第69話 : discover
麻奈は、神城に「やっと会えたのに、また追い出すの?」と訴えた後も、その場から動かなかった。彼女の瞳は、長年の孤独と不安から、とうとう限界を迎えていた。
「快……うっ、うう……」
麻奈は、声を押し殺そうとしながらも、顔を膝に埋め、肩を震わせて泣き始めた。その嗚咽は、静かになったアパートの廊下に、痛々しいほど響いた。
神城にとって、この幼馴染の、むき出しの弱さだけは、どうすることもできなかった。
神城は、大きなため息をつき、麻奈の頭を不器用にポンと叩いた。
「……あー、わかった。わかったよ」
神城は、麻奈を立ち上がらせると、渋々ながらも部屋に招き入れた。
麻奈は、部屋に入るとすぐに涙を拭ったが、その視線は神城の勉強机の上に釘付けになった。
「......何、この写真?」
麻奈が見つけたのは、写真立てに飾られていた、神城と凛が写ったキャンプでの集合写真だった。凛の輝くような笑顔と、その隣で少し緊張した神城が写っている。
神城は、背筋が凍るような思いで、慌ててその写真立てを掴み、背中に隠した。
(やべえ、こんなものが見つかったら、何を言われるか。過去の俺を知る麻奈に、凛ちゃんの話なんて、絶対にできない)
しかし、一瞬の視線で全てを察していた麻奈は、隠された写真を見ようとはせず、神城の困惑した顔だけを見て、静かに言った。
「この人が、快の好きな人なの?」
神城は、逃げ場のない真実に追い詰められ、苦し紛れに、しかし強い覚悟を持って答えた。
「.........ああ」
「そっか!」
麻奈は、太陽のような、ウラオモテが一切ない、完璧な満面の笑みを浮かべた。
「じゃあ、私、快とその人がうまくいくように、全力で応援するね!」
その笑顔は、過去のいじめの影も、過去に何も言わずに引越してしまった寂しさも、全てを飲み込んでしまうような、無垢な強さに満ちていた。
「おお、ありがとな。心強いぜ」
神城は、動揺を隠すように、そして頼りにしているぞという気持ちを込めて、麻奈と不器用に肩を組んだ。
麻奈は、満足したように少ししてから神城の家から出て行った。
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その日の夜、麻奈は、何一つ食べずに、ただ布団にくるまって、眠れない夜を過ごした。




