第二十九話 信長の苛烈
鐘が一つ、間をおいて、一つ、一つ、一つ。陸の印が、坂本の朝を立ち上がらせた。続けて、舟の鐘が二つ、そして四つ。冬に固く癖づいた耳の覚えは、六月の湿りをまだ上手に受け止められない。湖の面はすでに夏の匂いを溶かし始め、岸の葦がかすかに擦れた。坂本の町は、麦の刈り口の色がところどころに見える。田の縁で子が裸足を冷やし、井戸端では継ぎ外套のかわりに薄絹の袖が風に持ち上がる。息の札はそのまま、ただ目の高さを半尺上げた。夏の目は、冬より高いところを見たがるからだ。
「殿」
利三が、廊の端で足を止める承知の形で現れた。「安土より急の召し。六月の評議、諸侯を広間に集めるとのこと。四国のこと、直ちに」
四国。長宗我部。——冬から春へ移るあいだ、細い紙の上で何度も書いては消してきた字が、今朝は骨の裏から浮かび上がるようにして読めた。冬の策は春で別形になり、春の策は夏で骨を失う。季節に理はない。理を置くのは人だ。
「支度」
「は」
弥七が鳴らない鈴を掌に包み、稲冨が板と筆を抱え、市松が帳面の『息』の行に小さな点を足す。お初は汗拭いを畳んで腰に、源九郎は夏の釘袋の口を固く結わえ直し、若旦那は『少し』の絵の札を日陰へ移し、定吉は走る。了俊は寺の鐘の紐の高さを、夏でも子の目の高さに合わせて確かめた。子はここにいない。いない者のために合わせることに、季節の差はない。
佩刀を帯び、懐に文を納める。『殿の理は必ず春を呼ぶ』。煕子の字は季節に左右されない。紙の冷たさは、六月でも変わらない。変わらないものを指で確かめると、変わるものへ歩いていける。
湖を渡ると、安土の白が夏の光を返していた。白は、冬よりもなお冷たく見える。光に晒されるほど、冷たさは際立つ。舞台の朱は色そのものの気を濃くし、階の石は熱を持ちはじめている。熱は人の舌を短くする。短い舌は、刃のように働く。
広間。南蛮の器の金、漆の黒、薄金の布、彩色の天井。視線の行先が用意されている場所。そこに、諸侯の影がそろった。柴田勝家は寡黙に鼻を鳴らし、滝川一益は扇の骨で膝を控えめに打ち、丹羽長秀は静かに札のように視線を固定する。羽柴秀吉は、扇の縁で陽を転がすように軽く笑っていた。笑いが重さを隠し、重さが笑いを裏打ちしている。雑の強さ、軽さの深さ。広間にもっとも似合う身のこなし。
その上段に、信長。目は夏の刃を思わせる。唇は薄い。笑ってはいないのに、笑いは空気のほうにある。座の上手に控える玄檀は、舌を湿らせ、口の中で「大逆」の二字を転がす癖は相変わらずだった。
「四国」
信長の声は短い。短い音はよく通る。「征す。遅れてはならぬ」
卓の上の地図に、海が広く描かれている。波は絵にしかない。絵の海ほど、人を速くさせる。船の数、浜の深浅、風の向き。木札がいくつも置かれて、風も潮も図の中では従順だ。従順なものほど、危うい。
「坂本」
呼び捨て。膝を進め、扇を伏せる。視線は地図の外へ出ない。外へ出ない視線は、外の風の匂いを忘れる。
「策」
「は」
板の上に小さく置くように、光秀は言った。「四国は山深く、海は浅くも深くもございます。長宗我部は地を読む。兵の腹に届く路が刻まれておらぬ今は、評議二度。ひとたび船を出す前に、海に『札』を置くべく、阿波の浦々へ金と人の順を先に。——冬借に似せた夏の借り、『波借』を。秋の塩と鯖を担保に、今は舟板を貸す。兵の口は粥でよいが、船の口は油でございます。油一樽、先に」
