第51話 : plan
神城が不良グループに入ってから数日後、アジトの廃倉庫に集まった百人以上のメンバーを前に、リーダーの怒号が響き渡る。
「おい、てめえら聞け!今日は絶対に許せねぇターゲットがいる!何がなんでも、こいつを連れてこい!」
リーダーが、神城の目の前に写真パネルを突きつけた。そこに写っていたのは、紛れもない、井出翠の顔だった。
「…っ」
リーダーが、神城の表情の微妙な変化に気づき、下卑た笑みを浮かべる。
「なんだ神城。こいつの知り合いか。っていうかおんなじ高校じゃなかったか?こいつと」
神城は冷淡な声で問い返した。
「連れてきて何するんすか?」
「チッ。こいつはな、俺が街でバイクを乗り回して、思いっきり叫んでいた時に、わざわざ横槍を入れてきやがった。『うるさいですよ』だとよ!許せねぇんだよ、あの生意気な女」
神城の脳裏に、正論を叩きつけてきた翠の姿が鮮明に浮かび上がる。しかし、神城は深く考えることをしなかった。彼は今、不良の幹部という役割を全うしていたのだ。
「わかりました」
神城は答えた。その声には、一切の感情がなかった。まるで、魂を失った人形のように。
リーダーは、翠の居場所がすでに特定されていることを伝えた。例のファミレスのバイト先だ。
「あいつのバイト終わりを狙う。だが、女一人に百人も割くわけねぇ。今日は俺と神城、あと三人の、合計五人で仕留める」
神城は、サングラスとマスクで顔を完全に隠し、実行部隊のリーダー格として作戦に参加することになった。彼はファミレスの裏口から離れた場所で、獲物を狙うように静かに立っていた。
深夜、ファミレスの裏口のドアが、重い音を立てて開いた。そこにいたのは、いつも通りの制服姿で、バッグを肩にかけた翠だった。
リーダーが合図を出す。
「行け!神城、テメェは一番後ろから逃げ道を塞げ!」
神城は、感情を殺したまま、言われた通りに翠の背後の逃げ道を塞ぐ位置へと移動した。
神城以外の四人が、一斉に翠に駆け寄る。翠は驚愕し、すぐに屈強な男たちに囲まれ、身動きが取れなくなった。翠の悲鳴が、静寂の夜の街に切り裂くように響く。
「な、何よ!離しなさい!警察を呼ぶわよ!」
リーダーが翠の腕を乱暴に掴み、神城の方を振り返った。
「神城!テメェも来い!あとは力ずくで連れてくだけだ!」




