第60話 : stakeout
入店を拒否された神城と翠は、どうすることもできず、店の前の死角となる場所で、凛たちが店から出てくるのを待つことしかできなかった。
待ち時間は、私立最高峰と有名国公立を目指す受験生である二人にとって無駄にできない。神城と翠は、無言のままスマホを取り出し、英単語の学習アプリやPDFの参考書を開いて勉強を始めた。
二人は、監視中であるにもかかわらず、お互いに一言も話さずに集中し、時折、店の入り口に視線をやる以外は、真剣に受験勉強に打ち込んでいた。
そして、午後9時を過ぎた頃、店のドアが開いた。
神城と翠は、一瞬でスマホをしまい、臨戦態勢に入った。
すると、まず出てきたのは、合コン相手の男三人だった。彼らは皆、顔面蒼白で、体調が非常に悪そうに肩を抱き合いながら出てきた。
一人目の男は、店の出口を出るなり、近くの公衆トイレへ真っ先に駆け込み、二人目の男は、そのままアスファルトに膝から崩れ落ちて倒れ、三人目の男も、壁に寄りかかって嘔吐を我慢している様子だった。
その後、女性陣である凛、環奈、陽葵が出てきた。
女性陣は皆、全員顔は真っ赤で酔っ払っている様子であったが、高笑いをしており、驚くほど元気そうであった。
彼女たちは、倒れている男たちを一瞥するだけで、近くのコンビニへ向かい、ロング缶のアルコール飲料を三本購入した。
そして、一斉にプシュッと缶を開けて乾杯し、「次どこ行く!?」「行くぞー!」と叫びながら、そのまま楽しそうに夜の街を歩き出して行った。
その光景を見た神城は、警戒していた男たちが、むしろ被害者側になっていたことに、ただただ呆然とするしかなかった。
隣にいた翠は、クールにため息をつき、静かに言った。
「......心配いらなかったみたいね」