「待て」
信長が、盃の縁を爪で軽く叩いた。乾いた音が、広間の天井へ薄く登っていく。「坂本。お主の言は、いつも長い。長い言は、短い刃に負ける。——わしは短い刃で十分だ。押す。押せば、折れる。折れれば、拾う」
「海は、折れませぬ」
思わず出た。出た言の刃を、自分で受けるのは、今夜になるだろう。受ける場所を、胸の内で探す。
「海は、笑う」
信長の目が薄く細くなる。「笑う海は、好きだ。泣く山より、好きだ」
羽柴が、扇をひと折り鳴らした。「殿の仰せ、まことに。波が笑ううちに、舟を出すのがよろしゅうございます」
滝川が扇の骨で膝を二つ軽く打った。勝家は粗い声で「押す」とだけ言った。丹羽は札のように静かにいたが、視線だけが海から山へ、山から海へ均等に往復する。
「坂本」
信長が、盃を卓へ置いた。底が鳴る。鳴りは、坂本で盃を置いたときの高さと同じ。音の記憶が、胸の骨で応える。
「臆病者」
声は穏やかだった。穏やかな刃ほど、よく刺さる。広間に薄い波が立つ。波は笑いの形をしている。笑いは声ではない。肩の上下、目尻の皺、唇の端。押さえるほど、形が出る。
拳が、見えないところで震えた。震えは、撓みの前触れであるはずだ。折れぬための撓み。けれど、今は、折れぬために震えているのか、折れる前に震えているのか、境が曖昧だ。頸の後ろの筋が、一本だけ強く張る。張るのは、生きている証し。生きていることが、今は刃のように痛い。
「坂本」
もう一度、呼び捨て。「お主は、役に立たぬ」
短く吐き捨てる音。前に聞いた音と同じ高さ。同じ色。同じ重さ。——同じは、積もる。積もったものは、軽くならない。
「下がれ」
「は」
頭を垂れ、膝を退く。視線の周縁に、羽柴の扇の縁が光り、勝家の肩の厚みが黒く立つ。滝川の骨の音は控えめで、丹羽の静けさは軽く頷く程度。玄檀は、舌の先で言葉をためし、結局、何も言わない。何も言わないことが、最も多くを言っていることもある。
広間を出る廊の柱は、夏の光で白く眩しかった。眩しさは、目を細めさせる。目を細めると、遠くの形がよく見えるときがある。遠く——坂本、湖、舟、鐘。坂本の札。冬から春へと増やしてきた黒い線。『灯』『沈黙』『家の札』『撓め』『目の高さ/手の高さ/耳の高さ』。板の下の釘。太鼓の二の禁。鐘は一と三、舟は二と四。——遠くの形は、今も変わらずそこにある。あるから、まだ戻れる。
控えの間で利三が待っていた。承知の形に組まれた顔で、問いは置かない。問いのない沈黙が、今は礼だ。
「坂本へ戻る」
「は」
「『波借』の案を、紙にしてしまう。捨てられるために、書く」
利三は目を伏せて「承知」と言った。紙にして捨てられた案ほど、あとで人の記憶に長く残る。残るものは、いつか形を変えて戻るかもしれない。戻らぬかもしれない。どちらでも、書く。書くこと自体が、理の側にある。
門を出るとき、羽柴が背から軽い声で呼んだ。「坂本殿」
振り向くと、扇の陰に笑いがあった。「海は笑いますぞ」
「山は泣く」
「泣く山には、酒が要る」
「酒は医に回せ」
「坂本殿らしい」
羽柴は、笑った。やさしい笑いの裏に、測り石のような固い目が一瞬だけ走った。目の刃は、光よりも早い。刃の影は、夏の石畳に短く落ちた。
