第4話:livid
高一からこの店で働いている神城 快は、ガタイがよく、バイクで通う典型的なヤンキー高校生だ。しかし、その態度の割に頭は悪く、凛への好意がいつも空回りする。
二日酔いの看病から復帰した凛は、まだどこか元気がない。そんな凛が事務所から出た直後、神城は事務所に入ろうとした。すると、中から石田が出てきた。神城は、凛の顔色が悪いのはを石田が何かしたからではないかと疑念を抱いた。
「おい、てめぇ!」
神城は反射的に石田の胸ぐらを掴んだ。
「凛ちゃ、…井出さんに何をした!!」
彼の頭の中は、凛への心配と、石田への怒りで完全にパニックだ。
胸ぐらを掴まれた石田の表情は、それでも一切変わらない。彼は一瞬だけ神城の目を見つめた。
そして次の瞬間、神城の手を内側から払い、そのまま体重を利用して、体格の良い神城を投げ倒した。
ドン、と鈍い音がフロアに響く。
神城は突然の反撃に、息を飲む。石田は、無表情のまま、冷たい視線で神城を見下ろした。
「看病していただけです」
石田は淡々と言った。
「業務に支障が出るので、やめてください。二度目はありません」
神城は、その予想外の身体能力と、感情の一切ない冷たい眼差しに、初めて恐怖を感じた。そして同時に、あの完璧な大学生アルバイトへの対抗心が、激しく燃え上がった。




