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第一章三話 尾賀、学園戦争に参加する。

学園戦争始まります!

の前に、やっぱりルールは知りたいよねって事で説明パートです。

複雑な戦争の先に未来はあるのか──。

乞うご期待!


 あれから一日が過ぎ、水や食料の需要が急速に加速していく。

 佐伯や他の部員の話では、水道の水は停止し、購買は開かないそうだ。

 意味不明な制度だが、そういうものです、と言われれば仕方ない、受け入れるしかない。

 しかし茶道部には大きな変化はなかった。

 それは、部員と部長に学園戦争にかける思いが明らか差があるせいなのかもしれない。


「ぶちょさんよ、いよいよ明日だよな?」


 尾賀は期待を隠しきれないとでも言うように声を掛ける。


「そうね、じゃあ戦争のルールをおさらいしましょうか。」.


「いや、おさらいって俺初耳──。」


「おさらいしましょうか。」


 佐伯はにこやかに続ける。


「お、おう……。」


「まず、部活同士で戦います。これはなんとなくわかるよね?」


「おう、まぁな。」


 尾賀はぶっきらぼうに返事する。

 まだ知りたい情報ではないからだ。


「学園戦争の勝利条件は最後まで部活が生き残る事、そして敗北条件は、フラッグを破損させられるか、部長が降参宣言をするか、部員、部長全員が気絶なり戦意喪失したと看做される事です。」


