第54話 : refresh
今日は高校の健康診断の日だった。翠は、友人である翔子と真紀と一緒に体育館へ向かう途中、小さな声で打ち明けた。
「私、昨日から何も食べてないの。体重を少しでも軽くしたいから。体重は軽いに越したことがないのよ」
翠はそう息巻いたが、翔子と真紀は顔を見合わせて、一気に心配そうな表情になった。
「え、翠!?大丈夫なの?いくらなんでもやりすぎだよ!」真紀が慌てて言った。
「そうだよ、翠。そんなことして倒れたらどうするの…」翔子も不安げに眉をひそめた。
翠は「大丈夫よ」と笑ったが、空腹と栄養不足は確実に彼女の体に影響を及ぼし始めていた。
健康診断に向かう途中、体育館への連絡通路を歩いていた時、翠の視界が急にチカチカと点滅した。
「あれ…?」
ふらりとよろめいた翠は、そのまま支えを失い、ガクッと膝から崩れ落ちた。
その光景を、たまたま背後を歩いていた神城が目撃した。彼は、翠が倒れた瞬間、反射的に駆け寄った。
「翠!?おい、翠!」
神城は、翠を放っておくことはできなかった。彼は、迷うことなく翠を抱きかかえ、お姫様抱っこの姿勢で保健室へと急いだ。
「くそっ、この女、倒れても厄介なのかよ!」
神城は必死に走った。
その衝撃的な光景を、翠の友人である翔子と真紀が目撃した。
「え、うそ…!神城くんが、翠をお姫様抱っこしてる!?」翔子は口を覆った。
真紀も頬を真っ赤に染めて、その場から動けなかった。
保健室にたどり着いた神城は、翠をベッドに寝かせ、そのまま何も言わずにその場を離れた。
しばらくして、ベッドで意識を取り戻した翠は、朦朧とした意識の中でぼそりとつぶやいた。
「ん…誰かに運ばれたような…。.....神城?」
しかし、翠ははっきりと思い出すことができず、保健室の先生から「誰か男子が運んでくれたわよ」と聞かされるだけだった。
妹が倒れたという連絡を受けた凛が、心配して学校に駆けつけていた。
「翠!大丈夫!?」
凛が翠を車に乗せ、神城が健康診断を終えて出てきたとき、凛は神城に気づいた。
「あ、神城くん!よかったら、家まで送っていくよ!」
「あ、ありがとうございます!ぜひ乗せてほしいっす!」
そして、凛は微笑み、さらに神城を喜ばせる言葉を口にした。
「じゃあ、このままうちに来てよ。最近ちゃんとお話できてなかったから!」
神城の顔は、歓喜に満ちた。翠の件で踏みにじられた恋路と名誉が、凛の誘いによって再び輝き始めたように感じられた。




