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第一章四話 尾賀、学習する。

学園戦争が始まっても尾賀達の周りは相変わらずのほほんと平和です。

これも尾賀が強すぎてしまったからか!

果たして尾賀を脅かす存在は現れるのか……!

 サイレンが鳴り響いた。

 脳を揺さぶるような鋭い音が、黒龍学園の空を切り裂く。

 瞬間、校内の空気が一変した。

 息を呑む者、叫び声を上げる者、走り出す者──。

 廊下を埋め尽くす生徒たちの目には、日常の名残は一切ない。

 これは行事じゃない、戦争だ。


「すげー声だな。」


 そんな中、拍子抜けな程尾賀はのんびりと過ごしていた。

 部員達も流石にそわそわし始める。


「落ち着けって、誰か来ても俺がぶっ飛ばしてやっから。」


 ガハガハ笑う尾賀を遮るように、勢いよく扉が開く。


「果し状を叩きつけにきたぞ、尾賀!いざ尋常に勝負しろ!」


 そこに現れたのは、柔道部副主将、小枝だった。


「またやられたくて来たのか?物好きなやつらだなー。」


 しかし、小枝は不適な笑みを浮かべる。


「今回は部長がいる!勝てる気でいるなら今すぐ改める事だな!」


 すると、背後から男が入室する。

 男は身長195cmはありそうな大男であったが、尾賀の方が大きかった。


「仮りを返しに来たか?」


 ゆっくり立ち上がると、両手をポケットにしまいこんだ。

 その姿はまるで、戦意がないとでも言わんとするかのようだ。


「立ち合って貰おうか。」

「柔道部部長、辻!参る!」


 辻は構えを始める。

 腰をやや落とし、背筋をやや丸めている。

 まるで自宅でリラックスしているかのように、筋肉に緊張が見られなかった。


「おー、いい構えだ。カウンター狙いだな?」


 尾賀は小さく笑うと続けた。


「ここで待っててやるから早くこいよ。」


 辻はじわじわと歩き始め、尾賀を掴める距離まで来ると、一気に胸ぐらを掴み足を尾賀の股に挟み──。

 尾賀の身体の軸はびくりともしなかった。


 まるで、校舎を引き抜こうとしているかのような……。

 そんな錯覚を辻は覚えた。


「はいよ。」


 そんな辻の心中も知らずに、尾賀はさっさと首筋に手刀を当て、意識を奪った。


「うん、悪くなかったぜ。」


 部長が討ち取られた事により、柔道部の敗北が決定した瞬間だった──。




 蝉が鳴く中、柔道部部長は茶道部の壁際に座っていた。


 そう、学園戦争中は、倒した部の部長は必ず部下にするルールがあるからだ。

 どうしても欲しい手駒がいる場合は、もう1人部下にしてもいいというルールもあるが──。


「ぶちょさんよ、なんで舎弟(コマ)増やさなかったんだ?」


 尾賀は不思議そうに訊く。

 なにぶん尾賀には初めての戦争だ。

 わからない事の方が多かった。


「どれほど長引くかわからないのが学園戦争です、いたずらに人を増やすと、食料と水分は一気に目減りしていきます。」


 茶道部部長、佐伯は尾賀を見て答える。


「ははぁ、じゃあ物資奪ってこねーとな。」


 尾賀は腕を組むと考える素振りをする。


「不用です、弱い部は最初に淘汰されます。」


「つまり?」


 尾賀の問いに静かに答える。


「元弱小の茶道部は格好のカモ()()()、って事ですよ。」


 尾賀は首を傾げるだけだった。


「敵がようさん来るって事や。」


 斑鳩(いかるが)が尾賀のために捕捉した。


「なるほどなぁ!」


 そう言っている間にも、また茶道部の扉が開く。


「ハハハ!サイキック部、部長!サイコ様だ!物資をよこしなぁ!」


 尾賀はゆっくり無言で立ち上がると、サイコのもとへ向かった。

 そのままサイコの頭を掴むと持ち上げ、腹に3発デコピンを入れると、サイコは動かなくなった。


「なぁ、これも入れなきゃダメなのかよ?」


 尾賀は困惑していた。


「そういうルールですから。」


 佐伯は苦笑いしていた。


 それとは対照的に、柔道部部長、辻は戦慄していた。

 幾ら相手が弱いとはいえ、腹部に3発デコピン入れるだけで人を倒せるものなのか、と。


「尾賀さん、お強いですわ、素敵です。」


 星が微笑むも、尾賀はそれをさらりと返す。


「あれは特例だ、あいつは弱過ぎたんだよ。」


 否、確かに弱過ぎたのは事実だが、人一人をデコピンで常人は倒せないのだ。

 辻は今までの自身の努力がわからなくなり始めていた。


 またしても扉が開く。


「帰宅部だ!物資をよこしな!」


 辻が立ち上がると、帰宅部に急接近し、小内刈りをして倒し、そのまま首を締め意識を刈り取る。


「な?誰がやったってかわりゃしねーべ?」


 尾賀はそう言うと朗らかに笑った。


 しかし、辻の胸中は違った。


(小内刈りからの首絞め……2手必要だった。1つの技で手加減をしながら仕留め切る……なんと高度な技術か。)