馬に乗ると、坂本への帰路は、いつもより長く感じた。汗が首筋にまとわり、夏の空は厚い。雲の切れ間から照る光は、刃のように細い線を地面に落とす。地面の線を馬の蹄がまたいで進む。進むたびに、背の中で先ほどの言の重さが少し位置を変える。重さは落ちない。落ちない代わりに、形を変える。形を変えるものは、いつか名前を欲しがる。
夕刻。坂本の屋根が見えてくる。湖の面に陽が広く滑り、舟の鐘が二つ、やがて四つ。陸の鐘が一つ、一つ、一つ。耳の印は、足の順になる。順どおりに、門をくぐる。
弥七が鳴らない鈴を掌に包み、深く頭を下げた。「殿」
「戻った」
利三が板と筆を持って現れ、稲冨が声箱の紙を差し入れる。市松は帳面の『息』の行に点を足し、お初は薄い湯を用意し、源九郎は釘袋を打ち鳴らし、若旦那は『少し』の絵の札を涼しい柱へ移し、定吉は走り、了俊は鐘の紐の高さをまた子の目の高さに合わせる。子はここにいない。いない者のために合わせることに、怒りの温度は影響しない。影響してはならない。
「殿」
利三が、静かに言った。「広間は」
「短い刃」
「承知」
「『波借』を書け。おまえの筆で。墨は薄く。——捨てられても、残る字で」
「は」
板の前に立ち、『兵糧』『避寒』『治療』の大札を見上げる。季節は違えど、人の体は変わらない。夏の『避暑』は冬の『避寒』と字の位置を入れ替えただけのようで、火に寄る動作は同じ。「灯」の札は半尺上げていたが、今夜、また半尺下げた。目が疲れているとき、低いほうが読みやすい。
「殿」
お初が、薄い湯を差し出した。碗は金継ぎ。煕子の線が灯に薄く返る。返りは刃ではない。器の返りだ。指で継ぎ目をなぞる。金は季節に左右されない。冷たさが指から胸へ移る。移った冷たさが、昼の刃の熱を静める。
「城下の声、『坂本の札、海へも掲げたい』と」
稲冨の声に、市松がうなずく。「『波借』の字、子にも読めます」
「読めぬ字は、置くな」
「承知」
弥七が鈴を内で鳴らした。「殿、今夜も太鼓の二は禁ず——でよろしゅうござるか」
「禁ず」
権六が見張りの櫓で顎を引き、「西の空、赤」と短く告げた。夏の赤は、冬より湿りがある。湿りのある赤は、煙の匂いを連れてくる。煙のない火の匂い。——いや、匂いのない火の影。
夕餉のあと、光秀は一人で庭に出た。竹の節は、夏でも鳴る。鳴りは冬よりも早い。早い鳴りに、焦れた心が乗りやすい。乗りやすいときは、鈴を内で鳴らす。弥七に頼まず、自分の骨で鳴らす。骨の中で鳴る音は、誰にも聞こえない。聞こえない音ほど、真っ直ぐだ。
ふと、空を見上げた。夕焼けの赤が、手の届かぬところで広く燃えている。燃える光は、湖の面で砕け、砕けた光が水の細い皺に沿って揺れる。揺れは頬で見る。頬の皮膚の温度が、夏の光を覚えている。覚えた温度が、昼の言を溶かすことはない。溶かさない代わりに、別の形を与える。別の形——名前を欲しがる。
胸の奥で、言葉がいちど、まだ声にもならぬほど小さく芽をのぞかせた。名を持てば刃になる。名を持つ前の形は、芽だ。芽は、土の下で立つ。立ったことは、土の上から見えない。見えないままでよい。見えないうちは、折られない。
——本能寺。
舌の裏で、まだ湿ったその音が、ほんの刹那、骨に触れた。触れては離れた。離れたという事実だけが、指の冷たさと同じ強さで残る。残るもののほうが、怖い。
「殿」
背後で、利三が低く呼んだ。呼び方で、彼が見てはならぬものを見ていないのがわかる。見ないための敬いだ。
「『波借』、文字を薄く置きました。浦ごとに『舟/板/油/塩』の四列を。『返せぬぶんは秋の労へ』の文言は、札の端に」
