第63話 : sin
神城がこれほどまでに動揺し、父親の存在を否定するのには理由があった。
神城の父親は、元犯罪者である。
過去に、傷害事件を起こして捕まり、刑務所に服役していたのだ。父親の事件が原因で、神城(快)と母親は名字を「神城」に変えるための戸籍変更を行い、父親の姓を捨てていた。
神城は、この「元犯罪者の息子」という拭い去れない過去から逃れようと必死だった。
神城の脳裏に、最も忌まわしい中学時代の記憶がフラッシュバックした。
教室の隅、ロッカーの前、常に向けられる冷たい視線と、陰湿な罵倒。
「お前みたいな『将来有望な犯罪者』の息子は、結局、ロクな人生送れないんだよー」
「山口さあ。名字なんか変えたところで、DNAまで逃げ切れるとでも思ってんの?」
かつての姓である「山口」を呼ばれ、神城は同級生に囲まれていじめられていた。
「お前、良い子ぶってんじゃねえよ」
「どうせ中身は一緒だろ?勉強もできない、喧嘩も弱い、将来は親父の跡を継ぐ『犯罪者予備軍』さんだもんな」
神城が努力する姿勢や、少しでも成績が上がると、彼らはそれを「調子に乗っている」と見なし、「犯罪者の息子」という烙印を使って、神城のすべてを否定した。
そして、その母親も、ある日を境に神城の前から姿を消した。神城は、父親の罪の過去と、母親の失踪という二重の重荷を背負いながら生きてきたのだ。