「フラッグ?」


 およそ喧嘩には必要なさそうな言葉が出てくる。

 当然尾賀は首を傾げた。


「そうよ、午前8時に部長は皆体育館に集まって、フラッグを受け取るの。8時10分からスタートって訳。でもその10分間に攻撃した場合、強制敗北になるわ。」


 尾賀は少し感心したような反応を示した。


「一応競技ルールみたいなのもあるんだな。」


「そうね、後は敗北決定しない限り学園の敷地内から出ないとか、色々あるけど、それらを破る人はあまりいないわね。」


「要はそれさえ守って楽しく喧嘩って事だな。」


「はい。」


 佐伯はにっこり笑った。

 学園戦争を楽しみにしているかのようだった。




 相変わらず尾賀は色々な事を訊いていた。

 しかし、今度は部員からも教わっていた。


 何故急に部員がやる気を出し始めたのか、それは佐伯の発言が原因だった。


「凄いんですよ尾賀さん、一人で柔道部を無傷であっという間に全滅させちゃったんです。秒殺ですよ!」


 その発言を聞き、一同は色めき立ち始めた。


「え…それってつまり、部長クラス……って事ですか?」


 佐伯は無言で頷く。


「何だそれ?わりーけど専門用語はやめてくれ。」


 佐伯はクスクス笑い出す。


「強さ的に、実質部長って扱いになる人のことです。部長じゃないけど、部長並みに強いなら“部長クラス”って呼ぶんです。」


 尾賀は少し考える。


「中学時代はよぉ、俺番長って呼ばれてたんだ。似たようなもんか?」


 それを聞くと、佐伯は難しい顔をしだす。

 表情を見るからに、どうやら違うらしい。


「番長は実質、校内一強い可能性があると囁かれている人に与えられる称号です。」


 なるほど、と尾賀はポンと膝を叩いた。


「つまり、部長クラスと番長はちっと実力差があるって事だな?」


「まぁ、有り体に言えばそうかもしれません。」


 尾賀は笑い出した。

 自信からくる笑いである事は誰が見ても明らかだった。


「まぁ任せろよ、俺に勝てる奴なんて学生じゃそういねーべ。んで、強い部活はどこで、番長ってのはどんな奴だ?」


 尾賀としては一番気になる所だった。


「喧嘩部、工学部、サメ部、生徒会執行部、妖部……他にも多々ありますが、非常に目立つ強い部活はその辺りです。」


「あー、なるほどなぁ。」


 尾賀は思考を放棄した。

 仕方ない事だ、明らかに中学時代にあった部活とはラインナップが掛け離れている。


「その中でも、生徒会執行部部長、妖部部長、工学部部長、後は帰宅部部長が番長候補と噂されてますね。」

「表には出てこないけど、番長相当の実力がある裏番の存在を生徒会執行部は危惧しているとかしていないとか……。」


 佐伯は眉唾な情報まで話し出す。

 とても正確とは言えない。


「なんだそりゃ?どこ情報だよ。」


「報道部です、報道に自由ををスローガンに掲げて、日々盗撮、盗聴に明け暮れてる犯罪集団です。」


「お、おう……そうか……。」


 尾賀は報道部が生徒達からめちゃくちゃ嫌われてる事はわかった。


「尾賀さんってよくっ、おうそうかって言いますよねっ!」


 部員の一人、真田が話しかける。

 髪をお団子に纏め、ワンピースを着た可愛らしい女子だ。


「んー?あぁ、わからねー事は考えるのやめちまうからよ、返事適当になっちまうんだ。」


「あぁ、つまり脳筋って事なんですね……。」


 真田は心底がっかりしたような表情をした。


「一通り話聞いてて気になった事が出てきたんだが、訊いていいか?」


「はい、どうぞ。」


 部員の一人、星が返事をする。

 黄色い和服姿に、黒髪のロングがよく映えている。


「まずフラッグだ。これはどこに立てんだ?持ち運びは?」


「持ち運び可能ですわ、フラッグの位置は自由設置です。去年の戦争では、バレー部がコンクリに穴開けて、その中にしまって、生コンクリート塗り固めてましたわね。」


 尾賀は呆れる。


「何だそりゃ。そんなもん全員ぶっ飛ばされるだけだろ。」


「そうですわね。」


 星は笑った。


「次だ、部室がない帰宅部とかどうなってんだ?」


 今度は斑鳩(いかるが)が答える。

 夏服のセーラー服を着た、茶髪のボブヘアの子だ。

 喋る度に八重歯がちらりと見え隠れする。


「あー、それは特別ルールがあるんよー。部長を倒すかフラッグを破損、または破壊するなんやけど、誰が部長か、誰がフラッグを持ってるかわかりにくいねん。」


 ……どうやらフラッグはギリギリ懐にしまえるサイズ感らしい。

 めちゃくちゃ広い学校だ、こりゃ大変だと尾賀は思った。


「とりあえずわかった。じゃあ気絶、戦意喪失って誰が判定してんだ?フラッグとかも破損したかなんてわかんねーだろ。」


 もっともな疑問だ。

 そんないつでも全てを監視するなんて不可能だ。


「あー、報道部が全て監視、盗撮、盗聴しよるからその辺は筒抜けやね。」


 斑鳩(いかるが)が答える。


「そうそう、フラッグの中も工学部独自開発のマイクロチップが入っとるから、破損するだけで感知出来るとかなんとか……。」


 星が捕捉する。

 尾賀は頭を抱えた、尾賀には難し過ぎたのだ。


「あー……とりあえずわかった!次の疑問だ!」

「補給や備蓄とかだ。部活落とせば食料や水は奪えんのか?」


 徳永が答える。

 黒学ランを着たマッシュウルフの男だ。


