表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
派遣、恋に落ちる  作者: 竹子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/88

第34話 : chaos

夜の繁華街。凛と、友人である環奈は、一次会を終え、ほろ酔い気分で二次会の店を探していた。

その時、二人は偶然にも近くのコンビニの前で、神城と石田を発見した。神城はバイクを停めて缶コーヒーを、石田は自転車を脇に立てかけ飲み物を買っていたようだ。

環奈は閃いたように叫んだ。「あ、いいの見つけた!」

環奈は、神城と石田をそれぞれ片腕ずつ掴み、有無を言わさぬ勢いで二次会の居酒屋へ無理やり連行した。石田は無表情で、神城は最愛の凛の誘い[※環奈が無理やり連行しただけ]とあって、満更でもない顔で連行されていった。


二次会の居酒屋。石田はビールを注文したが、表情も態度も全く変わらず、あんまり喋らない。

環奈「ねー石田くん、何か話してよ!人間関係での愚痴とか!あるでしょ、ほら!」

石田「……特に、ありません」

環奈「つまんなーい!」

一方、神城は未成年のためウーロン茶だが、完全に場の雰囲気に飲まれて「場酔い」していた。

神城「アハハ!環奈さん、それは違いますって! 愚痴っつーのは、こう、感情を爆発させるのが大事なんすよ!ウオオオッ!」

環奈は、神城のこのハイテンションが気に入ったようだ。

環奈「そうよ!神城くん、最高!そうだ、ゲームやろうよ!恋バナ暴露ゲーム!」

神城は顔を赤くし、グラスのウーロン茶を勢いよく飲んだ。

神城「コ、コイバナ!いいっすね!盛り上がっていきましょう!」

環奈「神城くんから!本命いるんでしょ!? ヒントだけでもいいから!」

神城「ええっと、俺の好きな人は、こう、すげー優しくて、笑顔が天使みたいで、ちょっとドジなところがあって、しかも美人で、隣にいると心臓が破裂しそうになるっす!」

環奈は盛り上がるが、当の凛は「ドジで天使なところ…誰のことだろう?」と全く誰のことだか結びついていなかった。

石田は、そんな神城の熱弁を、無表情で枝豆を食べながら聞いていた。

環奈「えー!もっと知りたい!凛は!?凛の本命は!?」

凛は顔を赤くし、「ええー!恥ずかしいよ!」とごまかす。

この後も、神城は環奈と熱いトークを繰り広げ、石田はそれを無言で飲み食いしながら見守るという構図が続いた。


楽しい時間は過ぎ、お開きに。石田は店を出るなり、自分の自転車のハンドルを握った。

凛「あ、石田くん。気をつけてね」

石田は、クールな無表情のまま、自分の自転車に跨ることなく、そのまま自転車を傍らに引きずり、歩いて帰っていった。


神城は、凛を家まで送った後、環奈の家まで送っていくことにした。しかし、ここからが地獄の介抱だった。

環奈は、道中にあるコンビニを見つけるたびに缶チューハイを買い足して飲み始め、数メートル歩いては派手に転倒したり、植え込みに突っ込んだりして、神城を大いに困らせた。

神城「うおっ!環奈さん、もう缶チューハイ飲むのやめてくださいよ!早く家に着きましょう!」

環奈「やーだよー。だって楽しいんだもーん」

神城は、凛がお酒を飲みすぎるのは、間違いなくこの人の影響があると悟った。

そのあとも環奈は、道端で大声で歌ったり、電柱を恋人と間違えて抱きしめたり、果ては通りすがりの知らない人に絡みに行ったりして、神城を大いに困らせた。

なんとか環奈を無事に自宅まで送り届けた神城は、疲れ果てて、ふらふらと自分の家路についた。


神城は翌朝、バイクに乗ってバイトに行こうとした。

しかし、あるはずの場所に、愛用のバイクがない。

神城「え?俺のバイク…?どこ行った!?」

神城は、昨晩、凛たちに連行される直前にバイクを停めた、あのコンビニ前を思い出した。

神城「そうだ!コンビニにバイクを停めたまま、飲み会に連れて行かれたんだった!」

神城は急いでコンビニへ電話をかけると、コンビニの店員から絶望的な一言を告げられた。

店員「ああ、例のバイクのお兄さん?一晩中無断駐車されてたから、朝一でレッカー移動されましたよ。はい、業者から連絡があると思います」

神城は、泥酔した環奈を命がけで介抱した(恋に関係ない)充実感と引き換えに、愛用のバイクを失い、後日、2万円のレッカー代を支払うことになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