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48.結果はいかほどに?

 強化魔法の修練をしつつ、徒歩で移動すること5日。道中で魔物相手に強化魔法を施した拳や蹴りで対応したり、空高く飛んでみたり、色々なことをしていた二人はついに強化魔法を自然にかつ素早く展開できるようになった。


「っっやっったーーーー!!!!」

「やっと…なんとか出来る様になった…。」


 セレニテは安定して30分ほど連続して強化魔法をかけることができるが、エルピスの方は力が強いせいかまだまだ長時間の使用は出来ず、集中力が続く数分だけは使える様になった。


「僕もセレスみたいに長時間使えるようになりたいよ…。」

「長時間っていっても私もまだまだ30分くらいよ。それに、エルの場合は創生神様の力を行使しているんだから、すぐに制御できなくて当り前よ。」

「そうだな、エルピスの場合はまだまだ力に振り舞わされている感じがあるな。他の魔法は力は強いが比較的安定しているんだけどな。」

「自然よりも人間の体の方が脆いから、より繊細な制御を求められるんだろう。今魔力がどのように体を回っているのか可視化したいものだ。」


 リヒティの隣でヴェスティがうんうんと頷いている。今回は最初の石の破壊からなかなか上手くいかないエルピスのためにヴェスティも一緒になって指導してもらっている。

 力を流す匙加減が難しく、魔力を流しすぎて一度腕が裂けて大惨事にもなった。それからセレニテにはリヒティが、エルピスにはヴェスティがそれぞれ指導に入ることになり、二人はじっくりと修練に励むことが出来た。



『いいかエルピス。呼吸を意識するんだ。吐き出すときに一緒に魔力も全身に行き渡る様に流す。まずは今の魔力量を流すのに慣れろ。』

『…やってみる。』


 そんなヴェスティの指導のもと、徐々に隅々まで行き渡らせることに慣れてきたエルピスは、次の段階の流す魔力を増やす行為にまたもや躓いてしまった。


『うぅぅ、ヴェスティ、僕の魔力増えてる?』

『測定器がないからな、はっきりとは分からないが、あまり変わっているようには見えないな。』

『だよねぇ。』

『……怖がっているだろ。』

『え?』

『一度痛い思いをしているからな、無意識に恐怖が体を支配している。このままやっても上達はしない。』

『………。』

『別の魔法をやろう。土魔法はできるな?』

『うん。』

『なら、土で家を作ってみせてくれ。大まかでいいぞ。』


 そういわれたエルピスはしゃがむと両手を地面をつけて大地に魔力を流していく。手の平に伝わる大地の湿った感じや温かさが魔力を流すことにより少しずつ硬く変形していく。

 思い描くのは15年間生きた我が家。村を去るときにちらりと見た倒壊した我が家がちらりと脳裏を掠めるが、今一度家族で笑い合っていた時の家を思い出す。

 盛り上がった土が少しずつ形を変え、家になっていく。


 どのくらいやっていただろうか。


『そのくらいでいいぞ。』


 ヴェスティの止めの声で、エルピスは閉じていた目を開いた。地面につけて少し汚れた両手が視界に入る。日が当たっていたはずの両手は今では完全に陰り、エルピスの周りを暗くしている。

 顔を上げたエルピスは自分で作った家を見た。質感はまったく違うが、庭まで完全に再現されたそれは、エルピスとセレニテが住んでいた家そっくりに仕上がっていた。


『………父さん、母さん……。』


 ぽつりと零れた音にどんな思いが込められているのかはヴェスティには完全には分からない。だが、確かに感じ取ったのは虚しさと悲しさだった。

 空気を変えるため、ヴェスティは大げさにエルピスの頭を撫でまわした。


『わっあ?!』

『こんな細かく再現できるとは、さすが神の力か!これはどのくらいの大きさのものが出来るのかどこまでやれるのか研究してみたいものだな!』


 わしゃわしゃ撫でまわされ髪の毛がぼさぼさになり目元が見えなくなったが、エルピスの口角が少し上向き気分が上昇していることが伺える。


『もー!ヴェスティのせいで髪がぐちゃぐちゃになっちゃったよ!』

『はははっ、それくらいすぐに元に戻せるだろ。』


 立ち上がるのに手を貸しつつ、ヴェスティは講義の続行する。


『さて、魔法を行使してみたが、腕は裂けなかっただろ?』

『!』

『なぜ裂けなかったのか?……答えは簡単だ。魔力を外に放出し、内に留めていないから。…今まで枠線内で留めようとし過ぎていたんだ。なら、枠線を大幅に超えて留めればいい。』


『”オーラ”という言葉を聞いたことはあるか?』

『おーら?……聞いたことない。』

『私も遺跡の文献を見て知った言葉だ。遥か昔、人々は固有の”オーラ”という魔力のようなものを纏っていたらしい。…自分の体に膜を張るようにな。それが強化魔法の起源だと思われている。』

『膜……。』


 イメージしてみる。自分の周りに色のついた膜が体や頭をすっぽり覆っている、そんなイメージを。手の平が魔力で歪み、薄っすら色を帯びた魔力が外に放出されていく。エルピスは自然と力み、知らず息を止めて集中する。エルピスの体から5㎝先で留まった魔力が細かく波打ち、


 ついにぴたりと止まった。


『っは!はぁ、はぁ…』


 エルピスが息をしたとたん魔力は四散し、疲労がどっとやって来る。エルピスの膝は脱力し、座り込んでしまう。足や腕が小刻みに震え、このまま横になりたいと思ってしまうほどだった。


『ふむ、かなり疲れるみたいだな。まぁ、慣れてしまえば最小限で操作できるだろう。…さて、エルピス体の部位で裂けたところはあるか?』


 ヴェスティにそう声をかけたれ、改めて自分の体を検分したエルピスは息が整わない中、首を横に振った。


『実験は成功だな。これで裂けないことは立証された!エルピスはこの修練を慣れるまで続けていくように。』

『…はい、はぁ、ヴェスティ、先生、』


 それからエルピスは休憩中や夜の寝る前にやり、少しずつ上達はしていったのだが、



「使いこなすのはまだまだ先な気がする…。」

「う~ん、やっぱり創生神様の力って凄いんだね…。ソレイユ様の力でも強いって感じるのに…。」

「さらにその上か…想像はできないな…。まぁ、頑張れとしか言えなくてすまん。」


 同情的な二人の視線にいたたまれず、エルピスは渇いた笑いを零すのだった。

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