強張った表情が崩れた。
「あはは、何それ!」
翠は、心底おかしいといった様子で、久しぶりに心からの笑みを浮かべた。神城が自分と同じ「弱み」を共有してくれたことで、彼女は救われたのだ。翠は、すぐに神城のあとを追い、二人でアトラクションの最後尾まで行った。
神城と翠が列から離脱して少し経った後、先頭付近まで進んでいた凛が、ふと異変に気づいた。
彼女は、振り向いて周囲を見回したが、自分たちの後ろには誰もいなかった。
「あれ?神城くんと翠
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と、麻奈ちゃんはどこに行ったんだ?」
4期へ続きます。




