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32.雲行きは怪しく

「セレニテの身長は………160㎝か。標準だな。」

「う~ん、去年の服着たら袖も丈もぴったりだったし…これ以上伸びないのかな…。」

「えっ、セレニテこれ以上大きくなりたかったの?!」

「うん、欲を言うならあともう5㎝くらい欲しい。」


 昨日の結果報告を聞いた二人は場所はそのままでヴェスティに身長を測られていた。

 背に当てられていたメジャーが離れ、セレニテは真っすぐに伸ばしていた背筋を軽く緩める。

 エルピスの驚きが意外で、理想身長になるように背伸びをして横で見守っていたエルピスを真顔で見下ろすセレニテ。エルピスは自分の上に出来た影を見上げつつ、首を擦り苦笑を返す。


「これ以上身長に差が出ちゃったら僕の首が疲れちゃうよ。それに、セレニテは今の身長くらいが可愛いって思うよ。」

「身長高くなったら可愛いよりも凛々しい感じになりそうだな。それに、これくらいの身長なら服や靴のサイズがちょうど良いのたくさんあるだろうから、お洒落も楽しめるぞ。身長が伸びればその分足のサイズもでかくなる可能性があるからな。」

「凛々しいセレニテ様も素敵ですわよ?私の友人に背が低めな方がいるのですが、靴も服も作るのが大変だとおっしゃっていましたわ。」

「…………ウ、ウン、参考ニスルネ。」


 頬を少し赤らめつつ、ぎこちなく返事をするセレニテに男二人は首を傾げ、エーデルは満面の笑みで反応を楽しんでいる。

 そんな4人に呆れつつヴェスティはあくびを一つつくと、持っているバインダーでエルピスの後頭部を軽く叩く。


「ほれ、次はエルピスだぞ。背筋伸ばして~顎引いて~…14…2だな。」

「うう…142…18㎝差…。」

(さすが、セレニテの妹って言われただけのことはあるな。)

(リヒティ、シッ!エルピスそのこと気にしてそれ以来私とおそろいコーデなかなかやってくれなくなったんだから!)

「おそろいコーデ?エルピス様もスカートなど穿かれたのですか?」

「穿くわけないでしょ?!それに小声で話してるけど聞こえてるからね?!」


 3人に向かってエルピスは吠えるが、背が低いせいか幼獣に吠えられているように感じられ、3人は優しく微笑み、エーデルにいたっては頭も撫で始める始末だった。


「…………一個終わるたびにこれだと時間かかってしょうがないんだが~?リヒティクンとエーデルサマは邪魔だから町ぶらついてこい。」


 しっしっ、と二人を追いやりにかかるヴェスティだが、保護者二人も負けてはいない。


「何仕出かすかわからん奴とは監視役なしに一緒に居させることできないだろ!」

「そうですわ!こんなに可愛いお二人なんですもの!何も起こらないはずがないです!!」

「あんたらだいぶ失礼なこといってるからな~???オラクルいるから大丈夫だし~、良いから行ってこい。それとーーーーーーーーー・・・・。」

「?!」

「じゃ、日が落ちる前には帰って来いよ~?」


 二人の前で扉は閉じられ、ついでに鍵も閉められる。


「「…………。」」


 扉が閉まる間際に言われた言葉に、自然の眉間に皺がよってしまう。


「エーデル、ヴェスティの言葉を信じるか?」

「………まだ2日しか経っておりませんので、信用はあまりないですが…ここで嘘をつくメリットは思いつきませんわ。」

「そうだな。とりあえず、行ってみるしかねぇか…。」


 二人は町中へと足を進める。信じられない、話しだった。だが、信じたいとも思える情報だった。


『---それと、最近コミエ村から4人、この学術都市にやってきた。信じる信じないはあんた達に任せよう。』



 ーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーー



 保護者二人がいなくなった室内は一気に静まり返り、なんだか寂しいようにも感じてしまった。

 居心地悪げにそわつくエルピスとセレニテだったが、ヴェスティは相変わらず研究者顔でバインダーにさらさらと何かを記入すると、徐に二人に魔法を放つ。


「「?!」」


 拘束の魔法。体が固まり身動きが取れなくなる。目だけでセレニテの様子を確認すると、青ざめた表情で一点を見つめていた。

 その視線を辿ろうとしたとき、正面から強く顎を掴まれ無理やり上向かれる。顎を掴んできたのはやはりヴェスティだった。


「ヴェ「これからエルピスの精神の中に入る。セレニテ、後は頼んだ。」


 返事を聞く前に足元に展開された魔方陣が光を放ち、二人を包む。ヴェスティはエルピスと額通しを合わせ呪文を唱える。

 その呪文は初めて聞く言葉で聞いたことなどなかったのに、エルピスにははっきりとその意味が分かってしまった。


『 魂と魂を通じ我はその者の世界へと旅経つ そこは死であり生であり無の世界 そこは何者にも干渉されず干渉を許さず他者を拒む世界 だが我は行こう 真実をそこにあり 』


 聞こえたのはそこまでだった。意識が遠退き、エルピスはヴェスティの瞳を見つつ目を閉じた。

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