20.情報整理をいたしましょう
村長のことを言及しなさ過ぎたんで18.目覚めをちょっと改稿。村長も化け物になって倒されてます。なぜ化け物にあるのかは追々説明回をいれます。
今回前半はエルピスの頭整理の回なので、読み飛ばして大丈夫です。
オラクルと交代して火の番についたエルピスは、眠気を飛ばすために大きく伸びをし、体の強張りもついでに解す。
交代するときに譲ってもらった懐中時計を開くと、短針はまだ3時を指していた。夜明けはまだまだ先のようだ。
村へ帰っている途中に立ち寄った町にたまたま行商人がおり、手帳とペンを手に入れられた。真新しい手帳を開いて、今まで起こったこと、疑問に思っていることをひたすらに書き出していく。
セレニテが王都第二騎士団と名乗る男に連れ去られたこと。あれは本当に王都の騎士団だったのだろうか。
リヒティと一緒にセレニテを追って王都に来たこと。王都に来たということは敵の本拠地は王都だと思っていいのだろうか。
そこでエーデルとオラクルが仲間になり力を貸してくれたこと。エーデルもオラクルもこんな簡単について来て大丈夫なのだろうか。捜索願が出されててもおかしくない。
王都の地下にセレニテが匿われ、そこでソレイユ様の力と融合されそうになったこと。あそこで会ったあの男何者なんだろう。そして、何をする気なんだろう。
その時にエルピスもソレイユ様と繋がり、今は力が使えること。最初はセレニテと接触してなきゃダメだったのに、どうしてあの時から使える様になったんだろう。
ルアのもとに飛ばされ、セレニテの中にソレイユ様がいるが、融合してはおらず安定だけしていることを教えてもらったこと。でも、融合ってどういうことなんだろ。魂と神の力が混ざり合い一つになる…的な?それが安定だけってことは、セレニテの魂と力が別々に中に存在しているってことかな。
王城で会ってからセレニテは眠り続けていたこと。王城にいた時の眠りは魔法だとして、王都を出てからの眠りはなんだろう。
父と村長と一緒に合流でき、村まで一緒に帰ったこと。最初に立ち寄った町でエーデルとオラクルが噂になってなきゃ良いけど。あの町から服装は僕たちと変わらない簡易なものになったから大丈夫だと思いたいな。
村が焼かれ、村のみんなは殺されてしまっていたこと。口封じのためとはいえ、あまりにも惨い。ただ、デリック達がいないとリヒティ達から聞いているから、どこかで生き延びていて欲しいと願う。
そして、
「………どうして、父さんと村長は化け物になったんだろう………。」
父は母の死を見て化け物になったと分かっている。村長も父と同じく家族の亡骸がトリガーだったのだろう。だが、人間が化け物になるなど聞いたことがないし、出会ったこともない。
なってしまった理由は、リヒティ達が知っている。絶対に。変わってしまった時のあの落ち着きよう。一度は経験しているはずだ。なぜすぐには教えず、ケントニスに着いたらなのだろうか。
「そういえば、オラクルの代わりに僕たちの村に行ったっていう祭司様の行方も分からないんだっけ…。」
道中すれ違わず、村にもいなかった。王都までは基本的に一本道で、遠回りしなければどこかで必ずすれ違うはずだ。
「行方知れずの祭司…まさか…敵の一人?…いや、祭司様が神の冒涜的なこんな行為をするわけない…よね…。じゃあ、何かに巻き込まれた?」
そして神の片割れソレイユ様の器候補となっているエルピス。
セレニテ誘拐事件があってから度々ソレイユ様の夢を見ていたが、器だったのなら離れた時から夢に出てきてもおかしくないのに、なぜ急に夢に出てくるようになったのだろう。
一年前の事件のことも聞いたが、全く思い出せず、ショックすぎて脳が記憶を封じているのだろうか。
「………書き出してみたけど、本当に分からないことだらけだなぁ。ケントニスに着いたら半分…三分の一くらいは疑問解決したいな。」
とりあえず、思い出した順に手当たり次第に書き込んだノートを閉じ、今何時なのかを確認する。
時間はすでに二時間半経っており、もうすぐ夜明けがやってくる。火をもう少し長く燃やすために、小枝を数個、焚火に投げ入れた。
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朝、毎朝どのルートで行くかの話し合いをするが、主にケントニスに着くまでの行程を話してくれるのはエーデルだ。
エーデルは風と地の複合魔法”索敵”が得意で、半径1km先まで見通せる力がある。ただ、範囲が広ければ広いほど脳にかかる負担が大きいため、普段やるときは範囲を狭めたり、一瞬だけ見たりとなるべく負担を軽くして行っている。
「このまままっすぐ行けば王都南門側に着きます。ケントニスは王都の北側にありますので、西か東側から大回りで向かう方がよろしいかと思います。……王都を通って行かれた方が早いのですが、危険行為ですので。」
「西と東、より早く着くのはどっちなの?」
「……西です。ただ、西は……。」
「えっ、なに?なにかあるの?」
「………呪われた地があります。ですので、あまりお勧めはしたくないのですが…。」
「う~ん、東だと遠回りになっちゃう?」
「東側は最短距離で行くとなりますと、崖や森が多いので悪路になり、より時間がかかってしまいます。安全な道を通るとなりますと、西の倍は時間がかかるかと。」
「その呪われた地って、避けることできたり、実際に呪いにかかったりとかしちゃうのかな。」
「俺もそっちに行ったことはあるが、避けることは難しいな。出来なくはないがケントニスまで遠くなる。呪いにかかったりもなかったから、下手に遠回りせず行った方が良い。」
リヒティの後押しもあり、西側ルートを通ることが決定したが、エーデルの表情は案を出した時から暗く晴れない。
エルピスは今回エーデルと馬の相乗りをしているため、いつもよりも手綱を握る両手に力が入っているのが見て取れた。
「エーデル、呪いとか幽霊とかそういうの怖い?」
「い、いえ、そういうわけではないのですが……あまり訪れたくはない場所、ではあります…。急いでいる旅ですのに、このような我儘を失礼いたしました。」
「仲間なんだから我儘言って大丈夫だよ!……今更だけど無理なら遠回りでも「いえ、このまま行きましょう。私も向き合う時が来たのだと、覚悟を決めますわ。」
エーデルの顔色はまだ晴れないが、両目に決意の光を灯しまっすぐ前を見据えている。
過去に何があったのか知らないが、その呪われた地がエーデルにとって因縁の場所ではあることが分かり、優しく責任感のあるエーデルがこれ以上傷つかなければいいと、ただただ願った。




