第58話 : plot
凛に「泊まっていきなよ」と誘われた神城は、翠に反対されながらも井出家に泊まることになった。夜が深まり、神城の心は妙にソワソワしていた。
(今なら告白できるのではないか?さっき花火も上がっていたし、花火の後は人恋しくなるって聞いたことがあるぞ!この流れでアタックすれば、イチコロなのではないか…!?)
神城は、自分の都合のいい情報と、ロマンティックな雰囲気に完全に流されていた。彼は、勇気を振り絞り、静まり返った廊下を通り、凛の部屋のドアをそっと開けた。
部屋の奥。布団の中で静かに眠る凛の姿を見つける。
神城は、震える手で凛の布団のそばに膝をついた。これまでの不憫な日々、凛との短いけれど愛おしい思い出が、走馬灯のように振り返る。
(もう、誤解されるのは嫌だ。今こそ、本物の愛を伝える時だ!)
神城は、喉が張り裂けそうなほどの大声で叫んだ。
「凛ちゃん!俺と付き合ってください!」
その瞬間、布団の中から、全く予想していなかった人物が顔を出した。
「あんた。確認っていう言葉の意味はわかる?」
そこにいたのは、神城が告白した相手である凛ではなく、翠だった。
翠は、呆れ果て、まるでダメな生徒を叱る教師のように言った。
「…お姉ちゃんは、隣の部屋で寝てるわ.....」
神城の告白は、またしても誤爆。しかも、最愛の凛ではなく、最も恐れる翠への再度の誤爆という、致命的なミスだった。
神城の顔は、羞恥と絶望で真っ白になり、彼は心から反省した。
「す、すまん…」
神城は、先ほど聞いた最悪のニュースを翠に打ち明けた。
「翠…!実は、凛ちゃんが合コンに行くらしい…!陽葵さんの応援という名目で…」
神城は、恋敵になるかもしれない他の男と凛が会う現実に耐えられず、泣きそうな顔で訴えた。
翠は、一瞬驚き、すぐに冷静な分析を始めた。
「合コンですって!?…お姉ちゃんはああ言ってるけど、酔っ払い二人のガード役が必要なのは目に見えてるわね」
翠は、腕を組み、毅然とした態度で言い放った。
「わかったわ。私もついていく」
「えっ!?」
神城が驚いていると、隣の部屋から目が覚めた凛が顔を出した。
「えー、みんな起きてたの?」
そして、2人を見て笑った。
「ふふ、神城くんと翠は仲良いね、やっぱり」
神城が凛の合コンへの嫉妬を露わにし、翠がそれを阻止しようと誓い合ったという、最も複雑で協力的な共犯関係が結成されたにも関わらず。
翠と神城は、「仲良し」という言葉の響きに、何とも言えない顔で、お互いを見つめ合っていた。