「そうっすね、落とさなくても一応盗む事も出来ます。基本所有権は、その部室内にあれば、その部室のものっす。」


「じゃあ、部を落としたら?負けた奴らはどうすんだ?」


「部長と、後そこの部員の一人好きな人を捕虜や部下に出来ます。」


 尾賀は考える。

 そして何かに気付いたように眉尻を上げた。


「あー、つまり勝ち過ぎても舎弟が増え過ぎて飯と水がキツいって事か。」


「鋭いっす、正にその通りだと思うっす。幾ら強くても、フラッグ隠してひたすら部長が逃げ回って、他が皆降参して最後の部活になれば勝ちですからね。」


「きったねぇやり方もあったもんだが、勝てば官軍ってやつか……。」


「そうなりゃ、頭数増やせば夜襲リスク上がるよな。どうなってんだ?その辺。」


 真田が手を挙げて答える。


「それはっ、夜襲普通にあるよ!だからっ、夜襲警戒の為に見張りも立てなきゃです!」


 尾賀は色々考えたが、一番しっくりきた言葉があった。

 内戦、紛争……。


「あぁ、戦争ってそういう事かよ。オーライわかった。」


 尾賀は眉間に皺が寄った。


先公(きょうし)は止めねーのか?」


「止めませんわね、人が死んでも止めません。自分達の命が惜しいですから。」


 星があっけらかんと答える。

 対照的に、尾賀は眉間に指を当てる。


「俺より倫理観がねー奴中々いねーぞ……。」


「じゃあよ、逆に気になってきたんだが、ぶちょさんはなんでも3つ願いが叶うって言ってたけどよ、大金でも貰えるって話してたじゃねーか?」


 佐伯が返事をする。


「そうね。」


「それは部活内で3つか?ぶちょさんが3つか?部員全員が3つか?」


「部活内で3つよ。」


 明朗快活に答える。


「ははー、なるほどなぁ。星さん真田さんは何か願いねーのか?」


 星は少し考える素振りをすると、尾賀を見つめる。


「わたくしは、特にないですわね。欲しいものはなんでも買えますし。」


(クソ、この女ボンボン(金持ち)か…。)


「私も特にないなぁっ。今ですらパッと浮かばないし、いざ優勝しちゃったらフリーズしちゃうかもっ!」


 真田は軽く頭を掻いている。


「欲がねーのな、2人とも。」

「んじゃ、斑鳩さんと徳永さんはどうなんだべ。」


「私?私かぁー。とりあえずお金じゃない?約束された地位とか?」


「現物主義者か、俺と同じだな。」


 ようやく人間らしい感想に尾賀は少しホッとした。


「俺は特にないですね……絶版の小説が欲しいくらいで……。」


「ンなもん頼むな、星さんに買ってもらえよ。」


 多分尤もな感想だ。


「ぶちょさんは?」


「死んだ弟を蘇らせたい。」


 すげぇ、その一言だった。


「おいおい、そんな事まで出来んのか?そっくりさんじゃなくて?」


「らしいわ、じゃなきゃこんな野蛮な馬鹿高来ないわよ。」


 尾賀は、よくわからないが、気高くて強烈な信念のようなものを感じた。


「おーし、わかった。俺が強すぎて出来レースみたいになっちまうかもしんねーが、絶対勝たなきゃな。」


 余りにも重い願いに、部員達の心が一つになった気がした。




 翌日、部室で雑魚寝した一同は、部長を見送ると顔を見合わせた。


「あー、ちょっと緊張すんな!」


 そういう尾賀の表情は笑顔に満ちている。


「そうやね、本格参加は初めてやわー。」


「なんで初めてなんだ?」


 素朴な疑問をぶつけてみる。


「当たり前やない、そんなん。」


「そっすよ尾賀さん。」


 徳永は朗らかに答えた。


「俺ら皆、能力が非戦闘系っすもん。」


 能力──。

 当たり前のように話すが、80年程前に、隣町にある帝国学院が、電気椅子を利用する事により発現させる事に成功した超常の事だ。


 元々は、罪を働いた身内を処刑する為だったらしいが、怪我の功名である。

 その者は、人間の手により、能力を能動的に得る事を証明した。


 今となっては、ここ黒龍学園にも能力開発の機械が導入されている。

 設置場所は工学部だ。

 帝国学院よりも安全に開発できるらしく、生徒たちは運試し感覚で能力を得ようと挑戦する。

 そのため、校内では能力を持たない生徒の方が珍しい。


 能力(スキル)任意発動型(アクティブ)常時発動型(パッシブ)が存在し、系統樹もある程度別れている。


 例えるなら、任意発動型(アクティブ)は、自分の裁量で腕から炎を出したり消したり。

 常時発動型(パッシブ)なら、常に自身の周囲にソニックブームが舞っている、など……。


 系統樹は、炎系や氷系、光系や自然系、身体強化系などのジャンルの事を指しており、強くなればなるほど手がつけられなくなる。


 強さや出力の高さを指標とする、ランクという概念も存在し、弱いものはランク1、最大値ではランク7が観測されているらしい。


 が、この長い説明を星がしてくれたが尾賀は途中からわからなくなり、おう、そうかとだけ返した。


 扉がバン!と開くと、佐伯が入ってきた。


「始まるよ!学園戦争!」


 その目は誰よりも輝いていた。

ご拝読ありがとうございました!

色々能書き垂れましたが、次回から本格的に戦争開始です!

皆仲良く争います!

感想、レビュー、リアクション励みになってます!本当に多謝!!

それでは、愚筆失礼致しました。

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