「よい」
「『灯』の札、半尺下げました。『沈黙』はそのまま。『撓め』は柱の目の高さ」
「撓めを上げよ。——今夜は、目よりも高く」
利三は、短く「承知」と言った。高く掲げられた札は、遠くからも見える。遠くから見えるということは、見られたくない者にも見えるということだ。見られる場所に置くものと、見られぬ場所に置くもの。その仕分けで夜が明ける。
「殿」
お初が、そっと近づいて低く囁いた。「お嬢さま、今夜はよく眠っておられます」
「よい」
忠興の正しさと、家の灯と、娘の息。どれもここにある。あるものの数を数えられるのは、理の側の安心だ。数えられる限り、まだ負けていない。
夜、文机に向かう。墨は湿りを帯び、紙は夏の柔らかさを持つ。柔らかい紙は、刃の跡を広く吸ってしまう。吸わせ過ぎぬよう、筆を細く持つ。
——煕子へ。六月の安土は夏の刃でした。『四国を征す。遅れるな』。わたしは慎重の策を言いました。海に札を。波に借りを。油一樽。舟板。鐘は二と四。夜は打たず。太鼓の二、禁ず。殿は短く、『臆病者』と。笑いは声より前に肩へ出て、わたしの拳は見えないところで震えました。震えは撓み、撓みは折れを遠ざけるはずです。——坂本へ戻り、『波借』を書きました。捨てられても、残る字で。灯を半尺下げ、『撓め』を上げました。お初の湯は薄く、碗の金の線は季節に左右されず、利三の承知はいつもの形です。娘は眠っています。夜の庭で夕焼けの赤を見ました。赤は炎に似て、わたしの胸のどこかで、まだ言葉になりきらぬ音が一つ、芽のかたちをしました。音に名を与えるには早い。けれど、名のほうから寄ってくることもあります。寄るものを、板で受け止め、鈴を内で鳴らし、鐘の紐を握り、太鼓を打たずに、朝を迎えます。
筆を置いたあと、懐の文を指で確かめる。『殿の理は必ず春を呼ぶ』。六月の湿りでも、紙の冷たさは変わらない。変わらない線が、胸の火の輪郭をまた教える。輪郭があれば、火は暴れない。暴れない火は、長持ちする。長持ちする火は、冬に効く。今は夏だ。夏に冬のことを考えるのは、臆病か。臆病でよい。臆病が、息を守る。
襖の外で、了俊が静かに言った。「鐘は今夜、打ちませぬ。明朝、一つ、また一つ、一つ。舟は二と四。——紐は握っておきます」
「握れ」
「『家の札』は、そのまま」
「そのまま」
了俊の足音が遠ざかる。遠ざかっていく音と入れ替わりに、外で葦が擦れ、微かな水音がする。水音は、火の音をやわらげる。やわらげるだけ。なくしはしない。
寝所に向かう途中、金継ぎの茶碗を一瞬だけ手に取った。指で継ぎ目をなぞる。金の線は冷たい。冷たさの中に、薄い温度が隠れている。隠れている温度を、今夜は掬わない。掬わないことで、朝の湯が熱くなる。熱い湯が、夏の刃を遅らせる。遅れは罪だと言う声を、今は胸の内でひとつずつ札にして壁に貼る。『遅れは順』『順は息』『息は灯』『灯は目の高さ』『目の高さは半尺動く』。——それだけで、夜は短くなる。
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明け方。鐘が一つ、間をおいて一つ、一つ。一度止まり、舟の鐘が二つ、そして四つ。坂本の朝は、夏の湿りを吸いながら起き上がる。お初が火床を起こし、稲冨が板の角を押さえ、市松が帳面の『息』をひとつ増やし、弥七が鈴を内で鳴らし、権六が顎を引き、源九郎が釘袋を打ち鳴らし、若旦那が『少し』の絵を掲げ、定吉が走り、了俊が鐘の紐の高さを子の目に合わせる。子はここにいない。いない者のために合わせることに、朝も夜も、季節も広間も関係がない。
