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派遣、恋に落ちる  作者: 竹子


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29/96

第29話 : gratitude

その日のバイト中、神城はそわそわしていた。留年を回避し、心置きなく凛にアタックできるようになった彼は、まさに気分は最高潮だった。

そんな神城に、凛が近づいてきた。

凛「神城くんって、頭いいんだね」

神城は、洗い物をしていた手を止め、驚いたように凛を見た。

神城「え、そ、そんなことないっすよ」

(やべぇ、なんでバレたんだ!?でも、否定しなきゃダメだ。謙虚さも大事!)

凛は目を細め、可愛らしく微笑んだ。

凛「だって、妹から聞いたよ?神城くん、学年で4位だってね」

神城は心臓が飛び跳ねた。翠が、凛に、俺が頭がいいと伝えた!?

神城の脳内では、一瞬で最高に都合のいい妄想が展開された。


神城妄想中

翠「お姉ちゃん、知ってる?あのヤンキー、実は天才なのよ。見てこれ、学年4位よ!」

凛「えー!神城くん、すごーい。強いだけじゃなくて頭もいいなんて、ギャップ萌えよ!私、神城くんのこと、好きよ!」

神城は凛に抱きしめられる。

(終)


神城は、完全に顔を赤くし、「翠は俺の味方だったんだ!」と感動に打ち震えた。

神城はいても立ってもいられず、休憩室でジュースを飲んでいた翠に、感謝を伝えに行った。

神城「翠!お、お前、凛ちゃんに俺が頭良いって言ってくれたんだな! ありがとな!お前は最高の妹…」

神城の肩を掴もうとする手を、翠はすっと避けた。そして、氷のように冷たい視線を向けた。

翠「は?何言ってんのよ、ヤンキー。私、そんなこと言った覚えはないけど」

神城「え?」

翠「順位表?ああ、あれならカバンから無造作に出して、テーブルに置いてただけよ。お姉ちゃんが勝手に見たんでしょ。私、わざわざヤンキーの順位なんかPRしないわよ」

神城「……………」

翠は、神城の勘違いを全く理解できないという表情だ。

翠「ああ、でも、たまたま4位になった程度のバカという事実は伝えておいたわ」

翠は、神城の弁慶の泣き所に、容赦なく蹴りを一発お見舞いした。

翠「感情の起伏がうるさいわね。さっさと消えて、バカ」

神城は「ぐぇっ」という情けない声を上げ、うずくまった。


神城が痛みに耐えながら、事務所の入り口から戻ってきた時、凛が笑顔で彼に駆け寄ってきた。

凛「あ、神城くん!来週の体育祭、私、お休みもらって見に行くからね!」

神城は痛みで顔を歪ませながら、凛を見上げた。

凛「神城くん、キックボクシングやってるんでしょ? 足速いだろうから、リレーとか期待してるよー!」

神城の胸の中で、何かが爆発した。

(凛ちゃんが俺の体育祭を見に来るだと!? しかも、俺の『強さ』に期待してる…!)

神城は、弁慶の泣き所の痛みも忘れ、全身に熱い血が駆け巡るのを感じた。

神城「う、うっす! 井出さん!俺、絶対に全種目優勝して、一番目立ってみせますから!」

神城は、その場で拳を握りしめ、顔を紅潮させた。彼の熱血バカな恋の炎は、凛の期待という最高の燃料を得て、再び爆発的に燃え上がるのだった。

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