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31.今知っている歴史のこと

 歴史の前にこの世界の社会を少し話そうか。

 この国は3つの都市と12の町と複数の村でなりたっている。

 3つの都市の名は、王族が住まい、商業の中心地となる王都「アッフルエンス」研究者たちが集う学術都市「ケントニス」職人たちが集う工業都市「アントリー」

 3つの都市が三角上に配置され管理地が決められており、一都市につき4つの町と複数の村々を管理している。とはいっては一都市に複数の町と村の報告が集中すると管理することは難しく。各都市は12の町に村の管理を任せた。管理地内の村の出生や税金などの報告や納付を各町分と合わせ各都市に報告。学術都市と工業都市のまとめられた報告と納付は最終的に王都へと集められる。


 儀式が比較的スムーズに行えているのはこの制度のおかげだな。この制度がなければ、祭司たちは無駄に長旅をする羽目になる。


 そして、各町にいる報告と納付を行うのは貴族の役目。あんた達は村出身だから、貴族じゃなくて村長が代表だったな。貴族には会ったことあるか?………ないか。ない方がいい。あいつらに構う時間がもったいないからな。

 貴族は昔”役人”という役職持ちの町人でしかなく、世代交代の時に町人の中から選ばれていたが、いつしか王族と同じ世襲制となり、役人から”貴族”という呼び名に変わっていった。

 貴族の役割は、町と村の管理をすることではあるが、その管理とは、災害等の手助けや、警備、整備、王都へ儀式派遣要請など様々なことをしなければならない。

 だが、近年の貴族の中には自分が王のように振舞う者もおり、この制度に対して危険視してる者がいる。


 っと、少し話がずれたな。


 最終的に政治面で王が国をまとめており、ニ柱は信仰の対象でしかなく、政治にはまったく関わっていないのが今のこの国だ。

 隣国も似たようなものだな。このニ柱を信仰対象にして、王が国を管理している。


 ここまでで何か質問はあるか?

 ………

 大丈夫みたいだな。続けるぞ。


 では、ニ柱は何をしているか。これは親にも聞いているかもな。ニ柱は世界のバランサーの役割を果たしている。ソレイユ神は太陽の力でもって世界を照らし活力を与え、ルア神は月の力でもって闇夜を産み安らぎを与えている。この話しは聞いてるだろ?

 では、ニ柱はどこから産まれ、なぜこの世界の信仰の対象となったのか、疑問に思わないか?

 生活に馴染みすぎて、当たり前すぎてなぜなんて、疑問でてこないか。

 でも、言われて不思議に思うだろ?”なぜその存在が誕生したのか”

 自分はその疑問を解明するために、ここで研究をしている。世界各地には太古の遺跡が点在していて、そこに古い手記が残されていたりする。あるいわ壁に彫られていたり、な。

 古い手記にははっきりとこう記されていた。


「ソレイユとルアは創生神から力を与えられて誕生した。」

「神に認められた特別な存在。」

「その力でもって世界を破滅から再生へと導いた。」

「魔物も人も関係ない、争いが絶えない絶望の世界。」

「二人は長く長く生き、私たちをいつまでも見守った。」

「二人が亡くなった。あの者を王に。」


 今はっきり解読できているところはここのみだ。

 解読できているところを繋ぎ合わせると、


 ”人も魔物も関係なく日々争いが絶えない絶望の世界を、創生神から力を授けられたソレイユとルアが世界を破滅から救い、再生させた。それから二人は世界の王になり、長く治世をしたが、亡くなり人間の王が誕生した”


 過去のこの世界を救った英雄・救世主であり、救われた人間たちが二人が亡くなった後、信仰の対象とするのも不思議じゃあない。

 だが、二人が亡くなった後の世界はどうなるか。リーダーを失った世界は統率がとれなくなり、争いをまた生む。それを憂いた二人は亡くなる前に次代の王を人間の中から選び、今の王族へと続いた。

 そして、二人は亡くなるのと同時に力を誕生したばかりの赤子に継承し、この世界に変わらず力を注いでいる。


 王族はニ柱の保護のため、誕生した地へと赴き、王城で二人の赤子を世話しつつ、王の継承の儀式も滞りなく行えるようにシステム化した。ついでにニ柱のことも詳しく記録するようにしたんだろう。じゃなけりゃ、エーデルオウジョがニ柱の成長がゆっくりなことなんて知るわけがない。オウジョが産まれた時には、二人は老人になってるだろうからな。それに正しい歴史を伝えるには、書物に記すのが一番だ。ニ柱のことが大好きな王族が記さないなんてことないだろ。

 そして誕生した地は祭司の聖地巡礼の地へとなり、修行の一環にもなっている。


 ………ニ柱が転生したなんてこと、どうして知ったのか、オウジョはわかるか?………赤くなってないで答えてくれ。……記録はすべて読んではないのか。オウジョ特権で読ませてくれ。



「これが今知りえているこの国の歴史だ。遺跡がボロボロで彫られている文字は大分欠けているから翻訳するには時間がかかりそうだが、文字の法則性は見つけてある。あとは補足して解読していくだけなんだ。本当は明日行く予定だったんだが…エルピス達も行くか?」


 お互い顔を合わせるが、答えは一緒だった。


「うん。僕たちも行くよ。そこで何かわかるかもしれない。」


 エルピスの決意に満ちた表情を見て、ヴェスティは緩やかに目を細めた。


「分かった。では、明日早朝に出る。今日の実験は早めに切り上げて明日の準備に備える様に。」

「……実験はするんだね。」

「当たり前だろう。研究者にとって一日一日は無駄にできないからな。…その前に報告の続きだな。まずは魔力数値からーーーーーーー



 ヴェスティが資料を見せつつ二人に説明している姿を横目に、オラクルはヴェスティから借りた遺跡の手記を読んでいた。

 その手記はところどころ滲んだり欠けたりしており、解読するにも一苦労なのは見ていて分かった。

 だが、


(あの頃のことを記している者がいようとは、やはりお二人の元に集まる者は優秀な人ばかりだったようだ。)


 壊れないように滑らせて、オラクルは一人懐かしそうに微笑んだ。

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