利三が『波借』の札の初稿を持ってきた。白い板に黒い細字。「浦へ貸す板と油」「秋に返す塩と鯖」「返せぬぶんは浜の労へ」。端には小さく、『笑いは風』『風は板の下』。笑いは海の上を渡る。渡るものの下に板が要る。——板は、誰も見ない。
「殿」
利三が、珍しく言葉を選ばずに言った。「昨日の広間。——わたしがそこに在れば、扇を鳴らしたでしょう」
「鳴らすのは羽柴の役だ」
「は」
「わたしたちは、鳴らない太鼓の皮を張る」
利三が短く笑った。笑いは音を持たない。持たない笑いは、長持ちする。長持ちする笑いは、冬に効く。今は夏だ。夏は、冬の準備を嫌う。嫌うものに、札は効く。嫌うから読む。読むから覚える。覚えるから、冬に呼吸が続く。
昼前、安土から使が来た。封は薄く、墨は濃い。短い字。「舟、出す」。篠のような筆致。篠は風に強い。紙の強さではない。書く手の強さだ。——遅れるな、という声は書かれなくても読み取れる。読む者が読む。
光秀は、盃の底を指先で軽く鳴らし、音の高さを胸の骨で確かめた。腹の底で、昨夜芽吹いた言葉の湿りが、まだ消えていない。消えないうちは、名にしない。名にした瞬間、それは刃になる。刃の名を持つものは、いつか抜かれる。抜かれるのが今でないうちは、札を立て、灯を半尺下げ、太鼓の二を禁じ、鐘の紐を握って朝をつづける。
「行こう」
利三が「は」と応え、稲冨が板と筆を抱え、弥七が鈴を内で鳴らし、権六が顎を引き、市松が帳面を抱え直した。お初は腹帯の結びを確かめ、源九郎は釘袋を打ち鳴らし、若旦那は『少し』の絵を涼しい所へ移し、定吉が走る。了俊は寺の鐘の紐を握り、子の目の高さをもう一度確かめる。
六月の坂本は、湿った風のなかで、それでも順に従って動く。順の一つひとつが、昨夜の広間に向けた返事でもある。返事は声ではない。札と灯と、釘の音のしない板の上で、静かに続いていく。続いているものほど、折れにくい。折れにくいものほど、いつか折れる。折れぬための撓みを、今は覚える。撓みの角度を、今は半尺ずつ上げたり下げたりして、指で確かめる。
夕刻。湖の面が赤を抱く。舟の鐘が二つ、そして四つ。陸の鐘が一つ、一つ、一つ。空の赤は、炎に似て、炎でない。似ているだけのものほど、人を惑わす。惑わされないために、名を胸の奥で黙らせる。黙らせたまま、指で継ぎ目をなぞる。金の線は冷たく、冷たさの中に薄い温度が隠れている。隠れている温度を掬うのは、まだ早い。早いものは、折れる。
——本能寺。
音は、舌の裏で凍るだけにしておく。凍らせたまま、坂本の札の前に立つ。『波借』『灯』『沈黙』『撓め』『家の札』。黒い線が、夏の湿りに負けずに立っている。立っているものがあるうちは、まだ負けていない。負けていないうちは、札を半尺動かす余地がある。余地は、息だ。息があるかぎり、理は折れない。折れないように、撓む。撓むように、鈴を内で鳴らす。鳴らない音が、胸の骨で鳴る。骨で鳴った音が、明日の鐘の高さを決める。鐘は一つ、間をおいて一つ、一つ。舟は二つ、そして四つ。耳の覚えが、足の順へ、胸の順へ、家の順へ、そして——まだ名のない芽の順へと、静かにつながっていく。