 サイコが目覚めると、辺りを見渡す。

 状況がいまいち掴めていないようだ。


「よう、起きたか。お前んち負けたぞ。」


 尾賀に軽々と宣告されると、サイコは頭を抱えた。




 あれから8回の襲撃が起きた。

 それらは全て辻が倒すも、心のモヤが晴れる事はなかった。


 時間も過ぎ、午後5時となった。

 黄昏時も近い時刻ではあるものの、学園内は未だ活発なようだ。

 外からは、蝉の鳴き声から移り変わり、そこかしこから戦いの声や音が聞こえる。


「元気に喧嘩してて、羨ましい限りだ。」


 呑気な声で尾賀は呟く。


「平和が一番ですよっ!」


 真田が元気な声で返事をする。


 しかし、尾賀はここ、黒龍学園に喧嘩をしに来たのだ。

 平和では困る。


「つえー奴はいねえのか?ここにゃあよ。」


 その時だった。

 学園内に報道部の全校放送が流れ始めた。


「戦闘中の皆さんお疲れ様です。えー、初日の中間発表を行います。」

「生徒会執行部、覇王部、妖部、勇者部、狙撃部──。」


 次々と部活の名前が読み上げられていく。

 その中には……。


「茶道部。」


 尾賀の所属する部活も読み上げられた。


「アーチェリー部、女子剣道部、以上、全400部活中、182部活が残っております。皆様優勝を狙い頑張って下さい。それでは!」


 ピンポンパンポンと、木琴の音が鳴ると放送が切れた事をわかりやすく伝える、ブチッという音が聞こえた。


「教えてくれるんだな、残りの部活。」


 尾賀がぼんやり天井を眺めながら言うと、佐伯が答える。


「これで情報の隠匿を防ぐ事が目的ですからね。」


「情報の…なんだって?」


 当然難しい言葉は、尾賀には伝わらなかった。


「情報を隠せなくするって事です。」

「まず、学園戦争前に部活間で同盟を組む所は少なくありません。」


「雑魚が幾ら群れても変わりゃしねーべ。」


 それを聞くと、佐伯は笑った。


「それが、あなたの言う雑魚の生存戦略の一つです。」

「頭数を増やして、数による戦いを仕掛けるんです。」


「負けやしねーよ。」


「尾賀さんはそうかもしれません、けど部活2つに同時に奇襲されれば、フラッグの無事は保証出来ないという事です。」


 尾賀は少しだけ考えた。

 そして珍しく理解した。


「この戦い、幾ら個が強くても限界がある場合があるって事か。」


 佐伯はにっこり笑うと答える。


「その通りです。別行動をして資材確保に向かっている部活もあります。」

「そこであの放送です。あれには二つの情報が内包されているんです。」


 既に尾賀はついていけていなかった。


「まず、どこの部活が潜伏しているか。そして、もう一つの情報、それは──。」

「呼ばれなければ、同盟相手が生きているか確認に行く手間が省けます。」


 サイコが口を挟む。


「同盟組んでる奴だけに恩恵がある情報って訳だな!」


 しかし、佐伯は続ける。


「果たしてどうでしょう?一概にそうも言えません。」

「例えば、明らかに弱い部活が生きていれば、狩りをしている部活なら、同盟読みをして待ち伏せという選択肢が取れます。」


「いや、一緒に行動してたら合流はしねーんじゃねーのか?」


 尾賀が訊く。

 それに対して、佐伯はゆっくり優しく答える。


「誰も、狩るのは同盟を組んでいたであろう部活とは言ってません。狩るのは、物資目当てで、のこのこやってくる部活です。」


 サイコは唾を飲み、確認する。


「つまり……CKK(クラブキラーキラー)、って事か……?」


 佐伯は無言で頷いた。


「とんでもねーのが横行してんな……!」


 サイコは冷や汗を流していた。

 その反面、尾賀はニヤついていた。


「つまりよ、つえー奴はそういう事する奴って事だよな?」


 佐伯は肯定する。


「まぁ、そうなりますね。」


「つまりよ、つえー奴と()りてえなら、C(クラブ)K(キラー)K(キラー)K(キラー)になりゃいいって事だな?」


「もうめちゃくちゃですね。」


 徳永は呆れていた。

ご拝読ありがとうございました!

尾賀くんちょっと賢くなったように見えて相変わらずバカです。

仕方ないね!


新しく辻とサイコが加入しました。

まぁモブですね!

彼らに活躍の機会はあるのか──!

今後に乞うご期待です!


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気に入って頂けたら、感想レビューお待ちしてます!

リアクション、ブックマークも大歓迎です!

それでは、ご拝読ありがとうございました。

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